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霜田監督×松本山雅 ポジション別補強展望<後編>

GK・SB・CBの前編はこちら

■中盤

・どんな選手を使っていた?

中盤の先発回数。()はアンカーでの起用数。

※赤文字は新加入(大宮1年目は途中就任なので無し)、青文字は途中加入、下線は左利き
※赤文字は新加入(大宮1年目は途中就任なので無し)、青文字は途中加入、下線は左利き

山口時代の18~20年まで全て4-3-3でシーズンイン
そこからアンカー脇を使われるなど失点が増えてくると2ボランチにし、それでもダメなら1トップ2シャドーの3バックにする傾向にある。つまりうまく内容と結果が噛み合わない年ほどシステムは4-3-3から変更しがちである。

起用していた選手の話に戻ると、1、2年目は霜田チルドレンの筆頭・三幸がシーズンフル稼働。そこに組ませる選手も攻守はいぶし銀な働きが光った佐藤健太郎や前線まで顔を出して攻撃に変化を与えられるハードワーカー大崎淳矢、さらには10番のラストパスの本数ではJ2屈指となる池上丈二など。2番手にも攻撃的センスや組み立ての能力がある選手が起用されている。
ゴールに直結するラストパスが多いのは結果にも現れており、1年目は三幸と池上が共に6A、2年目は三幸が9A、3年目も池上が7Aと、中央の選手のアシスト数ではリーグトップレベルの数字を叩き出している。

一応、これまでの山雅が重宝していたような重量級の選手や潰し屋タイプの選手、具体的にはワシントンや小野原ヘナンヘニキらも先発で使われることもあるが、基本的にはオプションやCBとの兼任。シーズン通して1~2枠あるかないかという程度で、守備が安定しない時に組み込まれるという感じ。

残留争いからスタートした大宮でもシステムは4-3-3からスタート。精神的支柱でもある三門をアンカーに置いて最初の2試合は戦ったが、1枚で保持時にうまく回らないこともあり、ボランチ2枚に変更。そのまま2ボランチ×1トップ下でシーズンを戦い抜いた。

2年目は黒川や菊地が移籍した代わりに三幸大橋矢島らを補強して霜田色が強まったことで再び4-3-3に回帰。潰しを得意とする大型ボランチ・大橋をアンカーに置き、開幕戦から数試合は高い技術やセンスを持った武田・矢島・三幸をIHに2枚並べる。しかし、未勝利が続くにつれて再びボランチが2枚になったり、より守備に長けた選手の出場時間が増えるようになったりと試行錯誤。最後は矢島+大橋or三門のオーソドックスな4-4-2に落ち着いたが……最適解は最後まで見つからないまま解任となってしまった。

・どんな能力が求められる?

全てのポジションに言えることだが、中盤は特に「止める・蹴る」の基礎技術、狭いエリアでも前を向けるターン技術、攻守に関わる運動量は高いものが求められる。

そして、霜田サッカーで多用される「アタッキングパス(パスの受け手、レシーバーが必ず逆サイドのワイドレーンの相手の最終ラインと同じ高さで受けるようなパス)」をあらゆるエリア・局面で出せる選手はこのサッカーでは軸になる。その代表格が唯一山口・大宮共にプレーをしている三幸など。

両サイドどちらにもボールを展開していくのに右利き左利き、バランス良く中盤に入れられるのが理想かもしれない。

さらに補強を見ても高や佐々木、矢島、武田と世代屈指の技術を持つ若手や吉濱や池上、高井のような試合を決定づけるようなパスセンスを持つ選手を加えており、その後も重宝されるなど好まれる選手ははっきりしている。

・山雅に当てはめると?

