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大阪戦レビューとか〜非常時のQ&A〜

<両チームスタメン>

■松本山雅

中2日の日程が続き、いわて戦からスタメンを7人変更。

GKは変わらず神田。
最終ラインは3名が入れ替わり(山本龍、高橋、馬渡→)樋口、野々村、藤谷と常田で馬力のあるメンツが並ぶ。
ボランチもリーグ全試合先発していた山本ではなく住田に変更。
2列目は滝、安藤に変えて村越とリーグ初先発の佐相。
浅川の負傷した1トップは山口が起用される。

ベンチには高橋や馬渡、山本らここまで主力だったベテラン組が多く控える。

■FC大阪

キャンプから好調を維持し、開幕3連勝と絶好のスタートを切るもここ2試合では連続でスコアレスドロー。得点面で苦しんでいる大阪はスタメンを3名変更。

GKや最終ラインは変わらず。開幕から変わらないメンバーで挑む。
ボランチは開幕から武井と下澤だったが下澤に変えてウ・サンホ。こちらも中盤の奪い合いを重視したような人選となった。
前線はSHに利根に代わって田中、2トップの1角には昨年コテンパンにやられた木匠ではなく、ルーキーの西村が入った。

<総評>

■いかなる時も強さを発揮できるか?

・これもまたサッカー

昨年9月頭、同じ花園で行われたアウェイゲーム。

前半20分までにあっけなく2失点を喫して1-3で完敗し、強く記憶に刻まれている人も多いだろう

それは選手も同じはず。この試合では山雅側は5人、大阪側は8人がその試合と同じスタメン。昨年出ていた選手は特にこの相手、ピッチのことは体感済みで燃えるものがあったはず。

加えて両チーム無視できなかったのは悪天候とそれによりぬかるむピッチ

監督の試合後コメントでもこのピッチへの捉え方や試合前からのチームのスタンスを

去年も含めてピッチ状況がなかなかサッカーをできるピッチではなかったので、選手としても非常にストレスを抱えていました
実際にウォーミングアップが終わってから選手たちも「今日は普段やっているサッカーはできないな」とちゃんと気持ちも身体も切り替えて、今日このコンディションでこの相手に勝つサッカーをやろうということで戦ってきました

と話している。

「普段やっている、やりたいサッカーができない」

ただ言い訳はできない。

昨年の反省は十分踏まえているはずだし、(ここまで過酷になるとは思ってなかったはずだが笑)J3という環境では特にそのシチュエーションは起こりうる。

「その中でどう戦うのか?」は今シーズンを占う注目点の1つだった。

いざ試合が始まると、まさにその言葉・反省点を表したかのような割り切ったサッカーを展開していく

立ち上がりに流れを掴んだのは山雅。大阪側のピッチが特にボールが転がらなかったこともあって、機動力があって球際も喰らいついていける前線の山口、菊井、佐相、村越が激しくプレスをかけ、相手に自由にロングボールを蹴らさない。アバウトなボールになれば常田・野々村は問題なくそれを弾き、敵陣に相手を押し込んだ状態でゲームを進める。

ただその時間も長くは続かない。
ロングボールは2CBに弾かれ、そのセカンドボール回収も住田安永に阻まれていたFC大阪だったが、途中から止まるグラウンドの特性を活かし、ゴルフのバンカーショットのようにボールを浮かしてそれを近くの選手で回収するという戦い方に切り替え

これによって山雅はボールを弾けず、拾っても密集ができてるため、外に逃げる→スローインで陣地回復という大阪の攻撃に徐々に押し返されるように。

トランジション対策はできていたものの、奪ったあとはロングボールもビルドアップも難しく、前身する手建てが大阪よりも欠けていた。

得点源となるセットプレーを取るにもその前の陣地回復に苦労していたのはCK2本-11本という数字にも現れている。

・リスクを減らす戦い

一方、トランジション・球際以外にも前線から守備はよく粘れていた。

普段は攻撃に割いているエネルギーを自陣での守備に使っていたのは当然あるが、自陣で大きな綻びは見せず、神田も安定感を見せたのは昨年からの成長。

ロングカウンターもドリブルが減速する関係で守備側に優位があり、目に見えた脅威となっていたのは「セットプレーやファールトラブル」と「自陣での事故」くらい……。両チームそんな状態だったため、そのリスクは徹底的に抑えた方が優位に立てるのは必然的だった。

しかし、その点上手だったのは大阪。
スライディングやプレスバックで気持ちを見せる山雅に対して、それを逆手に取ったプレーヤファールを誘うようなコース取りを見せて試合を優位に進めていく

安永や佐相の反則を誘い、警告をつけた(=リスクを持たせた)状態で試合を進められたことが結果的には前半終了間際の退場に繋がった。直前の抗議自体は褒められたものではないが、そうしたゲームコントロールも達者でこういう条件で戦う中では優位に働いていたと思う。

もちろん山雅にとっては不運や納得のいかない判定があったのは事実だし、佐相個人を責めるような流れでもなかった。

ただ普段のような確率や再現性を求める戦いではなく、予測不能なカオスな戦いを選び、身を置いたからにはそうした不運や事故が起こりやすいのはある程度許容する必要があるし、リスク管理を正しくしながら戦っていかなければそういう事態が起こりやすくなってしまうのは自然の摂理だろう。

・これもまたまたサッカー

こうしてただでさえ消耗戦にも関わらず、10人での戦いに。菊井をサイドに置かざるを得なくなり、山口が慣れない前線1枚に……というなかなかの逆境の中で45分戦うことになった山雅。

