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September

秋の空には大三角がない。
ペガサス座とアンドロメダ座の四辺形はあるが、光度が低めだからか、見つけるのがむずかしい。

だから秋は夜空を見上げても、わたしには星と星を結んで星座を描けない。

そりゃあ、東京の夜空なら冬がいいに決まっている。乾いて冴えた夜空には、澄んだ星のひかりが潤んで、したたり落ちそうに輝いているから。
オリオン座も、おおいぬ座もこいぬ座もしっかりと大三角を描いているし、カシオペヤ座もすぐに見つかる。視界を遮られなければ、ふたご座もきっちり見える。今の住まいに引っ越してきた当時、東京でもふたご座が見えることに感動したものだ。

確かに、秋の夜空は控えめで星座を見つけにくい。でも、涼しさと肌寒さのはざまを揺れる夜に、わざわざ外に出て空を見るのが好きだ。
もうすぐ、わたしの好きな冬がやってくる、と思うとうれしくてならない。

予感や兆しの方が、到来より心躍ることもある。

月ばっかり明るく目立つ秋の夜空を見上げ、わたしは心密かに冬を待っている。

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