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霜田山雅の前半戦を振り返る<チーム編>

久々のnoteです。
仕事の事情もあって割り切って一時休止していましたが、それもひと段落してきて再びnoteに手をつけられるようになったので、再びできる範囲で頑張っていこうと思います。

ということで、ちょうど戻ってきた時期と前半戦の終了の時期が重なったので今回は前半戦の振り返りを行います。どこかで聞いたような話も多いかもしれませんが温かい目でお願いします……!

「チーム編」と「個人編」の2本立てで行く予定なので、まずは「チーム編」です


■各種データ

・勝ち点

まずは基本的なところから。
前半戦折り返し時点で、山雅は8勝7敗4分けの6位。勝ち点は28。
上位と比べると負け数が多いのがネックとなっている(リーグ10位タイ)。

1試合の勝ち点平均は1.47。最終勝ち点予測は56。
一般的に言われる昇格ライン(勝ち点平均2.0)と比べると勝ち点10足りない計算に。だが、勝ち点予測で当てはめると優勝は「76」、昇格は「72」というのが現状のライン。

ちなみに、昨年は折り返し時点(17節)で最多勝ち点のいわき・山雅が勝ち点37(平均2.17)、3位鹿児島が勝ち点35(平均2.05)、藤枝が勝ち点32(平均1.88)だったので、こう見てもそれほどトップが走っていないのが幸いか……。

・得点/失点

次に得点と失点。
総得点33はリーグトップ(2位は富山の32)。
総失点26はリーグ14位(1位は大阪の14)。

昨年は失点数の少ないチームが軒並み上位を占めていたのに対して、今年は7位大阪、8位奈良、9位岐阜の順で失点数が少なく、逆に首位愛媛は失点数11位(23失点)、続く富山も10位(22失点)と「失点の少なさで上位にいるチームが少ない」のが今年のJ3の珍しい特徴となっている(まあ、愛媛は開幕戦の5失点が響いている気がするが…)。

話を山雅に戻し、得点変動を見てみると……

上がり下がりが激しく、6節前後と12節前後に急増したはいいものの、その後、いずれも再び減少の時期を迎えている。

興味深いのは序盤の5節以降は「失点数も(得点数と)ほぼ同じような推移を辿っている点」。言い換えると、得点が増やそうとすると失点も増え、失点を減らそうとすると得点も減るという流れが何度かあった。

それだけ試行錯誤してやっているという見方もできるが、その期間にも勝ち点では足踏みしているのもまた現実。今は前節の3点差での勝利もあって一時的に得点と失点の推移に変化が起きているのでこの流れを止めることができるか。

・個人成績

次に個人成績(個人の細かい雑感はまた別の機会に)。
これまでもレビューを書くたびにまとめていたが、ここで中間成績を出していく。

・ゴール(32)

13:小松
4:菊井
3:村越、滝
2:パウリーニョ、野々村、鈴木
1:榎本、山本、渡邉、OG

小松が序盤からリーグ得点王をキープ。FWに得点を取らせる仕組みづくりの効果が序盤から出たのはこの順位にいる一番の要因と言っても過言ではない。

一方で、4得点の菊井が2位で、小松以外の選手が2桁ペースに達していないのはやや物足りない。仕組みでやっている以上は個人の功績・責任ではないが、ここからもう1つ上を目指していく上では2人目以降のスコアラーが出てくるか?は重要になってくる。

・アシスト(23)

5:菊井
3:小松、下川
2:山本、滝、常田
1:鈴木、野々村、榎本、住田、渡邉、村越

トップは菊井の5アシスト。小松のゴールの内、いくつかは菊井無しには成り立たないようなものもあった。さらに昨年が1年を通して約30アシストなので、選手間の関係性からの得点が増えていることが分かる(得点ペース自体、今年の方が上なのもあるが)。

ただし、リーグ1位のクロス数を誇る中、サイドのアシスト数はそれほど多くはない。クロスからのアシストはもう少し増やしていきたい。

・警告・退場(26・2)

