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【怖い話】ボーイスカウトの体験会

これは私が小学3年生の時の話です。
当時、私は父の仕事の都合で違う小学校に転校してきたばかりで、最初は友人と呼べる友人がいない状態だったと記憶しています。

元々、あまり社交的な性格ではなかったのもあって転校先での学校生活は本当に辛かった。
授業が終わったらクラス当番の掃除をして、すぐに帰るという毎日でした。

そんな折、体育でやったドッチボールで運良く活躍できた私は、クラスの皆と仲良くなって一人ぼっちの毎日からさよならすることに成功し、つまらなくて辛い毎日から救われました。
本当に本当に嬉しくて、学校に行くのが楽しくなったのが両親や兄弟にも伝わったようで、家族の皆が喜んで私の話を聞いてくれるようになりました。

そうなると今までに無かった経験をした私は調子に乗って、もっと沢山の友達が欲しくなってしまいました。
何時しか自分から話したことのない人に話しかけるほど明るい性格になっていき、そんな時に同じ集団登下校のグループメンバーだった子(Y君)からボーイスカウトというものに誘われました。
大人になった今ならおかしいことだと分かるのですが、その地域のボーイスカウトは紹介制で誰でも入れるという訳ではないという話を聞き、何だか特別扱いをされたみたいで嬉しくなってしまいました。(面倒を見てくれる大人が少なく、子供の数を増やしたくなかったのだと思われます。)

すぐに参加したかったのですが、まずは私の人と成りが分からないと正式な入隊を認めることができないとかで、仮入隊の体験会(一泊のキャンプ)に招待していただいたことを母に伝えました。
母は私の身を案じてくれましたが、一週間に渡って説得を続けた私の熱量に折れ、私はキャンプに参加することが決まりました。

それから約3週間後、私は家族から離れてボーイスカウトの体験生としてキャンプに向かいました。
キャンプに行くまでの3週間の間に、Y君が実は私の2学年上の5年生であちこちで喧嘩ばかりしている問題児であるにも関わらず、”人気者”だということを知り、私はY君に憧れを持つことに…

キャンプ当日、集合場所である土手の広場まで両親に車で送ってもらい、私は隊に合流しました。
Y君が到着した私を見るなり、すぐに駆け寄ってきてくれて、私を隊の皆に紹介してくれたため私はすぐに隊に馴染むことができました。

私は少し特殊な格闘技を習っていたこともあり、Y君は私のことを『俺よりも強くて度胸がある凄い奴』と紹介したのでハードルが上がったことに少し不安を抱えたことを覚えています。
Y君と喧嘩をしたことはなかったはずなのですが、なぜかY君よりも年下の私の方が強いと言われてしまったことで、【しっかりしなくちゃ】、【早く家に帰りたいなんて言えなくなったな】という感情が芽生えてしまいました。

まさかこれが10年もの間に渡って大きなトラウマを抱えることになる原因になるとは思いもしませんでした。

小学校3年生ともなれば、”キャンプ”という言葉は当然知っていたものの、実際に体験したことが無かった私は何も分からず、何もできず、Y君に引っ付いて回っていました。
初めての参加だから大人達が色々手伝ってくれるんじゃないかと期待していた私は、全く私に絡んでこない大人達に不満を持ちました。

後から聞いたのですが、その隊は保護者の同意さえあれば小学校1年生から加入できるため、大人達は小学3年生の私よりもそちらの対応で手一杯だったのです。

キャンプは各々グループ毎にあみだくじで決めてテントで就寝することになっていましたが、私にはY君と違うテントが割り当てられ、少し落ち込みました。
そんな私にY君は夜皆が寝静まった頃に大人達がいないテントで集まることを提案してくれました。

