2/28(月)
ちびた消しゴム
『私』はこんな噂を聞いた。
小学校の頃、使いかけの消しゴムがあとちょっとのところでどこかへなくなるのが不思議だった。
しかし、それは落としたりしたのではなく、こっそり持ち去られているのだという。
学校の奥の使われなくなった教室で、一番大きな練り消しを作りたかった怨念が、その使いかけの消しゴムを集めては、せっせと練り消しを作っているのだという。
宿直の先生や校務補さんが見たとかいうことらしい。
その話には続きがある。
ある時、校務補さんが掃除のためにその空き教室に入ると、昼間だったせいか、誰もいなかった。
角の掃除用具入れから、ガタッと音がしたので、おそるおそる開けてみると、大量の使いかけの消しゴムがなだれ落ちてきたという。
どうやら、大量の消しゴムをカスにするのが間に合わないらしかったようだ。
その後どうしたかって?
そりゃあ、掃除しにきたんだから全部捨てたらしい。
でも何もなかったそうだ。
それは何故か。
学校には使いかけの消しゴムがいっぱいあるからだってよ。
いついなくなるのかわからないのが世の常だから、消しゴムは大切に使おう。
小学校を出て何十年も経って、そう『私』は思ったのだった。
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