これまでの山雅ではあまり優先度は高くなかった要素となるが、工藤浩平、宮阪政樹、岡本知剛らは重宝されそうなタイプ。また理想中の理想を言うならばこの3枚を中盤で組ませるようなイメージとなってくる。

去年のメンバーで求められる要素を持っているのは菊井や浜崎
ただ"いわき戦や富山戦のような激しいプレスをかけてくる相手"、逆に"山雅のようにあえて引いてブロックを固める相手"であっても、それを上回る技術力や組み立てのパスでそれを交わして前進していかなければ全体が機能不全になってしまうので、どんな相手に対しても変わらず繋いでいける普遍性・絶対性はさらに求められるだろう。

そして、甲府に移籍が発表された佐藤もボール扱い・運動量だけではなく、相手に左右されない柔軟性を持っていたので痛い。米原や住田は主体性やボールへの関わりはもう少し欲しいが来シーズンここに入っていかなければいけない。

また、山雅の現スカッドでは大宮時代のようにアンカー(ボランチの1角)に大橋のような潰し屋を置く可能性も高い。霜田監督のやり方に当てはめるなら本来は非常に狭い枠にはなるが、パウリーニョや安東、稲福、そして喜山もこの枠を争うことになるかも。機動力やボールの扱いまで考えると安東が近い存在になりそう。

■WG

<右WG>

※赤文字は新加入(大宮1年目は途中就任なので無し)、青文字は途中加入、下線は左利き

<左WG>

※赤文字は新加入(大宮1年目は途中就任なので無し)、青文字は途中加入、下線は左利き

・どんな選手を使っていた?

躍進した山口1年目は右に小野瀬、左に高木が両WGに定着
小野瀬は25試合で10G3A(7月いっぱいでガンバ大阪に移籍)、高木も38試合で8G4Aを記録。霜田監督の求める『3トップで30点』の水準に近い結果を残し、得点数はリーグ4位タイ・63得点を積み上げる。

しかし、2年目は左には高井や山下右には新加入のTPJが主に起用されるも守備がうまくハマらないこともあり、攻撃でも結果がついてこず(リーグ14位・54得点)。3-4-2-1にシステムを変更してゲームの安定を図った。個々の成績は山下が11G1A、高井が8G0A、TPJは5G2Aなど。
山下・高井は得点数こそ多いがアシストも少なく、シャドーやCF時の得点も多いので求められる基準的には物足りなかったかもしれない。TPJも序盤12試合では10先発と重用されていたがその後はほとんどがジョーカー起用となっている。

そして、3年目は高井が左で11G4Aとキャリアハイを記録して奮闘。右では新加入の森からルーキー浮田がポジションを奪い、7G1Aとこちらもキャリアハイの活躍を見せたが、結果的には求められる数字には至らず。左右どちらも様々な選手・組み合わせが試されたが、得点数では過去3年で最低となってしまった(リーグ17位・43得点)

大宮では左右WG・トップ下で起用された黒川が25試合全てで先発(うち221試合はWG起用)、9G2Aを記録したがそれ以外は流動的。WGでは誰も定着できず、数字を残した選手も少なかった。

黒川が抜けた2年目には柴山が左WGとして覚醒、18試合で6A(0G)とドリブルからのチャンスメイカーとしてブレイク。ただ右では新加入の矢島が2G1A、武田が1Aと数字がついてこないなど左右ともに得点数では伸び悩み、18試合で19得点(30失点)とハイリスクを上回る得点力を発揮できないままシーズン進んでしまった。

・どんな能力が求められる?

3トップのWGなので当然ながら『"個"での打開力』が求められるが、周りのIHやSBも高い位置を取ることになるのでただ突破するだけではなく、『周りとの連携や崩しのアイディア』は求められる。

そして、霜田サッカーで特徴的なのは上にも書いた通り『3トップで30点』という1つの目安。("レギュラーの3人で"or"そこでプレーする選手全員で"は定かではないが前者で仮定すると)『単純計算で左右WGのポジションも2桁』は目標となる。そうなるとアシスト数もそれなりに多く積めなければならない。
例えば最高成績の18年は40得点<オナイウ22点+小野瀬10点+高木8点>で8位だったが、ここからさらに上の順位に行くには両翼の数字を伸ばすイメージになってくるだろう(失点を減らすという選択肢もあるがスタイル的には得点の方が優先度は高い)。

