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オムツでええやん


それは、どこにでもある、とある介護施設での風景…

🧒「は~来る日も来る日もトイレ誘導だ~鞆さん!もうみんな年取って寝たきりみたいなもんだし、オムツでいいんじゃないですか!?なんでトイレなんか座るんすか??」

^._.^「ほほ~良いところに気がつくやん。確かにもう来る日も来る日もトイレ誘導ばっかりで、意味や価値がわからなくなってくるよな」

🧒「そうなんすよね!オムツにすればこっちも楽だし、お年寄りも寝てるだけで楽だからWIN WINじゃないっすか!」

^._.^「確かにそうかもしれんな。でもよく考えてみてほしい。介護の目的は自立支援であり、うちの施設ではその人らしい生活を支援するという目標があるんや。それに沿って考えると、今の提案は真逆ちゃうかな?」

🧒「自立支援?その人らしい生活?」

^._.^「そうや。人はやっぱり最後まで自らの力で生きたいと思っている。ところが老いや障害により、それがなかなか難しい方々がいてる。その人たちが少しでも自立した日常生活を送れるよう考えて行うのが俺らの仕事や」

🧒「ということはばしばしリハビリして、バンバン自分でやってもらうってことっすね!」

^._.^「もちろんリハビリ、いわゆる機能訓練は大切。だけど治らない機能に対して訓練することに重きを置くんではなく、その治らない機能を持ってしてどう生きてもらうのか、その生活を一緒に作ることが大切なんや」

🧒「なんか難しくなってきた…それがトイレに連れていくのとどう関係があるんすか??」

^._.^「その人らしい生活ってのは当たり前の生活があるから成り立つんや。そのうちの一つが、やっぱり今まで通り座ってトイレで排泄するというのが含まれる。お前は今日から排泄の管理を全て俺に任せることができるか?」

🧒「死んでも嫌です!可愛い姉ちゃんならまだしも…」

^._.^「そう死んでも嫌やねん。それを死なずに若い俺らに委ねる、その事の意味をもう一度ちゃんと俺らは考えなければならんねや。顔も名前もよくわからん人様に、股ぐら弄り回されることの意味をや」

🧒「確かに…」

^._.^「よく現場では、オムツか、トイレか、リハパンか、機械浴か、常食か、と方法論だけで語られがちやけど、お年寄りにとっては生き方や。気持ちのいい排泄を如何にして最後までやり通してもらうか。完璧に出来ないかもしれない、最後はオムツのお世話になる。それは仕方ない。ただ、常にその人らしい生活を支援していく、という方向性は持ちたいねんな」

🧒「…鞆さん!すごい介護って深いッスね!感動っす!俺、じゃんじゃんトイレ連れていくっす!あっ!ナースコールや!おトイレかな!?」
バタバタバタ…

^._.^「やれやれ…」

これは、どこにでもある、とある介護施設での風景
だが、ほんの少しだけ、希望がみえる風景だ

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