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ぼくら、言葉を食べている


こうやって文章を書いていると、時々僕が書く文章を好きだと言ってくれる人がいる。なんともありがたいことだ。自分の文章や言葉の使い方、あとは撮った写真と聴いてる音楽のセンスを褒められるのは、実は「サッカー上手いね」と言われるよりもかなり嬉しい。


彼女もそういう風に、(気を抜くと風で倒されてしまうハリボテのような)僕の自己肯定感を支えてくれるひとりだ。

1つ年上のお姉さんで、好奇心と優しさに満ちていて、ポップな色をした服がよく似合う人。最近だと音楽の趣味も僕と近いことがわかってきたのだけど、そもそも物事のストライクゾーンが広いのかもしれない。そういう教養がある人だ。

彼女も少しnoteを書いていたりしていて、その頃に読んだ彼女の文章は知性があり、情報が整理されていて、そのうえに素直さがあった。そういうところが「いいな」と感じていたのだと思う。


ただそれを伝えてみると、本人は納得してなさげに、

「ほんとは君みたいな文章が書きたいんだけど」と言っていた。

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僕には書けなさそうな文章を書く人なので「そうなのか」と思ったし、僕の文章のようなものを無理に書く必要はきっとない。そもそもただの素人である「僕みたいな」文章ってどういうものか表現しづらい。

とはいえ、なんとなくわかるような気もする。

僕が自分で文章を書く時は自分の「好きな感じ」の文章にしていくので、雰囲気とか特徴が似てくるのだろう。「君っぽいね」と言われることも少なくない。


そして、彼女がそういう雰囲気ものを書きたいと見えるnoteもあって、たしかにそれは少しだけぎこちなさがあるように思えた。本人が「上手くいかない」というのはそのあたりだったのだと思う。



よくよく考えれば、彼女は博士課程に通う大学院生で、いわば研究者、科学者の卵だった。そんな彼女が普段から読んでいる文書、書く文章といえば———、

論文や実験のレポート、学術書のようなものが多いはずだ。そういう文章を日常的に読み書きしているから、ああいう落ち着いた文章が書けるんだろうなと妙に納得した覚えがある。


そんなサイエンスを専門とする彼女に「エモいエッセイを書いてほしい」と頼むのはちょっと違う気がする。向き不向きの問題のように思うのだ。ただ、当の本人がそういう目に見えない雰囲気みたいなものをまとった文章を書きたいと思っているなら、きっと書けた方がいい。自分の愛せる文章を書いた方がずっと楽しいはず。

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You Are What You Eat 
〜あなたの体はあなたが食べたもので作られている〜

栄養学や食育のシーンでよく聞くこんな言葉がある。僕みたいにスポーツや体育の世界にいると、他の人よりもその機会は多いのかもしれない。


今の僕の体はどれくらいか前に僕が食べたものでできている。

骨も筋肉も内臓も、皮膚も髪も、頭のてっぺんからつま先まで、その材料は僕が口に入れて咀嚼して、栄養として体内に取り入れたものだ。

言われてみれば当然のことだけど、食生活を疎かにする人はこの感覚が薄れているのかもしれない。


このフレーズを思い出して、文章も同じだなあと思ったのだ。

あなたの文章は、あなたが読んだものでできている

言葉を覚えるというのは、その言葉を聞いてマネをするところから始まる。僕が綴る文章は僕が読んだものからできているのだ。

子どもの頃にハマった小説は『ダレン・シャン』だった。『ハリー・ポッター』はなんでか読めなかった。

中高生の頃はあまり何を読んだか覚えてないけど、そのうちインターネット上の人の文章を読むようになった。

挙げるときりがないくらいだけど、カツセマサヒコさんや、夏生さえりさん、それから特に嘉島唯さんの文章には心を打たれることが多かった。最近だと、岸田奈美さんや幡野広志さんも好きだ。


やはり自分の文章は好きなライター、文筆家と言われるような人たちの影響をものすごく受けているように思えて、それならばと彼女には僕がこれまで心を打たれた文章を紹介してみたりした。


「これが、僕がこれまで食べてきた言葉たちです。」


僕の体が僕が食べたもので出ているように、僕の文章は僕が食べてきた言葉たちでできている。




最近少し心が弱ってしまった時に読んだのは、ある人が「いつかそういう時が来たら」と贈ってくれた吉本ばななさんの『イヤシノウタ』というエッセイ集だった。


生きてきた中で自分と自分の周りの人との間に起きた出来事を、明け方の湖面のように優しく、思い出すように綴られた文章は、僕がこれまで生きてきた中で出会った人のことも、いつかこんな風に優しく書けるといいなと思わせてくれた。



その言葉たちも、咀嚼と消化を経て、僕の文章を作ってくれるということだろう。


僕らは日々、言葉を食べている。




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お姉さんに紹介した書き手の方


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