さらにハイプレスからの精度の高いショートカウンターを実現するための『走力・プレス強度』も必須。攻撃的という言葉に引っ張られがちだが、高い位置からのプレスがかからずに自陣まで簡単に運ばれてしまうと霜田監督の理想とする前のめりなスタイルとはかけ離れたシチュエーションとなってしまうので、攻撃も守備も本来の姿とはかけ離れたものになってしまう。つまりは攻撃のためにも守備(ネガトラ)時での能力も求められることになるだろう。

・山雅に当てはめると?

山雅は3バックでウィング自体がないというシーズンがほとんどだったが、積極的な仕掛けと周りを使える技術、そして数字を残せる世代別級のエネルギッシュなサイドアタッカーという点では前田直輝が理想には近い。山雅ではトップ下的な扱いだったが琉球時代の河合秀人や北井佑季あたりも理想には近いかもしれないが……翌年個人昇格してしまうような爆発的な得点力・パンチの強さはもう少し必要。

去年のメンバーだと村越やTPJ、表原はWG系のアタッカーとなるが、得点力やプレス強度の部分、崩しのアイディアの部分がネックになってきそう……。組織的に崩していくわけではないので少しタイプは違うが、ルカオも突破力を持っていて2桁を計算できるようなアタッカーなので(山雅で考えるならば)ここに並びそうな存在。

ただし、レンタル組まで入れると、1番の適任だと感じるのは山口一真。水戸時代には左SHやトップ下気味のポジションで15G7Aを記録したようにゴール・アシストの能力が高く、崩しのアイディアも豊富に持っているだけではなく、守備面でもハイプレスは得意としているので、21年のシャドー起用よりもスタイル的には生きやすい。鈴木国友も周りを使う器用さもあって背負うよりも前を向いての突破をさせる方が得意なので、組ませるSB次第でもあるが、浮田のようにWGでブレイクする可能性もある。

※シャドー(3バック時)

※赤文字は新加入(大宮1年目は途中就任なので無し)、青文字は途中加入、下線は左利き

番外編でシャドー。
霜田サッカーでの3バック時にはWBが高い位置を取って325のような陣形を取る傾向が強く、サイドに流れるプレーはあまり求められていない。基本的にはハーフスペースでプレーすることが多くなるだろう。

起用選手を見ても、スピード・パワーなどのフィジカル面や広いスペースでの大味な突破で勝負するようなタイプよりも『止める・蹴るの技術が高く、周りを使うのもうまいタイプ』が並んでいる印象。

例えば、アタッカーでも田中パウロ淳一や高木大輔のような選手は3バック時はWBに回されている。山雅で当てはめるならば表原や村越のような選手はもちろん、横山も3421時にはWBに回させて、325のWG的なタスクで使われる可能性が高い。

これまで山雅のWBは、守備時に最終ラインまで戻り、カウンターでは前線の選手にタメを作って貰い、後ろからそれを追い越していくSB型の選手が多く起用されていた。だが、霜田サッカーでは325のWGのタスクを求められるので、3バックを選ぶならばWBの人選がどうなるかは興味深い。

■CF

※赤文字は新加入(大宮1年目は途中就任なので無し)、青文字は途中加入、下線は左利き

・どんな選手を使っていた?