5:菊井<1>
4:野々村<1>
2:山本、パウリーニョ、滝
1:小松、住田、榎本、下川、喜山、渡邉、藤谷、常田、安東、安永(武石C<1>)
0:村越<1>

昨年57枚のイエローカードを受けたが、今年はシーズンの半分で26枚。さらに1試合平均に合わせると、昨年1.68、今年1.37と減った。ただし、退場数は"2"で昨年の1年間での数字に並ぶ

ただし、リーグ全体で見ると反則ポイントは17位、警告数10位と山雅は優秀なチームではない(余談だが警告数では愛媛、富山はワースト3位、4位にいる)。

次に内訳を見ると「反スポ(26→14 ※以下全て半年での数字)」「ラフプレー(17→8)」の数はそれほど変わらず。気になるのは「異議(4→4)」で、昨年の数字に前半戦で並んでいる点。

一方、「繰り返しの違反(3→0)」「遅延行為(7→0)」で未だに1枚もカードを貰っていない。特に遅延行為による反則は明らかに減っているので今年の意識改革の成果が出ていると言える。

■4局面ごとに振り返る

・非保持

オフから「より前線のプレスの効率性を重視した賢守」「ハイプレスハイライン」など具体的なワードが飛び出していた今年の山雅。

受け取り手からは攻撃的サッカーというところからどうしても「ボールを握る(ポゼッション)」「パスサッカー」時には「守備をしない」と結び付けられがちだが、"ひとまず"は上で出た2つのキーワードをベースにした「プレッシング」が山口時代から変わらぬ霜田サッカーのベースであり、生命線だと思っている。とか書き出すと前半戦の総括じゃなくなっていくので早速本題に。

まずは「堅守」の部分。小松を中心にしたプレスから守備はスタートさせる。相手がCB2枚回すのであれば菊井との2枚で追う、3バックの相手の場合はSHが出て行って3枚で追う。この時下りてくるアンカー(ボランチ)は基本的にはボランチが捕まえに出て行く。

そうすると相手はこれを裏返そうと長いボールを使ってくる。ここで「ハイプレス」になればなるほど相手のボールは苦し紛れになるので、これを「ハイライン」を敷いている空中戦に強いCBやもう1枚のボランチが弾く(もしくは頭を越された場合はGKも使いながら回収)。そして、高い位置から素早く攻撃に繋げて、前線に残ったアタッカーたちが手数をかけずに仕留める。

これが理想的なムーブである。開幕直後はこれに近かった。
だが、シーズン進むにつれて大きく2つの問題点が出てくる。

1つは「相手」の問題
シーズンが進むにつれて対策は進み、前線では低い位置まで下りてくるアンカーやGKを使ったビルドアップ、最終ラインでは裏へとガンガン抜けてくる相手へのロングボールに苦戦中。山雅がハイプレスに来るのを見越し、引き付けておいてロングボールを放られるとどうしても前後が引き裂かれがちになる。この対策を乗り越えると八戸戦の先制点、前半のような展開を多く作れるだろう。

もう1つは「時間」の問題
序盤ハイプレスが決まった試合でも、終盤になるにつれてハイラインやハイプレスが維持できなくなる問題点があり、それに従って本来のスタイルから外れていき、プレスどころか自陣から抜け出せない展開となってしまう。ここから体力面が劇的に向上するのは難しいと思うので、全体の質を向上させて無駄な体力浪費を防ぐか交代カードをうまく使いながらこの問題を改善していきたい。

・ポジトラ(非保持→保持)

そして、ポジトラも(基本的には)奪った段階で前に残っている人数がこれまでとは明らかに多くなっている分、純粋にパスの選択肢も増え、シュートまでの選択肢(ルート)が多くなっている。昨年までよりも構造上、トランジションから"狙い通り攻撃の形"や"確率の高い攻撃"は繰り出しやすくなった。

八戸戦で安東が奪った時に前線の4枚が前に残った状態でカウンターを繰り出し、滝がフリーでシュートを決めることができたのもまさにその形で記憶にも新しい。そこの精度は上がれば上がるほど得点は増えていくはず。特に序盤の体力があるうちや途中から入ってくる交代選手は確実にここを仕留めたい。

