見出し画像

前半戦を総括してみる

福島戦を終えて、シーズン34分の17を消化。
シーズン折り返し時点で11勝4分け2敗で勝ち点37を獲得して2位につける。もちろん目指すはJ3優勝なのでこの数字で満足いく人いかない人で分かれるのは当然であり、健全な状態だろう。

今回ここではチーム立ち上げ時の方針やコンセプト、また自分自身や周りの期待値なども踏まえた上でシーズン半分を終えての中間評価をしつつ、この半年を振り返っていこうと思う。

■成績面を振り返る

・1試合あたりの勝ち点平均2.18

まずは勝ち点面。
順位というのは相対的な部分が大きく、極論1勝もしていなくても1位につけることができる。順位が上であることに越したことはないが、中間段階では「どれだけのペースで自分たちが勝ち点を伸ばせているか?」ということがより重要だったりするのでここでは"平均勝ち点"にフォーカスしていこうと思う(まあ、結局相手があることなので勝ち点平均も相対的と言われればそれまでだが……笑)

ということで、現在の勝ち点平均は2.18。
勝ち点平均2.0が自動昇格のラインと言われており、昇格を目指すに値する勝ち点を稼げているのは今シーズンにおいてはまずは大きい。カテゴリーが違うとはいえ、昨年7勝しかできていない(勝ち点平均0.81)集団を立て直すのはまた1つハードルが高く、実際にシーズン前の展望でもことあるごとにその点は言われていた。個人的にも「負け癖を払拭できるか」というのは最初のテーマであり、そこでシーズン出遅れる可能性も十分あると感じていたのでこの結果は合格ラインと言っていいのではないかと思う。

また、名波監督も「9月、10月にピークを持ってくる」ということは立ち上げ当初から言っているので、そういう観点でもこの時点で今の勝ち点は順調なラインのはず。その予定通り、秋ごろにピークがやってくればまた1つギアは上がってくるだろう。

・得点数26

得点数は26点(1試合平均1.52)でリーグ5位。
こちらも順位は相対的なものになるが「複数得点で勝つ」ことが理想として挙がることが多いので、(実際に取りに行くかは試合展開次第だが)シーズンを通してあと8点ほど上積みをしたかったのが正直なところ。

得点者は9人。横山が得点数では7得点でトップ、外山が5得点、小松が4得点、住田が3得点と続く。外山がチーム2位の得点数で、常田や下川、宮部ら後ろの選手からも得点が生まれているのは良い傾向で、1~2年目の選手たちからゴールが多く生まれたのも今年のチームを象徴しているような内訳となっている。
ただ、一方で前線の選手の得点数14(横山7+小松4+榎本2+菊井1)は有馬・岩渕だけで14得点のいわき、有田・米澤だけで16得点の鹿児島と比べると全員を合わせても同数かそれ以下の数字になる。これもスタイルによって左右されるものではあるが、チャンス自体はこれまでの山雅と比べても多いので個人の評価を高めるためにももう少し底上げを期待したい。

パターンを見るとセットプレーからの得点が9得点でトップ(34.6%)、次にこぼれ球からが5得点(19.2%)。序盤に荒稼ぎしたセットプレーは例年と比べると比率は少ない位だが、こぼれ球からの得点比率は例年と比べてもかなり高い。ボックス内への人数のかけ方は今年力を入れているのでそれが数字に表れているのではないかと感じる。
しかし、クロスからの得点が3得点(11.5%)はかなり少なく、得点者も外山・小松・住田(多分)で1得点ずつなのでFWからは1得点しか生まれていない。クロス数はリーグ平均程度には上がっていることを考えると、チーム全体でもう少しFWに取らせたいところ。

・失点数13

先ほど"負け癖"について触れたが、それをさらに具体化させた"失点癖"はかなり深刻なところまで達していたのがここ2年だった。

去年は71失点と吐き気を催すような数字を叩き出してしまったのを受けて、今年は「35失点以下」という具体的な目標も立ててスタート。現在の13失点はそれを大きく下回るペースで、ここから大崩れでもしない限りクリアされるくらいの数値にはなった。

半年を通してみても、序盤6試合は毎試合失点で合計8失点していたが、その後の11試合で合計5失点、8つのクリーンシートで抑えている。時間帯別にみると去年やられがちだった立ち上がりの15分も今年はなんと前後半通して0失点セットプレーもわずか2失点とカテゴリーを差し引いてもかなり変化は見られる。
相手のシュート精度に救われている部分もあるが、それでも愛媛戦のようなゴラッソも飛んでくることはあるのでしっかりと寄せ切ってるシーンが増えているのは失点減には繋がっているはず。

