1/23(日)

チャンネルはそのままで

日曜日なのでのんきにテレビを見ようと思って、「私」がテレビのリモコンをいじってみると、テレビはうんともすんとも言わなかった。

当たり前だと思うだろう。
テレビは家電だから意思を持って喋ったりはしない。
そういうことではない。
画面がつかず、音も出ない。
不審に思って本体の電源を押すと、今度は囲碁の対局が映った。
淡々と進む白黒の石の交錯に「私」の脳内も白黒になりながら、それでも当初の目的を達成したことにほっとして、またリモコンをいじってみることにした。

電池は入っている、が、チャンネルを変えようとしても、テレビは囲碁の対局を続けている。

何度かチャンネルをザッピングせんとしたその時、安普請の壁の向こうから男の子の叫び声がした。
「お母さーん! テレビが勝手に変わる!」
追って、不機嫌そうな母親の声がした。
「そんなわけないでしょ。あんた昨日夜更かししてたでしょ。寝ぼけてんのよ」
「でも、でも、でーもー、ホントだもん。ちょっと見てよー、ねーえー」
「私」はもしや、とリモコンで高速ザッピングを繰り返す。
「おかーさん、変だよ」
「あんた!うるさいよ!」
どかどかした足音の後に、「私」のテレビが、すん、と音を立てて消えた。

「あら、変ねえ」
「だから、言ったじゃん!」
男の子が半泣きでそう言うと、碁石をパチパチと碁盤に載せる音だけがずっと残っていた。

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