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【連載】西洋美術雑感

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西洋美術から作品を取り上げてエッセイ評論を書いています。13世紀の前期ルネサンスのジョットーから始まって、印象派、そして現代美術まで、気ままに選んでお届けします。
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#エッセイ

西洋美術雑感 3:フランシスコ・ゴヤ「マドリッド、1808年5月3日」

前回はゴヤの版画を貼って独り言のようなことを書いたが、もう一枚ゴヤから選んでつぶやくとするか。えーと、なんでもいいんだが、そうねえ、これとかどうでしょう。『マドリッド、1808年5月3日』 自分はよく、西洋絵画は複製やデジタルではどうしても伝えるのが無理、って言うことが多いのだけど、この大きな油絵はその典型のひとつだな。これはマドリッドのプラド美術館にかかっているが、実物を見たときは本当にショックだった。 というのは、まず、この絵の主題ははっきりしていて、これは戦争で自国

西洋美術雑感 2:フランシスコ・ゴヤ「気まぐれ」

スペインの画家のゴヤが好きで好きでたまらない。 有名な連作版画の「気まぐれ」の中で好きなもののひとつがこれ「なぜそれを隠すのだ」というやつ。ほんとうに見飽きない。 この同心円の大雑把に引かれた線、不気味な笑い顔、醜い老人の顔、笑いと悲嘆の対照、なにもかもいい。何を笑っているかなんて、そんなのどうでもいい。 とはいえ、自分の脳はもちろん絵に描かれたモノを見ることで、ほぼ自動的に動く。老人(聖職者?)の持っているのは睾丸だろうな、中に入ってるのは金なのか? そりゃ、笑うわな

西洋美術雑感 1:シモーネ・マルティーニ「祝福された聖アウグスティヌス・ノヴェッロ」

これはイタリアのシエナの前期ルネサンスの画家シモーネ・マルティーニの絵である。 それにしても、なんでこんなに素晴らしい絵があるのか、自分にとっては、ほとんど奇跡に近く、若いころは、この絵が一枚あれば他に何もいらないと思ったっけ。いまはそんなこと言わないけれど、今これを書いてる無味乾燥な部屋の左の白い壁にこれが掛かってたらなあ、とは空想する。 えーと、何センチなんだろう。高さ82センチだって。ちょうどいい大きさだね。僕は精巧なレプリカならいい派のはずなんだが、たとえばこれの