また、橋内や篠原を先発として頼ることなく、常田や大野を中心に立て直したのもサポの(シーズン前の)期待値以上の成果なのではないか。

ただ、改善点もまだまだある。チーム全体の課題としては"リスタートの部分"と"警告数(ファール数)の多さ"。リスタートは痛い目に遭った愛媛戦後にかなり意識が変わったように思えるが、警告数は改善が見られない。押し込まれて多くなっているというよりは不用意な奪われ方をしてテクニカルファールをするケースが多いのが気がかり。

テクニカルファール自体は悪いことではなく、

の記事のように周りがゆっくり下がる時間を作れていることが失点の少なさにも繋がっているとは思うが、「うまく使えてるか」と言われるとそうではない場面が多い。大事な時に出場停止になるのは痛手なので、極力カードトラブルは抑えていきたい。

■キーワードから振り返る

・原点回帰

会場に掲げられている横断幕の「俺らは常に挑戦者」は、今の我々にぴったりだと思います。自分たちがいるべき場所。昨シーズン終わってから自問自答しながら考えましたが、なかなか明確な答えはありませんでした。しかし「自分たちが山雅らしさを出す」。これに関しては皆さんも感じている通り明確だと思っています。

よく聞いたのが、「反町さん時代はもっと走っていたよ」「反町さん時代は、もっと球際戦っていたよ」「もっとピッチで言い合っていたよ」「もっと最後まで諦めずに全員でゴールを守っていたよ」「行けるときはリスクを冒してどんどんゴール前に突っ込んでいったよ」。そういうことを耳にしました。今シーズンはその姿をしっかりとこの後ろの選手たちが見せてくれると思います。

2022シーズン松本山雅FC新体制発表会 名波監督コメントより

今シーズンの新体制発表会での名波監督の挨拶の中でも印象的だった1節。ここからさらに抽出した「走力」「球際」「コミュニケーション」「身体を張った守備」「ゴール前に人数をかけて入っていく」という部分を『原点』としてキャンプから直近の福島戦まで一貫して言い続けてきた。会見を見返してみてもこの部分に評価軸を置いていることが多く、逆にここ以外の部分に手を出して自分たちの強みが出せなくなるとかつての反町監督同様に「色気」と表現することもあった。

サッカーの根底にある部分なので上限を見ればキリはないが、去年・一昨年よりもこの部分にこだわり、突き詰めていることが今の結果に繋がっているのは結果として表れているのではないか。少なくとも"カテゴリーが下がったから"や"J2の選手を沢山連れてきたから"だけで簡単に今の立ち位置にはいれないのは去年の山雅やうまくいっていない他チームを見ても感じる。

ただし、「走力」「球際」「コミュニケーション」「身体を張った守備」「ゴール前に人数をかけて入っていく」の部分のスタンダードが半年で上がっていたとしてもまだまだ不完全な部分が多いのもまた事実で、最低でも1年は継続してこだわっていく必要はあるだろう。後半戦も次のテーマに進むというよりもこれらのキーワードはぶらさずに進んでいくと思われる。

この中でも「球際」や「ゴール前に人数をかけて入っていく」ことについては(展開や時間帯によるのはあるとしても)試合によって"できる試合"と"できない試合"がはっきりと分かれており、まだまだ改善点。後半戦も引き続き、この要素にこだわり、底上げをしていくことが昇格の近道になっていくはずだ。

・カメレオン戦法

我々は常に挑戦者ですし、圧倒的に力があるわけではないので、カメレオン戦法ではないですが、いろいろと駆使して選手の特徴を出しながら今後もやっていきたいと思います。

第一節 讃岐戦 試合後コメントより 

第一節終了後に突然飛び出した「カメレオン戦法」というキーワード。
これには「色んな選手を使う」「色んなシステムを使う」の大きく2つの意味が込められていると思うが、まずは後者を中心に振り返っていく。

これまでを振り返ると松本山雅は(J参入以降は)ほとんどを3バックで戦ってきたという歴史がある。もちろん同じシステムを「伝統」として続けているクラブも中には存在するが、山雅の場合は近年は毎年のようにチャレンジまでは試みるも、どちらかというと「挫折」してきた歴史がある。

まさに"去年は開幕前に断念したこと"や"今年も開幕時点で常田、佐藤、米原、横山の4人以外はこれまで90分やっていない状況だった"ということを考えると、正直「ほぼ同じメンツでやっても二の舞になるのでは……?」という不安もあったが、無事開幕戦は4バックスタートで乗り越え、ここまでは大きく5つのシステムを使い分けている。

試合を重ねるごとにバリエーションは増えていき、選手からも自信が垣間見えるコメントが出るようになっているので"複数システムの併用の第一歩"は乗り越えた感じはする。出れていない選手もこれに適用できるようになればチャンスは広がってくるので、後半戦も焦らずコツコツと積み上げていきたい。

