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グレン・グールドへ愛を込めて

恥ずかしながら小さい頃からクラシックに触れてきた。母は元音楽教師で小さい頃からバイオリンを習わされていた。祖父もベートーヴェンが大好きで、交響曲をよく聴いた。普通の家庭よりはクラシックというものに触れることも多かった。それなのに、40になるまでグレン・グールドを知らなかった。

グレン・グールドの素晴らしいアルバムに触れて、「なんじゃこりゃぁ!!」と感動した。心が動かされた。普通の弾き方と明らかに違う、ところどころ早回しのようにめちゃくちゃ早い!それが中毒になる。そして弾きながら歌っているハミングまで録音されている。なにもかも革命。

グレン・グールドが好きな方には定番中の定番だと思うが、素晴らしいアルバムを2つ紹介したい。

バッハのゴルトベルグ変奏曲、不眠症の伯爵のためにバッハが書き下ろしたチェンバロで弾く用の曲らしい。これをピアノで朗々とグレン・グールドが弾く。私はこの2つのアルバムをとても素晴らしくて、これからもずっと聴き続けるだろう。なんで今まで知らなかったのか?と悔やむくらい素晴らしい。

はじめの55年のモノラル録音のものは、若き日のグレン・グールドが弾いている。勢いがあり、早い、速い、疾い、疾風怒濤。今をときめくピアニスト、ランランのものも聴いたが、なんかタルい気持ちになってしまう。グレン・グールドの弾くこのデビュー作のこのアルバムは、めっちゃ早くて、めっちゃ中毒性があって、最高に気持ちいい。テープを早送りにしてるのか?と思うくらい。語彙がなくて恐縮だが、本当にクセになる旋律の速さ、これはクラシックでありながら、ロック魂のような、なにか湧き上がる生命力のような、すばらしいなにかを感じる。

2枚目のアルバムも同じバッハのゴルトベルクだが、円熟味の増した晩年に弾かれたもの。録音もよく、これまた完成度が高い。私は初めてのグレン・グールドはこちらからだった。ちょうど読書のときにちょうどいい。このアルバムを1セットに読書をしている。旋律が読書の邪魔をしない、どんどん文字が入ってくる。歌ってるは歌ってる。グレン・グールドの声がまた心地よくなってくる。録音の良さも手伝って、最高のアルバムとなっている。読書に最適なグレン・グールドの決定版アルバム。

それでも私は55年のモノラル録音のものの中毒性を敢えて言わせていただく。一度聴いてほしい。なんちゅう速さで弾いてるんや。早回し。聞き惚れるバッハの旋律の心地よさ。必聴のアルバム。甲乙つけがたいというか、両方聴いた方がいい。熊楠ではないが、ニニフニなアルバムとなっている。

グールドは対位法と言われる、バッハの旋律に見られるような複数の旋律が同時に織りなす世界を表現することに長けていたらしい。グールド自身も同時並行で色々なことが出来る人だったみたいだ。南方熊楠は西洋の思想と東洋の思想の両方を複眼で見られたという。急に低レベルで恐縮だが、私は電話をしながら、片付け物をしたりするのが好きだ。異なるものを繋げていく、事事無礙の世界に、グールドも熊楠も芭蕉も道元もいるのかとしれないと、ビビッと稲妻が走った。

こんな素晴らしいものを残してくれた、グレン・グールド。素晴らしすぎる。音楽がまた好きになった。


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