『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(著:山口周)〜これからの時代は企業も個人も「感性」を加えた判断が求められます〜
いや正直、「世界のエリートはなぜ身だしなみに気を使うのか?」みたいなオシャレに関する話だと思ってました。
タイトルに『美意識を鍛える』ってあるだけに、そりゃオシャレの話だろと。
ところが、全然そんな内容ではなくて、論理とか理性を超えた「感性」についての話で、『美意識を鍛える』というのは「感性」を鍛えるってことでした。
まぁこれがめちゃくちゃおもしろい話です。
山口さんの著書ってビジネスに関する話なのに、哲学とか美術とか、とんでもない角度から話が飛んでくるんですよね。
だからすごい参考になる。
で、本書の内容についてです。
たとえば、今の企業経営って、利益としての数字を追い求めるが故に、論理とか理性に従って判断されますよね。
はやみ自身は学んだことはないですが、ビジネススクールとかってそういうことを学ぶんじゃないでしょうか。
こうした論理とか理性をベースに企業判断を下したとすると、後から「なぜそう判断したのか?」について説明責任(アカウンタビリティー)を果たすことが可能になります。
これはこれで良いことです(今まで良いとされてきましたし)。
ただ、説明責任を果たすことができるということは、言語化が可能ということです。
で、言語化が可能ということは、再現が可能ということです。
ということはですね、論理と理性でなされた企業判断というのは、再現が可能なものであって、まぁ極端にいうと誰でもできるということにつながります。
こうした企業判断が行き着くところは、製品やサービスのコモディティ化(一般化)です。
そうなると価格競争が激しくなります。
しかも、過酷な競争の中で数字を追い求めることになると、ついついそれが行きすぎてしまいがちで、倫理違反なども起きやすくなります。
ライブドア、三菱自動車、海外ではエンロンの事件などが良い例です。
そこで出てくるのが、論理と理性に「感性」を加えた判断です。
本書では、コモディティ化を防ぎ、オンリーワンの製品やサービスを生み出したり、企業倫理を踏み外すことがないようにするためのカギとなるのが「感性」ということになります。
感性を加えた判断というのは、その判断について言葉で説明することができません。
なぜなら、直感的に良いと感じたからその選択をしたという以外に説明のしようがないからです。
テキトーな感じに見えるかもしれませんが、これは逆に言い逃れできず、全責任を判断者が追うことになります。
感性による判断で成功した事例は、Appleですね。
日本ならマツダとかが本書では紹介されています。
そして感性で判断するというのは、目に見える数字的な要素を超えて、自分の「美意識」にそって判断するということです。
こうした判断の姿勢というのは、たとえば、明文化された法律を超えて、倫理観とかを大事にすることにつながりやすいので、先ほど例にあげたライブドアなどの事件は起こりにくくなります。
こうして本書では、これからの企業経営において、いかに「感性」が大事かについて、論理的に解説してくれます。
もちろん、「感性」とか「美意識」をどうやって鍛えていくかについても解説されていて、気になるところもしっかりとフォローされています。
企業経営だけでなく、これからの個人がどういった学びをしていけばいいのか、大いに参考になります。
そうそう、「感性」を磨く4つの方法のうちの一つとして、「読書」もあげられています。
もちろん、そこで想定されているのは古典的な名著の類だと思いますが、読書好きの私としては勇気づけられます。
これからも「感性」を磨くような読書を続けていきます。
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