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46才からの読書【ルワンダ中央銀行総裁日記】

 世界中の多くの人がそうであるように、僕もコロナ禍の日々をモンモンと過ごしていた。YouTubeを観ては酒をのみ、ストロング0に抗えず寝落ちする日々。無為な時間に辟易としてたある日、『ゆる言語学ラジオ』なるYouTubeチャンネルを発見する。二人組で言語学とその周辺の知識を語るチャンネルなのだが、特段言語学に興味があるわけではないが、その知識量とその知識をいきいきと語る様にある種の羨ましさを覚えた。

思えば忙しさと酒を言い訳に読書から離れて随分と経つ。元々、読書速度が遅くて多くても月2冊程度だったのが今や年2冊である。これはいけない。知識が欲しい。彼らほどではないにしろ、ひとより博識って思える程度に知識が欲しい。46才にして知識欲が沸き上がってくる。

とにかく読もうと、近所の本屋へと行こうと思うが、残念ながら僕が読書から離れてる間によく行ってた本屋2店は廃業の憂き目に。僕が行かなかったばかりに・・・。抗いがたい罪の意識に苛まれる。

阪急電車に乗り梅田は紀伊国屋書店にて数冊の本を手にいれる。欲しいのは知識と教養だ。体系的な学びでも読書体験でもない。雑に読めば本の内容などすぐに忘れてしまうだろう。何かに書き留めなければならない。という訳でnoteのアカウントを取得。

そういう訳で読んだ本の感想と綴っていこうと思う。せっかくだから公開するけど、あくまで備忘録としての感想文を書き留めているだけです。忘れてはいけないので、ときにはネタバレも気にしない。勝手ながら公開してるけど気を付けていただきたい。

ルワンダ中央銀行総裁日記 増補版 服部正也

数年前に話題になった書籍と記憶している。46才の普通の日銀マンがルワンダで中央銀行総裁になる話。
最初は異文化に戸惑いながら奮闘する話かと思いきや、異文化の中無双する話でした。今風に言えば『日銀マンがルワンダ転生したら中央銀行総裁として無双できた。』とでも言うのだろうか。

服部氏は日銀マンとしての経験でルワンダで大統領の信頼を勝ち取り、無双状態でルワンダを発展させていくことに成功させた。読んでいくと感じるのは彼が無双できた理由が、彼の金融の知識や能力だけではなく、先入観のなさであったり、差別意識のなさであったり、日本という無関係な国からきて、しがらみもなく、中央銀行総裁としての任務に忠実であったことが大きいと感じた。ルワンダは当時、独立、革命を経て、行政を元宗主国に多くの部分を依存している状態であった。
問題はその依存されている旧宗主国も派遣された外国人顧問も、ルワンダに住み暮らす外国人商人も決してルワンダの利益の為に働いているわけではないという事だ。彼らはそれぞれの立場で自らの利益の為に自分の欲の為に働いていた。もちろん個人として当然なことだ。外国人顧問はルワンダ人をバカにし、ルワンダ人官僚は自分たちはダメだとコンプレックスを抱えていた。さらに言えば独立、革命を経てなお帰国の道を選ばずルワンダに残ることを選んだ人間は、実はヨーロッパに帰ると無職になってしまうルワンダでしか生きていけない程度の無能な連中だ。本当に優秀な連中はさっさと帰国しヨーロッパでの生活を謳歌している。多くの外国人が無能であることを看破し、ルワンダ人が決して怠惰でないことを知り、外国人から利権をはがしルワンダ人に委ねる為の施策を繰り出していく。
全体を通じて決して難しい金融知識が書かれている訳ではなく、社会の仕組みを変えるための方法論、それに対するアプローチが書かれていた。50年以上前の話なのでこれが何か応用できるものでもないし、ルワンダの現状もその後のルワンダ紛争を経て、支配民族も変わり政体も変わり同じ国とは言い難い状況である。僕が読んで思ったのは、最近でもたまに見るアフリカ人は怠惰でどうしようもないという現地経験のある人々の言説が間違いだという事である。彼らはアフリカを知るものとしてアフリカを語るが実は表面しかみず本質を見ていないのではないだろうか。途上国の支援で本当に必要なものは物資ではなく生きる道、稼ぐ能力を与えることだってのはよく言われている。しかし服部氏が行ったのは、国境付近で行われていた細々とした密輸を規制の対象外にし合法化したりするだけで、支援ではなく阻害しないことでの背中を押すだけである。

ルワンダ紛争を経て、増補として民族問題と大国の論理による報道の姿勢に対する疑問が書かれていたが、これは僕は蛇足だと感じた。読むにあたって他の人の評価も多少チェックしましたが、中には大統領を高く評価している点を民族主義的に問題だと批判している論説もあったが、それも僕的には無意味だと感じた。彼は政治家ではないし思想家でもない。彼の任務はあくまで財政の健全化、経済の自立にあった訳で、民族問題に対して別問題である。
当然、先進国の人間としては問題意識をもつべきなのかもしれないが、物には順序があるように思う。すべてを一気に解決させるのは無理だ。国家には段階がある。それを順序だてて進めていくことも大事だと思う。きっと今のアフガニスタンでのアメリカの失敗もこの部分を間違ったからではないだろうか。彼は財政立て直すために高度な金融技術を駆使するのではなく初歩的な金融手法を使っている。いきなり高度なことをしても失敗する。途上国に先進国の方法論をコピペしても活用できず人も育たない。これは今の世の中、国に限らずいかなる組織運営でも重要なことなのではないだろうか。
服部氏は46歳にして途上国の中央銀行総裁として辣腕を振るっていくのに、かたや僕は同じく46歳にして、「読書せなあかんな」ってぐらいの生きざまで、早速本読んでる場合じゃないんだろうと挫折しそうになる。


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