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神の国(八百万の神々が力を合わせる国) 〜『大國民讀本』を読む〜(12)

鎌倉時代が終わった頃、我が国は朝廷が二つに分かれる南北朝の動乱時代に入ります。吉野に南朝、京都に北朝が、約60年間並び立ったのです。

南朝方に、公家でありながら武将としても活躍した北畠親房(きたばたけちかふさ)という人物がいました。親房は、北朝方と対戦する最中(さなか)に、南朝の正統性を明らかにした本を書きました。それが『神皇正統記(じんのうしょうとうき)』で、冒頭に次のように書かれています。

「大日本は神国(しんこく、神の国)です。天照大御神が基礎を起こし、代々の日の神である天皇が伝統を守ってきました。この事実は我が国だけのことで、外国にはありません。このことから神国と言われています」。

『神皇正統記(じんのうしょうとうき)』

この言葉は、本当にその通りです。

でも、神国の説明として、まだ足りないことがあります。

そもそも、神の本質は正義と仁愛(じんあい)にあり、地上に平和をもたらすのが神のお働きですが、天照大御神が国の基礎を起こされたり、大御神から続く正統として代々の天皇が続いてきたり、我々国民が皆、神の分派(神の子)であったりという連続性のほかに、忘れてはならない仲間同士の努力があります。

それは

”八百万(やおよろず)の神々が力を合わせ、平和で安定した国を建設してきた事実と、そこに流れる深い慈愛の心”を見失ってはいけない

ということです。

「平和を求める大御神のご精神を、八百万の神々が”心を一つにして実行”された」のです。無数の神々が、いろいろなところで大御神の願いを受けて、よく励みました。

例(たと)えば、山には山の神がいて山の幸(さち、恵み)を司り、海には海の神がいて海の幸を司りました。さらに、水にも、火にも、草にも、木にも神がいます。あるいは、産業にも、商売にも、学問にも、政治にもそれぞれの神がいて、各(かく)神々が、その受け持つ場所や場面の繁栄と幸福を担(にな)いました。

【林英臣の補足】
神の意味を考えるときは、同時に組(くみ)の意味も考えねばなりません。

大和言葉の音義(おんぎ、音の意味)で説明しますと、カミとクミは表裏の関係にあります。クミはカミの内実(内なる実質)なのです。

クミは組(くみ)で組織のことですが、活動する組織には必ず中心があります。それをミナカといいます。ミナカのミは実や身、満ちるのミで、その物を構成する実質や本体を表します。ナカは中で、内側・中側のことです。則ちミナカは、内側にある本体であり、本源的な中心を意味します。

そして、組織はタテ・ヨコで成り立ちます。タテのタは田んぼのタ、平(たいら)・高い・立つ・溜(た)まるのタで、高く広がっている状態、テは手・照る・出るのテで伸びていくようすを表します。つまり、タテは高き存在から伸びていくことです。

それから、ヨコのヨは世・代・夜・寄るのヨで移りゆくものを、コは凝る・凍るのコで固まるようすを表します。ヨコは、移りゆくものが一時的に結ばれている状態を意味しているのです。

これらをまとめますと、組織にはミナカ(中心)があり、ミナカから伸びていって部分と結ばれている方向がタテ、部分同士が連係している方向がヨコとなります。そうして、実質がしっかり結合している状態をクミといい、それを表から見て称(たた)えた言葉がカミなのです。

また、カミは上(かみ)でもあり、尊くて上位(じょうい、上の位置)にあるものは、みなカミと呼ばれました。カミとクミは、ミが共通しております。どちらもカ行音であることも共通しています。カはカ行音のアの段、クはカ行音のウの段です(カはカア、クはクウ)。

ア音は口を大きく開けて発声するから開く意味があり、ウ音は口を閉じて発声するから閉じる意味があります。だから、クミはカミの内実であるというわけです。

神の国とは、中心を本(もと)にして、タテ・ヨコがしっかり組まれた立派な国のことです。我が国は、日の神である代々の天皇が治め、仲間同士助け合い、国全体が大家族のように結ばれてきた素晴らしい国です。

タテばかりでなく、ヨコのつながりもしっかりしているのです。
それで、神の国と称えられたのです。(続く)



上記は、昭和2年(1927年)1月25日に出版された、文部省認定・林平馬著『大國民讀本』の内容を、林英臣が、こども向けに“翻訳”したものです。

「戦前は立派だった」いや「戦前はひどかった」、「戦後、日本は良くなった」いや「戦後、日本はダメになった」などと、大東亜戦争(第二次世界大戦)で歴史を前後に区切ることが一般的です。

ところが、『大國民讀本』を読むと、日本は明治から既におかしくなっていたことが分かります。90年以上前の本とは思えない内容が本書に記されているのです。これから取り戻すべき日本の原点が、余すところなく示されていることに読者は気付くはずです。

戦前の日本の実態をよく知り、これから祖国再生を進める上で、心得とすべきことが沢山出てまいります。

昭和に入ってから出版された本ですが、90年以上前の内容ですから古典の意訳に近い作業が必要でした。そこで、子供から大人まで世代を超えて読んでいただけるよう、できる限り分かりやすく書きました。

親子一緒に学んでいただいていただいても、楽しい本になったと自負しています。また、明治以降の日本史を正しく学べる本として、読者のご研究の参考になれば幸いです。

意訳者 林英臣

『大國民読本』を読む〜はじめに〜より(一部追記)

昭和2年に出版された著書ながら、今読んでも新しく、胸に突き刺さる指摘ばかりです。新しいがゆえに、我が国の抱える病巣や問題の根が深いことが良くわかります。

戦前の日本が良くわかる本『大國民讀本』

林英臣の元氣メール(メルマガ)」で、こども向けに優しく噛み砕いて連載していた内容を、〜『大國民讀本』を読む〜として刊行しています。
これからnoteで、逐次紹介して参りますが、下記からお求めいただき、共に「日本の原点」を取り戻すべく、ご家族ご友人と学んでくだされば幸いです。
https://hayashi-hideomi.com/books





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