あとはこれまでは守備を考えてのシステム変更が多かったので、守備のリスクを抑えつつ「攻撃を考えてのシステム変更を行う」ことや「流れの中での可変を取り入れる」ことなどこれまでの延長線上にあるものを後半戦で見せることができれば、これまでの強みに上積みをする形でバリエーションを作れるのではないかと思う。

・若手・既存選手の底上げ

先ほどのカメレオン戦法にもかかっているが、この半年を振り返ってみてキーワードとして見逃せないのは「積極的な若手起用」

スカッド的にも選手を多く抱えているだけではなく、恐らく当初の計画よりも怪我人は抑えられているので、当然メンバー外の選手は多くなってしまうが、その中でも全員の士気を落とさないというのは一般的な監督以上に意識しているはず。

去年から「練習で3週間良かった選手は使う」「少しでもコンディションに不安があれば休ませる」というのは継続してやっているが、今年はさらに「ベンチ外で客観的に見させる」というのも挟みながらチャンスがあれば新しい選手を使うというのを続けてきている。

今ではすっかり主力に定着してそれを感じさせないが、横山や住田、菊井も後々絡んでくるような実力はあったにしろ、この積極的なスタンスを持っていなければここまで多くの時間、試合に絡めてはいなかっただろう。稲福や村越、山本龍も数試合ではあるが、他の主力選手もいる状態で先発起用され、若手ではないが田中(パ)も連続でスタメン起用された。

さらに特指の濱名やユースの田中(想)をいきなり起用し、彼らがゴールやアシストを記録したのもこの半年では印象的だった

勝ちを1つ落としただけで致命的になるシーズン、また隣とのダービーでもこうした思い切った起用をするのは少し間違えば大バッシングを喰らうことにもなりかねないくらいリスクは隣り合わせだが、今のところは良い方向に進んでいることが多い。

・前選択

最後に、これまでの項目と比べると少し踏み入った領域にはなるが「前選択」と「縦ずれ・横ずれ・中締め」は就任当初から掲げている。

相手の陣形が整う前に素早い攻撃を仕掛けたり、相手のプレスを無力化する前選択は徐々に浸透しつつあり、特に裏に向けて走るコースを去年から徹底的に叩きこまれていた横山がそれによって才能を開花。菊井も流経時代からどちらかというと素早く攻撃を仕掛けたいタイプだったので溶け込むまでが早かった。

ただその先の「前サポート」、「ボールホルダーを追い越していくリスクをかけた攻撃」については課題であり、伸びしろがある。横山が裏に抜けた後のサポートの動き、また横山自身の精度が伴っていないため、なかなか厚みが生まれないケースが多く、チャンスをふいにしている。

現状、”味方を下手に使うよりも自分で行けるところまで行った方がシュートまで行ける確率が高い”というようなプレー選択が多いのはあまり健全ではないが、その一方で目の前の試合を勝つ上ではより確率が高い方を選ぶのは妥当な判断ともいえるので、裏に抜けた後の周りのサポートと判断の早さ、出し手のプレー選択とパスの精度を高めて、他の選択肢の確率をあげていくことで攻撃の幅・選択肢を広げていきたい。

この点は外山が目指しているサッカーをしっかりと体現し、結果を残しており、選手としての成長も感じられる。リスクをかければ良いというわけではないが、そこにいないはずの選手が入ってくると当然、相手が守りにくい攻撃になる。入ってくる選手が警戒されだすことによってFWのマークも薄くなるというメリットも生まれるので、リスクとのバランスをうまく取りつつ、チャレンジの数を増やしていきたい。

・縦ズレ・横ズレ・中締め

守備のキーワードとしてよく上げられているのが縦ズレ、横ズレ、中締めの3つ。

シーズン序盤は縦ズレ・横ズレを逆に利用されて、失点するというケースも多かったが、3バックと4バックの浸透が進むにつれてそのズレも少なくなってきている

最近ではリードした時にあえて後ろがスライドせずにブロックを組むパターンと時間帯・状況ごとに使い分けることで、したたかな試合運びにはなっている。だが、その一方で後ろに重たくなることで逆に攻撃時のゴールまでの距離も長くなり、追加点は取りにくくなるというのも課題の1つ。

また、福島や宮崎のような後方からしっかり剥がしてくるような相手の時に、前線の守備網が簡単に突破されてしまい、縦ズレ・横ズレのスライドを行う時間が作れず、守備ブロックの高さをうまく保てないという試合も出てきている。名波監督もここ最近2トップの守備について言及する試合が増えてきているが、チームスタイルを考えてもここは最優先でテコ入れを図るかもしれない。

これは一見すると守備の話のようだが、前線からしっかりと限定して、守備ブロックを高い位置に保ち続けることでゴールまでの工数は抑えられ、効率よく2点目、3点目を狙っていける。しっかりと複数得点をあげていくためにも今一度守備でやることを整え、充実の後半戦にしたい。

END

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?