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ber months

今日は自宅の掃除をしたりひとりで買い物に出たり、子どもと一緒にちょっとだけ遊んだりした。ごく穏やかな日曜日である。

住宅地を自転車で走っていると、その風景はとても落ち着いて見えた。8月の暑さも日差しも消え、今日は風も強くない。
凪ぎと倦みの真ん中くらい、良くも悪くもない風景だった。

たとえば、スーパーの前に毛の長い茶色くてでっかい犬が飼い主を待っていて、自転車を停めるのがちょっと怖かった。彼ないし彼女は鳴いたりせず従順な様子で、行き来する人間を見ているようだった。メガネをかけた小学生くらいの女の子が、通りすがりに立ち止まって軽く頭を撫でる。わたしは内心かなり驚いたが、その犬は平気そうだった。やがて飼い主が戻ってくると、よっこらせと体を起こして帰っていった。
家を壊して更地になる途中の工事現場では、ぼこぼこの地に、昨日の雨が溜まっていた。あったものがなくなる喪失感よりも(おそらくは)新しい家ができる前進感の方が大きいのは、その土地に未来が約束されているからだ。空き家ばっかりの実家付近を思い浮かべると、とても良いことに思える。
自宅そばの小さな公園では、男の子が3人で鉄棒の練習をしていた。暑いとも涼しいとも言えない気候だけど、彼らは汗をかきながらぐるんぐるん回っていた。そばに置かれた自転車のカゴには、水筒とタオル。

特別なことは何にもない風景だ。色で例えるなら淡いベージュ色だろうか。秋のはじまりが兆していて、でもまだ半袖の方がちょっと快適な9月。少しずつ夜が長くなっていく。

窓を開けると風が吹いてきて、それが少し涼しかった。
ber monthsのはじまりには、しずかな秋風とホットコーヒーがちょうどいい。

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