3/11(金)

忍びない

前を歩いていた黒服の男が撒き菱を落としたので、『私』はそれを拾って渡してあげた。

「これはご親切に。忍びないですが、ありがとうございます」
朗らかに礼を言う彼に、『私』は問うた。
「ひょっとして、忍者ですか?」
男は狼狽した。
「せ、拙者、忍者なんかじゃ、ない、……で、ござるよ。それより、何か礼をさせていただきたい」
堂々と忍者だった。
「そんなのこちらこそ忍びないので……」
と『私』は彼の誘いをやんわり断ると、そそくさと立ち去ったのだった?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?