夏の大鍋
私達が通り過ぎてきたあの日々にはもう帰れない
過去は遠きにありて想うもの
しかしもう一度私達は旅に出ることができる
老人というものを注視していると
日々虚ろになってゆく彼らの眼差しから
時おり幼児のような視線が発せられる
もう一度混沌に還り
世界と混ぜ合わせられる大鍋に
彼ら彼女らは足を踏み入れて
意味の喪失と記憶の蒸発に助けられて
人間の人間たるもの
生きることの生きることたることへと
還ってゆく
ただ微笑む世界へと
木の洞の小人達にいざなわれて
どこともしれない山や森の中へと
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