マガジンのカバー画像

不協和音

222
エンジニアとライターが始めた共同執筆プロジェクトです。エッセイを軸に、自分の感じたこと、考えたことを発信したり、同じテーマで互いに呼応したりする作品を作っています。
運営しているクリエイター

#秋

Polaris

日の落ちるのが早くなった。会社からの帰路で、もう星が見える。 低い空に大きな雲があるが、風が強いらしくどんどん流れていく。月が出たり隠れたりしていた。 ひっそりしたポラリスが見えた。普段はあまり気づかないのに、めずらしい。いつだって見えるのに、そんなに目立たない北極星。光度に比べて仰々しい感じがするから、響きの軽い“ポラリス”という呼び名の方が好き。 最近、気がつくと空を見ている。 仕事中の昼間、わたしのデスクから窓の外は見えない。だから朝夕の通勤途中、子どもを寝かしつ

September

秋の空には大三角がない。 ペガサス座とアンドロメダ座の四辺形はあるが、光度が低めだからか、見つけるのがむずかしい。 だから秋は夜空を見上げても、わたしには星と星を結んで星座を描けない。 そりゃあ、東京の夜空なら冬がいいに決まっている。乾いて冴えた夜空には、澄んだ星のひかりが潤んで、したたり落ちそうに輝いているから。 オリオン座も、おおいぬ座もこいぬ座もしっかりと大三角を描いているし、カシオペヤ座もすぐに見つかる。視界を遮られなければ、ふたご座もきっちり見える。今の住まいに

ber months

今日は自宅の掃除をしたりひとりで買い物に出たり、子どもと一緒にちょっとだけ遊んだりした。ごく穏やかな日曜日である。 住宅地を自転車で走っていると、その風景はとても落ち着いて見えた。8月の暑さも日差しも消え、今日は風も強くない。 凪ぎと倦みの真ん中くらい、良くも悪くもない風景だった。 たとえば、スーパーの前に毛の長い茶色くてでっかい犬が飼い主を待っていて、自転車を停めるのがちょっと怖かった。彼ないし彼女は鳴いたりせず従順な様子で、行き来する人間を見ているようだった。メガネを