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土曜日が待ち遠しい

(※以下はあくまでも私個人の感想です。ネタバレ多少あり。)
ここ一週間、私は毎日のようにあるドラマを夢中で何度も観ている。このドラマを観る為に、某アプリを入手したほどだ。
ドラマのタイトルは『青島君はいじわる』(テレビ朝日)。元は吉井ユウさん作の漫画である。主役の二人は中村アンさん、渡辺翔太さんが演じている。
何を隠そう、私はこの漫画が大好きで、セリフを空で言えるくらい読んだ。ここまで熱心に読んだのは『のだめ』以来である。
最初の設定は多少無理矢理な感じもあるが、登場人物が皆とても魅力的で、一人一人に豊かな背景が感じ取れるのが素晴らしい。そして全員がごく自然な感じで、主人公たちと繋がっている。こういった漫画にありがちな、『わざと臭さ』『作った感』がない。リアルにその情景を想像出来る。
久しぶりにすごく読みごたえがある作品に出会えた、と思っている。

漫画が原作のドラマは今まで、きっちり原作に添っていないものも多かったと思う。
漫画とは別物として割り切って楽しむか、漫画の世界とは違うし観ないでおこう、となるかは個人によって、そして作品によって分かれるところだろう。
私も『のだめ』はかなり原作に近いと感じたので楽しく観ていたが、少し前に話題になった『セクシー田中さん』(日テレ)は漫画は大好きだったが、ドラマは一回で観るのをやめてしまった。
まだ最終回を迎えていない漫画を、何故最終回のあるドラマに仕立ててしまったのか、という点に非常に疑問を覚えたのと、私が原作のキャラクター設定に感じた『魅力』が、ドラマでは十分に生かされていない、と感じたからだと思う。
その後突然、あんな残念なことになるとは予想だにしなかったが、一読者ですらそんな風に感じたのだから、原作者にいろんな思いがあったのだろうというのは想像に難くない。
いずれにしてもかなりショックを受けたので、あれ以来、漫画が原作のドラマを観ることからは、ちょっと腰が引けていた。

だから『青島くん』を観るのも随分迷った。大好きな作品だけに、またガッカリしたくなかったのである。
しかし『青島くん』のドラマは、良い意味で私の予想を裏切ってくれた。人物描写がしっかり漫画に添っている。
主人公の葛木雪乃(中村アンさん)は三十四歳。半年前に婚活に失敗して以来、所謂『干物女』となり、恋愛全般を見事に諦め、まるでオヤジのような生活を送っている。
その雪乃の中にある生来の優しさ、弱さ、飾らない素直な可愛らしさにふとしたきっかけで気付き、やがて九年という年齢差をものともせず、戸惑いつつも少しずつ惹かれていく青島瑞樹(渡辺翔太さん)の様子を、このドラマは忠実に再現している。
漫画とは細かいところでは違う設定も多い。セリフも随分違っているが、漫画の『青島くん』の世界観がちゃんとある。
だから私には違和感はなかった。

私の親世代は漫画というものを軽視する傾向がある。同じクリエーターでも漫画家を低く評価しようとする人が多い。
かなり時代遅れな発想だが、このしょうもない考え方が業界のどこかに染みついていて、漫画の原作者を軽んじることに繋がっていないといいがなあ、と密かに危惧している。
作家の故・山崎豊子さんは、自分の作品をドラマ化するにあたり、登場人物を演ずる俳優を自ら指定し、そうでないとドラマ化を許可しなかった、と聞いたことがある。それだけ、自分の想像した人物のイメージが狂うことを恐れていたのだろう。
漫画家だって、そうしたって良いように思う。

私は一つのストーリーを仕上げるということに於いては、漫画も小説も労力は同じだと思っている。
小説家に絵で表現する能力がないだけだ。自分の言いたいことを忠実に表現する為に、何もかも忘れて心血を注ぐ、というのは『描く』世界でも『書く』世界でも同じだろう。
頭の中で絵を仕上げていくのが小説で、実際に描いて作っていくのが漫画という違いがあるだけだ。
その楽しさと大変さは作った者でなければ分からないと思う。
そして作品は大切な自分の分身で、子供のような存在に違いない。

まだ『青島くん』は始まったばかり。今後の展開が楽しみだ。
暫くは土曜の夜が待ち遠しい。

















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