絶体絶命か……と思われたが、これでやれることが限られたことでやることが明確になり、逆に大阪はブロックを組む相手に保持の時間が増えたことで普段の持ち味が出しにくくなっていく(保持のキーマンだった下澤をベンチスタートにしたのもあるだろう)。

これもまたサッカーの醍醐味かもしれない。

後半頭の15分、大阪が猛攻を浴びせるもあと1刺しができない内に、山雅は61分には山本康、馬渡ら主力組を投入。カウンターに出ていく機会も増えていき、84分には秋山が2枚目のカードで退場。こちらも正直1枚貰ってる状態でチャレンジするのは軽率だったように思うが、リスクを背負った状態でこの局面を迎えてしまったのが痛かった。

終盤にCBが退場とあって大阪側も若干バタつきがあり、終盤にエネルギーを使いきれず。"下澤を投入され、秋山でセットプレー爆撃"という恐れてたプランも避けられた。

山雅側も勝ち点3を欲していた試合だったが展開的には大阪側が久々の得点を挙げて勝ち切らなければいけない試合だったように思う。

■"答え"になりうる新星FW加入

浅川の負傷、荒れたコンディション、厳しめの退場判定……終わってみればそんなシチュエーションの中で選手が高パフォーマンスを見せ、よく勝ち点3を渡さずに最低限の結果を得た試合とも取れる

が、1トップのやりくりの難しさやこうした条件下での試合は、この試合の前……もっと言うとシーズン前から想定されており、「そうしたシチュエーションでどう勝ち点3を取るか?」というJ3昇格を争う上では無視できない問いに対する答えとしては少し不安の残る試合となった。

だが、そんな残された問いの答えにもなるような補強が今週発表される。

長崎からの期限付き移籍での加入となるジョップ・セリンサリウ。
もう情報が出回っているので多くを語る必要もないかと思うが、名古屋産業大やデンソー東海選抜での活躍が認められて大学を中退して長崎に加入したことが昨年話題に。

195cmの圧倒的な高さと規格外のフィジカルで、ハマった時の反則級の爆発力を持っているストライカー。ファンマ、エジガルを抱えながらその3番手として置こうと思った時にかなり適した人材と言える。育成年代では注目度はそれほど高くなかったが、大学で東海選抜、プロ入り後も1年目で3ゴールと「これからの伸び次第では大きく飛躍する可能性」を秘めた、我々が育てた案件として育てがいのある選手なのは間違いない。

メンタル面の波は課題に挙げられており、今年もまだ出番はなかった選手なので未知数な部分も多いが、先ほど挙げたような"難しいシチュエーション"では1人いるだけで解決してしまうような"個"は持っている。サポの心も掴みやすいはず。

ただあえて課題点を挙げるとするならば、今年のチームのCF像(浅川や安藤)とは真逆と言っていいほどかけ離れた選手でもある

キャンプから前線4枚の流動性や特定の個に頼らないコンビネーションは求められてきているが、そこを同じように求めるのは特徴的に少し酷かもしれない。また浅川が得意としているボランチを消しながらの最前線からの守備もプロ経験を考えてもまだこれからの部分だろう。

こうまとめると、霜田監督がブレイクさせた小松蓮や元山口のオナイウ阿道ともまた違ったタイプ、立ち位置の選手と言ってもいい

どのような起用法でチームが考えているかはまだ不明だが、ジョップに寄せたサッカーに振りすぎるとそれはそれで彼次第(抜けるとまた作り直し)になりかねないし、浅川と同じような仕組みを持たせても難しい……そこは監督、そしてクラブとして高度な舵取りが求められる。

■優勝候補を叩けるか

そして、そんな楽しみを抱きながら迎える相手が好調の岐阜。

上野監督の2年目となった今年は窪田やンドカ、宇賀神など個の力を持った選手を複数抜かれたが、CBに甲斐(いわて)や野澤(甲府)、SBには文(鳥取)ボランチに青木(FC東京)、西谷(東京V)、前線には荒木(京都)、河波(鳥栖)、新垣(山形)、 粟飯原(熊本)などJ3の個人昇格候補や上カテで出番を得られなかった選手を複数補強。

2年目の成熟に加えて全体のバランスが整ったことでチームの安定感が高まり、既存選手の藤岡が6点、田口が3点と昨年以上の活躍を見せれば、攻撃的な右SBの石田もここまで5アシストと好調。流れの中からの得点パターンは1つ確立されている。庄司×青木のコンビも隙が少なく、J3特有のアップダウンの激しい展開に持ち込ませなければ経験豊富なベテランコンビなのはむしろ強みになるはず

今シーズンここまでは大宮や今治、大阪など優勝候補や序盤好調なチームと多く対戦しながら4勝1敗1分け。敗戦となった大宮戦も内容自体は岐阜が押していたゲームだった。勝ち点的にはまだ4差だが今後のことを考えるとここで詰めておきたいし、ましてや7離されるとかなり背中が遠くなってしまう。

次節も負傷の浅川が戻ってくる可能性は低く、ジョップも合流から間もないので、どのような戦い方を選択するか。いずれにしろ、今の岐阜相手に普通に組み合えば押し込まれる時間は長くなるはず。派手な展開にするというよりは粘り強く守り、しぶとく勝ち点3を取りに行くようなゲームになるのでは無いだろうか。

緑ダービー、TOP OF 北アルプスなどにもなるこの一戦を熱く、したたかに制して5月に向けて勢いがつくようなゲームにしたい。

END

<記録>

■ゴール

1:野々村(2)、樋口、村越、浅川、安藤
住田(1)

■アシスト

1:常田、安永
※山本(2)藤谷(1)

■累積警告

1:菊井、神田、浅川、野々村、馬渡、安永
※0:佐相(2)

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