大問題は自陣に押し込まれた時。
押し込まれてしまうと、本来あるはずのパスの選択肢がそもそも少なくなってしまうし、かといって山雅はGKを使って時間とスペースを作るわけでもない、そして前線も独力で身体を張って時間を作ったり、ロングカウンターを完結させるのはこれまでの山雅の前線の選手たちほど得意としていない(そもそもそこまで求められていない)。

つまり、即時奪回に対して交わす術があまりないので、相手も強気に来るし、こちらも難しいプレー選択をするか苦し紛れにクリアするしかないという状態になる。それでもチャレンジして繋いでいくのもありだが、鹿児島戦の3失点目の住田→龍平のパスミスのような、後から見ると「いやいや、クリアでいいでしょ……」みたいに見える喰われ方もしてしまうはずなので、ひとまずセーフティクリアをしてやり過ごすような判断もシーズン序盤よりもアリになっている(気がする)。

あとは独力で時間を作れるような選手が出てくればロングカウンターでそのまま運んでもらうも良し、その選択肢も持ちつつ繋ぐも良し……というようにできるのだが、現状選手選考でもプレー選択でもその優先度は高くない。霜田監督のサッカーにある程度適応しつつ、個でも違いを見せられる国友が前半戦ではその役割に一番近かったように感じる。

・保持

さて、案の定、一番のネックになっている保持面
先ほど「"ひとまず"はプレッシングが霜田サッカーのベース」という表現をしたが、"状況に応じて"高いレベルの保持やビルドアップ能力が必須になってくるのが霜田サッカーの特徴でもある。

以前の山雅から考えると、どう保持していくかにトライし続けられていることがまず1つの成長ではあるわけだが、そうは言っても完成度が伴わないと保持のフェーズが狙われやすくなってしまう。

実際、ボランチ+CBでビルドアップする際にボランチとCB間を遮断してくる相手に対しては保持で上回れずに苦戦しがちで、我慢できずに前の選手が下りてくると今度は前線に怖さが無くなり、相手が余計に前がかりにプレスに来られるという悪循環に陥ることもしばしば。

大前提として「繋ぐことが目的ではない」と霜田監督もコメントで度々意識づけているのでそこの折り合いは後半戦はうまくつけていきたい。

ただし、先週加入が発表されて早速スタメンで好プレーを見せた安永とキャプテンの安東コンビが八戸戦で光明を見せてくれた。システム上の噛み合わせの問題もあるのでこの試合だけで太鼓判は押すには早すぎるが、「ボランチの人選が固定できなかったこと」や「相手を見ながらボールを動かしていける選手が少なかったこと」がネックになっていたので、大きな解決策となってくれるだろう。

また、押し込む想定でやってるだけあってか、敵陣ポゼッションは自陣ポゼッションに比べるとかなり安定が見られる。山口・大宮時代はボールは回るが誰もシュートを打たず、ただボールだけが回っているようなシーンも多かったが、山雅の場合はシュートやクロスまで比較的手数をかけずにやろうという意思は強く感じられる。このあたりは本来のクラブカラーもあるかもしれない。

・ネガトラ(保持→非保持)

相手を十分に押し下げることができる時は即時奪回がハマることもあるが、不用意な奪われ方をしたり、相手の前線に個で収められる選手がいたりした場合、後ろが薄い分だけスペースは広大にあって一気にロングカウンターを決められやすいのは構造上の欠点として常にある

特にSB裏の空いているスペースをボランチが埋めるのが間に合わない時はCBが釣りだされて不利な勝負を強いられる、中やバイタルが手薄になるのは何度か見られた形なのでその形を作られないように前線からしっかりと責任を持ち、チームとしてしっかりディレイしたいところ。

その点では、1つネックとなっているのは2列目の選手の自由度がかなり高い点。サイドの選手が逆まで出張することも頻繁にあるが、物理的に人が戻るよりもボールの方が早いので、奪った後に空けているスペースを使われると戻り切るのは難しい。時には小松がハードワークして戻るようなこともある。

