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「新・農業人フェア 農業EXPO」に行ってきました

9月8日(日)に東京・池袋で開催されていた「新農業人フェア」に足を運んできました。

近頃ではアグリテック(農業+IT)という言葉も身近になりITエンジニアとして気になっていましたが、農家さんとの繋がりがなく実態を知る機会はありませんでした。そんなとき偶然にも「新・農業人フェア 農業EXPO」が都内で開催されると知り、何かヒントが得られるのでは?と会場に向かいました。


「新・農業人フェア 農業EXPO」とは?

北は北海道、南は九州まで、全国の農業に関わる自治体や団体、農家さんや農業法人が首都圏に一同に集まり、農業で独立や就職を考えている人や農業に興味を持っている人と直接お話ができるイベントです。

新・農業人フェア PRODUCED BY RECRUIT

出展側は農業の素晴らしさや日々の取り組みなどを話すことで理解を深めてもらえるメリットがありますし、参加側は農家のリアルな原状ややりがいなど、直接生の声を聞くことができます。

農業ビジネスを具体的に検討している方向けの相談ブースなどもあり、何も知らない人からすでに行動を始めている人まで幅広いレベルに対応できるようになっています。

このイベントを知ったのが前日だったので全然知りませんでしたが、入場には予約が必要ですので予め当日までに登録しておくとスムーズに入場できます。


農業は全国的に人手が足りない

ちょうどこの日は台風に向かって北上しており不安定な天候でしたが、来場者は想像以上に多くて賑わっていました。とりあえず席の空いているブースを見つけてお邪魔してみると、こちらは全く知識がないにも関わらず、皆さん丁寧に説明してくださり、素人の質問にもきちんと答えてくださいます。

岡山のように桃やぶどうなど特色ある作物に力を注ぐ県もあれば、海あり山あり平地ありで田畑から畜産、酪農までオールマイティーにこなせる豊かな大地をアピールする地域もありました。農業といっても場所ごとに特徴があり、ひとくくりにしてしまうのがもったいないくらい。

あちこちのブースを回って最初に思ったのはやはり「どこも人手が足りない」ことでした。農業に限ったことではありませんが、高齢齢化や人口減少、そして首都圏への人口集中の影響で、全国ので人手不足が起こっています。以下の図は農林水産省の農業労働力に関する統計より抜粋したグラフです(2019年の農業就業人口は概数値。人口は未集計)。

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平均年齢も2018年で66.6歳とかなり高くなっています。それだけ長く続けられる仕事ということでもありますが。

毎年一定の移住者が生まれる地域でも、高齢で辞めていってしまう人もいるので全体としては思ったより就農者数は増えてくれないとのリアルなお悩みも聞くことができました。

農地はたくさんあるので、あとは人手があればいい。そうだといいのですが、実は誰でも良いわけではないのです。


だが農業は甘くない

農業は簡単に始められるものではありません。作物を育てる方法など農業に関する知識をきちんと学んで、実践できなくてはなりません。たとえば農家として独立し生計を立てていこうとすると、大体こんな流れになります。

・現地での農業体験(1〜数日程度)
・もう少し本格的な体験研修(数週間〜1ヶ月程度)
・座学を含む農業研修(1〜2年)
・安定して収穫できるようになるまで頑張る期間(3〜5年)

これだけの時間をかけてようやく生計が成り立つ基盤が整うかも?というレベルです。天候によっても左右されるので当然リスクもあり、成功するまでには時間もかかりますから、ゼロから始めるにはある程度の元手も必要になります。

独立就農って新しいビジネスを始めようとする起業家と同じなんですね。農業について楽なイメージを持っている人も多いので誤解されたくないから、と厳しい部分も誠意をもってきちんとお話してくれる農家さんもいました。


地方と首都圏のギャップ

日本は好景気が続いていると言われていますが、なかなか実感が伴ってきませんよね。人も仕事も多い首都圏ですら恩恵を受けている人は一部です。

老後のために3,000万円用意しなくてはならないと言われる時代に、農業を学ぶ時間、数年間収入がなくても生きていけるだけの蓄え、不作時を補える別の収入源の確保など、安全に農業を始められる条件を満たせる人材は首都圏にだってそう多くないのです。これだけの経済的な余裕があれば、他のビジネスに投資した方が良いと考える人もいるでしょうし。

人手が足りないのでとにかく移住して農家になってもらいたい地方の願いと、農業を始めたくても条件が厳しくて踏み出せない首都圏生活者の間にはまだ大きな溝があるのかな?という感じがします。この辺りはもっとお互いを理解していくことが重要ですね。


雇用就農という道もある

首都圏には多くの人がいますが、ほとんどが被雇用者です。起業家魂で一念発起するよりも安定した生活を!という声の方が多そうな気がします。

最近では地域一体をまるごと法人化したり、大企業が農業に進出したりと大きな資本の農業経営体が増えてきています。

農業経営体数等の動向(農林水産省)

この場合は会社に雇用される形になるので、転職に近い形態で農業を始められます。もちろん新しい道に踏み出す覚悟は必要ですし、利益を優先しすぎてしまえば農業が単なる搾取ビジネスになってしまう可能性もあるので一概に良いとは言えませんが、社会人=サラリーマンという意識が強い日本で就農者を増やすには効果に期待できそうです。

今回お話を伺う機会のあった岐阜県「JAめぐみの」さんでは、雇用就農を中心として働きながら学べるという点を強みとして打ち出していました。いずれ独立したいという気持ちが持っている方の支援も行っているので、最初の一歩としての選択肢としてはとても魅力的ですね。


まずは知ることから

こんな感じで途中からITの話はどうでも良くなり、ひたすらに農業の魅力に心を奪われていました。これからの農業は他の業種との関わりも大きくなっていくと思います。たとえばIT関連の仕事は農業の効率化に絶対必要ですし、高齢化が進んだ地域では介護などの知識が役立つ場面も多いでしょう。

農業だけでなく漁業や酪農、畜産業など人が食べ物を口にする限り必要な仕事はたくさんあります。今までは無頓着でしたが、これからは何らかの形で少しでも関わっていけるようになりたいという気持ちが生まれました。

今回のイベントは池袋サンシャインシティでの開催でしたが、農業に関する情報交換イベントは都内であれば有楽町の東京交通会館などでも定期的に行われています。

なので今からつながりを持っておきたいとか、今すぐ本格的な農業を始める気はなくても将来的に考えてみたいなど、少しでも興味を持たれた方にはぜひ参加してみて欲しいなと思いました。

今後は現地に行って見学や体験させていただいたりしながら、継続して学んでいきたいと思います。

お話を聞かせていただいた、
・山口県
・岡山県倉敷市
・岡山県矢掛町
・鳥取県琴浦町
・北海道黒松内町
・北海道北竜町
・広島県北広島町
・岐阜県関市
・岐阜県飛騨市
・福井県
・新潟県上越市
の皆様、貴重なお時間をありがとうございました。漏れていたらごめんなさい。

新・農業人フェア PRODUCED BY RECRUIT

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