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"働き者"をねぎらう

就活時、それまでの人生で一度も履いた事のないパンプスを履いて1日中歩き回ったせいで、外反母趾になった。それからというもの、キツイ靴を履くとぐったり疲れてしまい、長時間の外出は出来なくなってしまった。
就職してからは、夜寝ていると親指の付け根がキリキリ傷んで目が覚める事もあった。

幅が広く、甲が高いのに長さはない。踵がとても小さい。足の指が常に何本か浮いている。扁平足である。快適に履ける市販の靴は非常に少ない。

若い頃は、あべの近鉄百貨店にある靴店〈ブティックオーサキ〉で買うようにしていた。この店はセミオーダーが出来るようになっている。踵を低くしてもらったり、甲を覆うサンダルのベルト部分を長くしてもらったり、という機能的な変更も、革の色を変えてもらったり、といったデザイン的な変更も出来る。
このデザイン履きたいけどこの足では無理、と諦めなくて良いので嬉しい。ここの靴は足が楽で、本当に重宝していた。20年以上履いているものもいくつかある。すっかりご無沙汰しているが、今もあべの近鉄にあるのだろうか。

結婚するとたちまちパンプス系の靴には用事がなくなった。子育て中はほぼスニーカー。しかも遠出しない。歩き回る事も少ない。
私の外反母趾は良くなるのかな、と思っていた。夜中に足が痛くて目覚めるなんてこともなくなっていた。
しかし、結婚式や入学式等のセレモニーには必ずパンプス。その度にやはりぐったり疲れていた。

子供が大学生になった後、縁あってとあるフットケアサロンと出会った。
その頃、私の右足の裏には硬いタコが出来、薬指は浮いて曲がったまま、何故か足の裏に大きな溝が出来てそれもカチカチに硬くなっていた。足の甲が痛む事も増えてきた。ちょっと放置し過ぎたかな、と言う思いがあったし、この不細工な足をなんとかしたい、と思って探したのである。
店主は感じの良い40代くらいの女性。ホッと和む。

先ずカルテを作成。丹念に足を診て下さる。
結果、私の右"脚"は地面に対して真っ直ぐではなく、やや内側に斜めに倒れて"生えて"いるそうで、その為歩くと自然に"足"が内側に押される為、幅が広がってしまった、という事だった。なので、元々広い訳ではないです、だから幅の広い靴を履くと中で足が動いてしまい、益々幅が広がるんです、と言われたのにはびっくりだった。
開帳足?とか言うようだ。

気持ちいいフットバスの後は、タコ等の角質を取ってもらう。道具はまるで歯医者さんのよう。勿論全て滅菌済みのパックに入っている。
全く痛みはなく、むしろ気持ちいい。
終わった後の足はツルツルして、とても綺麗。私の足がこんなになろうとは。感動する。

その後は靴の履き方の指導を受ける。
紐を毎回結び直す事。爪先を上げて踵をキチンとあわせてトントンしてから履く事。靴紐はしっかり締めること。それをするだけで、本当に快適だ。

今は引っ越し先で、この方の知り合いを紹介して頂き、定期的にお世話になっている。

「1日中自分を支えてくれる足を、髪やお肌と同じように大切にしてあげて下さい」
私の足をケアしながら、この方がしみじみ言ってくださった言葉が忘れられない。

人間の頭、腕はそれぞれ4~5kg、脚は12~3kgだそうだ。足にかかる重さは体重の1.2倍。それを1日中、一生支えてくれる足。
大切ににしていきたいと思う。