序「二つの時代の物語を」
僕は「カントク」と呼ばれている。映画の監督を生業としているから、まあそれは仕方のないことだろうと思う。28歳でデビューしてから43歳までの15年間、出会う人の全てにそう呼ばれていると言っていい。妻の日奈子でさえ「監督さん」と呼ぶし、僕が映画を撮っている所を見たことがない人も、そう呼ぶ。
映画「ふるさとがえり」の制作を岐阜県恵那市で行った時のこと。出会って5年、10年経って、初めて僕がカメラの前で「カット!」と声を張り上げる場面に出くわした人たちが、「カントクって本当に映画