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『ソロモンの偽証: 第Ⅲ部 上・下巻 』(著:宮部みゆき)〜テーマとして深く、ストーリーとしてはおもしろく|ものすごい作品です〜

ついにAudibleの全6巻を耳読しました。

やはり最後にこれまでの伏線が美しく回収されましたね。

しかも、フィナーレは想像を上回ってました。

もう、このシリーズでは毎度言ってますが、ホントにイヤホンを耳から話すのがしんどかったです。

それくらい先が気になってやめられない止まらない…

さて、最後の最後で気になったのが『ソロモンの偽証』ってタイトル。

どういう意味なのか気になりません?

登場人物には「ソロモンさん」なんて出てこないのに「ソロモンの偽証」なんて私は気になりました。

そもそも「ソロモン」ですが、「ダビデ王」とか「ソロモン王」という名前で、イスラエル王国の最盛期をつくった王として世界史でも出てきてたような気がします。

それくらいの記憶しかなかったので裁判との関係でちょこっとネット検索したところ、そのソロモン王は、神様に知恵を直接授けられた知恵者のシンボルだし、「ソロモンの審判」と言われる思慮深い裁判を行ったことでも有名なんですね。

本書の『ソロモンの偽証』というのはソロモン王のこうしたエピソードと絡んでのものなんでしょう。

ただ、「偽証」ってどういうことか、これは答えがないので、考えるしかないので、以下にはやみなりの考えをまとめてみます。

本書のあらすじというか、ストーリーの肝を一言で表すと、「ある中学生の死の原因を追求するために同級生たちが学校内で裁判を開く」というものです。

普通、病死でもないなら警察が原因を捜査するはずで、もちろん、本書の中でもきちんと捜査されてはいるんですが、なにか釈然としないものが残ります。

学校とか、警察の隠蔽体質的なものが原因となって、マスコミにある情報がリークされるまで遺族にも情報が開示されてないということがわかったりしたからです。

結局それは、ある中学生の死について、学校も、警察も、保護者も、マスコミも、(最終的には裁判という形で向きあうことにはなりますが)同級生も、みんな向きあうことをしてこなかったことが原因です。

あるいは、同級生の中の苦しみについても、みんな向きあってこなかったことが混乱に拍車をかける原因にもなります。

でも、学校も警察もみんな外形的にはちゃんと対応してるように見えるのです。

そして、学校や警察…は、社会の権威であったり(権威とまでは言えなくても)力であったり、ある種の「ソロモン」です。

そういう外面と内面とのギャップを著者は比喩として「ソロモンの偽証」と表現したのではないかと。

生きる意味について悩み、死に至った中学生も含めて深いです。

テーマは深く、でもストーリーはおもしろく。

これはすごい作品です。


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