そこはある程度割り切って自由を与えているのかもしれないが、せっかく相手を押し込んだとしても奪った後の抜け道があるとそこから山雅陣内に運ばれてしまうのでそれを防ぐための対策は必要かもしれない。

■出場時間で振り返る

トップは常田の1710分。
山雅ではここまで唯一の全試合先発&フル出場中。リーグ全体で見ても8人のみ(FPでは5人)で、1桁順位のチームでこの出場時間を記録しているのもFC大阪のGK永井と常田のみ。「替えが効かない戦力」という点では最重要人物と言っても過言ではない。

続くのは菊井1614分、小松1517分
菊井は出場停止の1試合を除くと2点リードした奈良戦、今治戦で87分で退いたのみ。小松も序盤戦と八戸戦(コンディション不良)以外は4点リードの相模原戦(76分)で交代しただけとなる。

以上の3人は90分欠かせない戦力という位置づけに。

そして、野々村1343分、下川1329分、パウリーニョ1229分
一時ポジションを空け、合計4試合欠場はあったがほぼすべての期間で出続けてきている。ただし、パウリーニョは前半戦残り5試合で出場時間が減少中(欠場も込み)、安東の復帰、安永の加入で依存度はやや減ったか。

続いては新加入組の藤谷1083分、滝1032分
2人とも開幕から出場を続け、一時スタメンから外れていた時期がそれなりにあったが、ここ最近では再び返り咲き。後半戦はここから数字をどれだけ残せるか。

最後に、ギリギリ(全時間の)半分以上出場なのが住田908分、村山900分。
住田は序盤に、村山は相模原戦以降に欠かせない戦力として定着して出場時間を伸ばす。共に1度信頼を掴めば続けて起用され、離れてしまうと一気に出番が減る傾向がある。

以上が全1710分中、半分以上出場した選手たち。

ポジションごとに見ると、最前線の2枚とCBはほぼ固定。
右WGは半分以上出た選手が唯一不在
GK、ボランチ、左WG、右SBの順でポジション争いが熾烈だった。

■時間帯別データで振り返る

最後に、時間帯別データ

前後半を通して、残り15分での得失点率が増えている
だが、その比率は対照的で、最終盤の75~90分では唯一得失点の数が逆転し、失点数が得点数を上回っている。

12失点は全失点の46%。各チームを見ても失点が増える時間帯とはいえ、その比率は非常に多い。失点そのものを防ぐのはもちろんのこと、得点比率の増える30~45分、60~75分の時間帯でできるだけ得点を稼ぐというのも重要になってきそう。

■後半戦1発目はいきなり天王山

そして、後半戦初戦は首位の愛媛。
昇格を目指す山雅にとってはいきなり天王山となる。

愛媛とはホームで7月1日に対戦したばかり。
その際は前半から相手のサイド攻撃に苦戦を強いられ、後半の早い時間に失点。しかもその後、乱闘騒ぎから村越と武石コーチが退場してしまうという大荒れのゲームに。絶体絶命の状態に陥ったが、ワンチャンスにかけて44ブロックを固め、セットプレーでの得点でドローに持ち込んだ。

愛媛にとっては勝ち点3を取りこぼしたゲームになったが、その後、勢いは加速。富山相手に2点差をひっくり返して4-3で勝利すると、八戸にも終了ギリギリの2得点で逆転勝ち、続く鹿児島にも早々に失点するも逆転勝ちを収め、なんと全て逆転勝ちの3連勝中。元々60分以降に強いチームだったが、それが顕著に出ている。

前回との違いとして強力2トップだった松田・ベンダンカンに代わって、そこまで無得点から直近3戦4発中の深堀がFWの軸となっている点。柏からレンタル中の升掛も途中出場から切り札となっており、前線の厚みが増した。山雅戦でも最終的に追加点を取れなかったことが響いたが、今回は同じようにはいかないはず。

まずはそこに至るビルドアップや高精度のクロスを供給する左サイドの連携をいかに止めるかにフォーカスして、前節からの成長を見せていきたい。

後半戦いいスタートを切るためにもなんとしても勝ち点3を持ち帰ろう。

END


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