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徒然日記2020.09.13

今日は朝起きてからそそくさと出発。車で出発したらベランダから子どもたちが手を振って見送ってくれている。なんて幸せなんだろう。と思った。一瞬の出来事である。仕事場へ着いて、午前の仕事を終えて、ランチタイム。今日はモスバーガーのテイクアウトだった。モスチーズバーガーにサラダセット、ドリンクはジンジャエールとした。これだけではお腹が空いてしまうとポテトのSも頼んだ。モスバーガーのポテトは美味しいのだ。美味しく食べた後、決まって車中で自宅へとテレビ電話をする。子どもたちは楽しそうに自宅で過ごしている。安心した。その後、両親へテレビ電話をする。両親は奈良へ旅をしていて、ホテルにいるところだった。母から「なんとか苦悩の中、生きています。」と言っていたが、近しい人が亡くなったせいもあり、自分自身の病気のこともあり、そんな心持ちのようである。ただ今を楽しんで夫婦で旅行しているのはとても良いことだと思った。午後も仕事を終えて、帰路につく。上の子は寝てしまっていて、寝顔を見た。なんとも無垢な寝顔だ。子育ては大変だけど、こんな一瞬になんとも言えない幸せの感覚を味わう。すぐに風呂に入って、夕食は鶏とブロッコリーのガーリック炒めに冷奴、サラダであった。とても美味しい!妻の料理は最高だ!グリーンラベルで流し込んだ。(ビールを我慢できなかったw)寝かしつけは妻が担当したが、下の子がなかなか寝付かず、私へとバトンは渡された。寝ている部屋に行って、下の子が妻と交代して私が来たことを察知すると、「ママはどこ?」「ママは仕事?」とたどたどしい言葉で無垢の言葉で問いかける。とても愛おしくなってしまった。しばらくして寝付いた。

さて今日の一考であるが、若松英輔著「悲しみの秘儀」(ナナロク社)を読了した。奥様を急に亡くされた大先輩と今月末、旅を共にする。私の心ばかりの贈り物にこの本を渡すことを決めていた。読んだことはなかったのだが、私の中で俵万智さんの推薦文や様々な方の書評を目にする機会があり、この本をプレゼントすることはコンステレーションのようにパッと浮かんだのだ。プレゼントするのに、読んでいないのは失礼に当たると、kindle版を購入した。単行本の方はもう絶版となっているようだが、どうしても単行本で渡したかったため、少し遠くの政令指定都市の大きな本屋に在庫があることを探し当て、取り置きしてもらっている。仕事のついでに立ち寄り購入する予定だ。

悲しみの秘儀を読了して、とても心が動かされた一節を引用したい。石牟礼道子の「花の文を─寄る辺なき魂の祈り」からの一節で、水俣病で亡くなった坂本きよ子さんの母親の言葉である。

きよ子は手も足もよじれてきて、手足が縄のようによじれて、わが身を縛っておりましたが、見るのも辛うして。それがあなた、死にました年でしたが、桜の花の散ります頃に。私がちょっと留守をしとりましたら、縁側に転げ出て、縁から落ちて、地面に這うとりましたですよ。たまがって駆け寄りましたら、かなわん指で、桜の花びらば拾おうとしよりましたです。曲った指で地面ににじりつけて、肘から血ぃ出して、「おかしゃん、はなば」ちゅうて、花びらば指すとですもんね。花もあなた、かわいそうに、地面ににじりつけられて。何の恨みも言わじゃった嫁入り前の娘が、たった一枚の桜の花びらば拾うのが、望みでした。それであなたにお願いですが、文ば、チッソの方々に、書いて下さいませんか。いや、世間の方々に。桜の時期に、花びらば一枚、きよ子のかわりに、拾うてやっては下さいませんでしょうか。花の供養に。

若松 英輔. 悲しみの秘義 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.539-548). Kindle 版.

今度、桜の花びらを拾う時に、この方のことが脳裏をよぎることだろう。人に出会い、共に生きて、愛すれば愛するほど、別れは悲しく辛くなる。亡き人は言葉を持たないが、亡き人を思う時に、自然と言葉がでてきて、書き出す。亡き人の魂が触れる経験をするだろうし、亡き人に伝えきれなかった思いを記す。それは必ずや亡き人に伝わるだろうと確信している。読み終えた後、これをプレゼントしようと思った私の判断は間違いではなかったと確信した。ああ、この本を選んで良かったと心から思えた。今、妻を亡くされた先輩の人生が彼に語りかけてきている。このときにこの本をプレゼントするのだ。きっとなにかを受け取ってくれるに違いない。

さて今日も一日が終わった。「死」というものは、思いがけずに訪れる。さっきまで隣にいた大切な人が死んでいくのを経験したとき、あまりの残酷さに言葉を失うだろう。「死」とは「生者」にとって、切断を意味し、もう二度とその人と会うことは出来ない、残酷だ。ただ悲しみの最中、亡き人を思い、亡き人の語れなかった言葉を探していると、亡き人の魂に触れるような感覚になる。この世にはいないという残酷さを痛烈に認識するとともに、あの世に思いを馳せて、あの世とのつながりを見いだそうとしていく。若松英輔さんでしか書けなかった珠玉の言葉に魅了された一日となった。亡き人に思いを馳せて日記をおわる。

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