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「たこの釣餌」被害者を食べる闇バイト①


今、日本ではもっとも報酬が高いと言われている闇バイトがある。

死体を食べるバイトだ。

事は10年前に逮捕された、とある犯罪者から始まった。
その犯罪者は完全犯罪をわずか15才の時から初め、20年以上もの間殺人を繰り返しながら平然と生きていたらしい。
被害者の数は100人を超えていると言われているが、未だに正確な人数は分からない。
前代未聞の大ニュースとなり、それから日本は大きく変わった。

彼女の犯罪がなぜ長年見つからなかったのか、それは死体処理の方法に秘密があった。

彼女は被害者を食べていたからだ。

血を好んで飲むために殺人を繰り返し、血はほぼ余すこと無く飲み、肉は満足するまで食す。
骨や内蔵は溶かし、灰にし、トイレに流した。

それが唯一の証拠としてたまたま発見された。
それから技術は更なる進歩を得て、死体の下水処理、山、海への放棄がほぼ不可能となった。
人を殺しても死体の行先がなくなり、家に保管するも時間の問題。
ほとんどの殺人犯は逮捕を免れることができなくなった。

そして主流になったのが死体を食べて隠蔽するというものだ。
だがそれも簡単ではなかった。
最初に死体を食べた犯罪者と違い、骨や内蔵、余すこと無く全てを食べきらなければいけなかった。
まともな感覚が少しでも残っていれば食べれないし、1人で食べきるのは不可能に近く、共犯者が必要だ。
この時点でハードルが一気に上がる。

そして生まれたのが「被害者を食べる」というバイトだ。

報酬は何人で食べるかにもよる。
雇う人数が多ければ情報漏れの可能性も上がるので取り分が減るだけでなく必然と安くなってしまう。
そしてどのくらいの日数で食べ切れるか、それも重要だった。
犯人はあまり時間をかけたくないだろう。
新たな証拠ができなぬよう、犯人はバイトが食べ切るまで用意した場所から出さないので、時間をかけてしまうとバイトの親族や友人に怪しまれる可能性が上がる。
依ってより早く少人数で食べることによって報酬は上がる。
それができるバイトは重宝されるので、高額な報酬を得られるだけでなく、何度も仕事が来る。
運がいいと1年程度で一生暮らせる金が手に入ったそうだ。
だが雇用者は犯罪者なのでリスクも大きい。
食べた後に請求したが金を貰えずただ犯罪に加担してしまったバカや、中には人を食べさせそいつも殺し、それをまた別のバイトに食べさせ殺す快楽殺人鬼も居た。
もっともそんな大胆な殺人犯は今の社会ではすぐに見つかってしまったが。

そして金の匂いを嗅ぎつけた大手企業が、裏で犯罪者とバイトを繋げるシステムを作り出した。
犯罪者が低リスクで信頼のおけるバイトを雇え、犯罪者にほぼ接触することなくバイトができるシステムだった。

殺人を許さない為に新しくなった社会は皮肉にも、金や地位がある人間が完全犯罪をできる社会を作ってしまった。
地位のある人間が犯罪者かもしれない、そして被害者を食べている人間が街中にいるかもしれないという恐怖は国民を想像以上に苦しめた。

そしてこの地獄を今すぐに終わらせる方法は、食べれる人間が居なくなることだった。

そして国民による「バイト狩り」が始まった。

上に刃向かえない恐怖は、政治などに興味を示さなかった若者までもを動かした。
「バイト」への処罰は一層重くなり、数は激減したが報酬も上がり、それは上流階級の人間と一般市民の戦争だった。

現在「バイト」をしているのは全国で300人程度と言われている。






そして今から私は、初めての「バイト」へ向かおうとしている。


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