私は行きのバスで沢山寝ていたので、夜が更けてもすぐに眠くなることはないと考え、二つ返事でOKし、誘いに応じました。

夜遅くに皆で狭いテントに集まり、大人の目を盗んでこそこそ話す。子供には凄く楽しいイベントです。
大人になった今なら分かりますが、絶対にバレていましたよね…

しかし、ここで宴もたけなわにY君とその友人がトイレに行きたいと言い出したことから、テントを抜け出し、その帰りに肝試しが始まることになりました。

何でも、今回のキャンプ地は以前にも隊のイベントでそのテントにいた皆が来たことがあるとのことで、10分ほど歩けば古い神社があるらしいと聞きました。
そこの神社へ行って、順番に石を置いてくる、取ってくる、という肝試しをやろうということになりました。

私は肝試しが怖いというよりも、そこからキャンプ地までの道が良く分かっていなかったことや神社の敷地内、行き来の道中が暗かったこともあって、無事に帰って来られるのか不安になり、”ここに来たの初めてだし、俺は止めておくよ”と喉元まで出て言いそうになりましたが、Y君から『何かあったら俺と一緒に皆を守って助けてくれよ』と真顔で頼まれたため、小さなプライドが邪魔をしてどうにも逃げられなくなりました。

皆で神社に移動し、ひそひそ小声で順番を決めているとき、私達は甲高い女性の声と物音を聞きました。

すると、Y君が私に『喧嘩の強い俺達2人で見に行こう』と誘って来たため、相当ビビりながらも私はそれに応じました。

敷地の狭い神社でしたが、地面に敷いてあった砂利に苦戦。音を立てないように歩くのは大変で、本当にゆっくりゆっくり歩かざるを得ません。時間にすると僅か5分か10分程度歩いたかどうかと言ったところ。

そして、そこで私とY君は白装束を着て丑の刻参りをしていた女性を見てしまいました。
見た瞬間は頭が真っ白になっていたので、丑の刻参りに来ていた女性だとは分かりませんでしたが、その風貌や表情があまりにも恐ろしくて私とY君は一目散に逃げました。
元々はトイレへ行くというだけの外出であったため、テントからはサンダルで出てきていましたが、キャンプ場に戻ったときにはサンダルが脱げていました。
いつ脱げたのか、どこかに落としてきたはずではありましたが、拾いに行く勇気なんてあるわけもない…

格闘技がどうとか、問題児だとか、そんなプライドは関係ありません。

この文章を書けているということで予想はついていると思いますが、私とY君、その他の友人達は皆無事にキャンプ地まで逃げられました。
私とY君だけは彼女と正面から見合ったので、最低でも私達2人が見てしまったことには気が付いていたはずですが、多分追いかけて来なかったのではないかと予想されます。

今ではキッズスマホというものを目にするので時代は変わったのでしょうが、当時は小学生が携帯電話を持つことはごく稀でした。
すぐにでも色々調べたかったのですが、方法と言えば図書館で本を探すくらいしか手段がなかったのを歯痒く思いました。

しかし、そこで諦めておけば良かったものを…何としても調べないと気が済まなかった私達は行動を起こして、結果として更なる恐怖に怯えることになりました。

私とY君は帰宅後、図書館にある本だけでは何も分からなかったため、パソコンが自宅にあって自由に使えることができる人を探し続けることにしました。
そして、ようやく見つけた友人の家にお邪魔してパソコンを借りて当時彼女が神社でやっていたことを小学生なりに一生懸命調べました。

"丑の刻参りは決して他人に見られてはいけない。丑の刻参りをしているところを他人に見られたら失敗するというだけではなく、自分へ呪いが返ってくることから、見てしまった人間は必ず◯すべきだ"というWEBページを発見してしまった私達は絶望しました。

そこから数年、10年、私とY君はいつ襲って来るか分からない彼女の恐怖に怯えながら過ごしました。

実話のため、締まらない最後でごめんなさい。
彼女が女性であることは分かっていますが、年齢も住んでいる地域も分からないため、今何歳なのか?まだ生きているのか?それすら分かりません。
そもそも丑の刻参りとは午前1時~午前3時の間に行うはずのものですが、私達が神社に着いたのは遅くても午後10時過ぎだったはず…

何だか変な経験でした。

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