1年目は浦和からレンタルしてきたオナイウが開幕から3戦で4G、その後もレギュラーとしてフル稼働して大爆発。最終的には22G4Aで大前(24G)に次ぐ得点ランク2位に。

そのオナイウは翌年大分に個人昇格(レンタル)となったため、2年目にはその穴埋めとして工藤を広島からレンタル。山下や岸田らでこのポジションを争ったが適役は現れず……。夏には川崎から宮代がレンタルで加入してこのポジションで重用されていたが、結果は2G2A。数字面は振るわなかった。

そして、3年目は工藤や宮代がレンタルバック、山下も千葉に移籍。その代わりにポルティモネンセからイウリを、山雅から小松をレンタルで獲得し、この2人が主にポジションを争う。序盤はイウリが1トップで起用されていたがカードの多さや守備時の波の大きさから、小松との併用やスーパーサブ起用など様々な起用法が試されるように。一方で小松も契約で出場不可の山雅戦を除いて開幕戦から起用され続けるも初ゴールが出たのは9月の第19節と得点面で苦労。最終的にイウリが9G4A、小松が3G1Aという結果になったが、どちらも定着はしないままチームも最下位に終わった。

大宮では、就任前はハスキッチや中野を軸にした2トップがメインだったところをテコ入れし、イバをCFにした3トップに変更。しばらくCFは固定され、6戦3Gと結果を残していたが夏の移籍期間で徳島から河田を補強。そこからは河田がCFの軸となって半年で7G(0A)、残留に大きく貢献。

2年目も開幕から河田がCFに。10戦で5得点と個人としては結果を残すもチームは開幕から10節まで勝利無し。途中で2トップに変更し、河田のスーパーサブ起用(富山×ボランチが本職の小島の2トップ)などを試したが、負の流れを断ち切るに至らなかった。

・どんな能力が求められる?

何よりもボックス内における『フィニッシャーとしての能力』

具体的には大宮時代、河田がインタビューで話している

『霜田監督からも、FWに求めているのはゴール前にいてしっかり点を取ることと言われています。低い位置ではシンプルにはたいて、クロスが上がってくるのを信じて入り込めば点は取れるからと』

https://www.ardija.co.jp/digitalvamos/?id=28217

という点はチームが変わっても重視されるはず。オナイウも河田も典型的なボックスストライカーとして強さを発揮しており、結果も残せているので霜田監督からの評価が高かったのも頷ける。

また、必ずしも高さが必要なわけではないが、ゴール前を固められてもそれをこじ開けられるような『駆け引きの上手さやヘディングの強さ』は自ずと必要となってくるだろう。

また、プレスの先頭としての『守備の方向づけや周りとの連動性』は求められる。これまでの山雅のように2度追い3度追いをする必要はないが、まさしく"賢守"で攻撃の余力は残しつつ、サボらずに守備はしなくてはならない。

・山雅に当てはめると?

低い位置ではシンプルにボールを捌きつつ、ボックス内では絶対的な強さを発揮して15~20点取れるストライカーとして挙げられるのは高崎だろう。ゴールのイメージが強いが、J2の3年間で17アシストと周りの得点を手助けできていたのも理想に近かったように思う。

去年のメンバーだと榎本のようなボックス内での高さ・強さと駆け引きの上手さは高く評価されそう。ただ、小松のようなサッカーIQやスイッチ役となれる守備も必要となってくるだろうので両WGや2列目で得点数を補える場合は小松が重宝される可能性も。
逆に横山やルカオ、TPJのように自分でボールを持って仕掛けていったり、サイドに流れたりするタイプはCFとしてはあまり好まれない。また、高校生ながら去年爪痕を残した田中(想)も去年見せたプレーとは違ったが求められるだろう。

しつこいようだが、とにもかくにもCFは山雅の歴史においても過去最高にゴール数が求められる年となる。2桁と言わず、得点王を狙える20得点前後のゴール数を奪える選手は現れるのか。ストライカーたちの奮起に期待したい。


最後になりましたが、今年1本目ということで……
あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!

記事の途中にも書きましたが、過去5シーズン全て4-3-3でスタートしていることを考えると、山雅でも最初はやっぱりその形でチャレンジしてみるのかなあと思ったり……。

霜田監督の理想を叶えるには現段階で色々と足りない部分もあるので、残り数日の補強にも注目ですね……!

END

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