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身近な動物たち

先日の仕事帰り、自宅と隣のアパートの境目にある鉄製の柵の上に何気なく目をやると、何かが動いたような気がした。なんだろう?と思い、近づいてみるとふさふさした物が慌てて遠ざかっていくのが見えた。
イタチにしては小さいなあと思ってみていると、地面に飛び降りて走り出した。その格好で何かわかった。リスだ。
こんな都会のど真ん中にリスがいるなんて、ちょっと信じられなかったので、帰宅して早速在宅勤務していた夫に興奮気味に報告すると、
「この前うちの前の電線を歩いとったで」
と言われて拍子抜けしてしまった。

ちょっと調べてみると、野生と言っても飼われていたものが野生化したものらしい。全体はよく見えなかったが、タイワンリスという種類のようだ。写真で見る限り、おっさんのような顔であまり可愛くない。
獣害も深刻なようで、電線をかじったりもするらしい。私の住んでいる市でも注意喚起しており、申し出れば捕えるための罠を貸し出してくれるとHPに書いてあった。勝手に捕まえると鳥獣保護法違反になるようだ。
街中ではあるが近所にはちょっとした茂みや、街路樹が点在している。餌も多く、暮らしやすいのだろう。

北陸のとある県に住んでいた時は、自宅の前の公園にキジがよくやってきた。草が生い茂った場所があったのだが、そこでガサガサ音がするのでこわごわ覗き込んでみると、あの綺麗な羽が見えた。間近で見るのは初めてだった。ドキッとした。
野生動物を間近でいきなり目にすると、なんだか大きく見える。襲ってこなくても怖い。
今住んでいるところとは違って田んぼの只中だったから無理もないが、少し行けば交通量の多い国道も走っているところである。のどかというかなんというか。何を食べていたのかな。なんであの公園にいたのだろう。疑問は尽きない。

関西に越した後も、野生動物にはよくお目にかかった。住んでいたところが山と川に囲まれていたから余計にそうだったのだろう。
コロナ第一波で一時的に休園した近所の幼稚園のそばを通ったら、園庭から黒っぽい顔の子狸が一匹ちょろりと出てきて、鉢合わせしたことがあった。びっくりして立ち止まったら、向こうは不思議そうにこっちを見ている。そのうち、次々と同じようなチビスケが合計3匹出てきた。最初の奴と同じようにこっちを見ていたが、最後に親狸が出てきて、子供を急き立てるようにして一緒に走り去ってしまった。
誰もいない園庭で、親子で遊んでいたのだろうか。狸の子供があんなにかわいいものだとは思わなかった。

我が家には、一匹のヤモリが住み着いている。涼しくなってからは見なくなったが、うちのトイレの窓の下が餌場?らしく、よくまどに張り付いていた。
小さな足が窓に映ると、ガラスに押し付けられた吸盤がぐるぐると渦巻き状になっているのが見える。その足をガラスに固定して、首をあちこちに曲げては虫を食べている。白い体に餌が入っていく様子まで透けて見える。リアルな捕食の様子を観察するのは、大人になってもなんとなく楽しいものだ。
植え込みに朝顔を植えていた頃は虫もたくさんいたのか、ヤモリは玄関まで遠征?していた。帰宅していつものようにドアを開けたら、ちょうどドアの上で捕食中だったらしく、ポトリと落ちてきたこともあった。私の手の甲に乗ってしまい、しばらくじっとして動かなかったので、植え込みまで戻しに行った。
冷たい、ぬれっとした感触は気持ちよくはなかったが、いつもトイレの窓から見ていたものだから親近感がわいてしまい、慌ててどこかに放り投げる気にはなれなかったのである。

幼い頃から自然いっぱいの中で育ったので、動物は大体苦手ではない。しかしこうやって直接間近で出会うと、やっぱり最初は動揺する。
この世は人間だけが生きている世界ではないことを頭でわかってはいても、それを普段意識することはあまりない。
だから身近な場所での野生動物との出会いは、ちょっとスリリングで、なんとなくワクワクして、面白いものだと感じている。