見出し画像

霜田監督×松本山雅 ポジション別補強展望<前編>

ついに霜田山雅爆誕!

12月5日 霜田監督の就任が発表。

下條SDの報道対応にもあったように『やろうとしているサッカーは明確』な点は特徴的で、これまで率いてきた山口・大宮でも結果が出ていようがいまいが、自身の哲学・サッカー観が色濃くチームに反映されていた。

そのスタイルを評価して、霜田監督へのオファーを出したということは恐らく来年の山雅はその方向性になるのだろう。ということはこれまでのチームの傾向からおおよその補強の展望・方向性も明らかなはず。

実際に以前指揮していたチームでも目指していた

・「より主体性を持ったサッカー」「攻撃的なサッカー」
・「ハイライン、ハイプレス」
・「ゴールに向かっていく中での効率の良いボール保持」

なども早くもキーワードとして出てきている。

そこで今回は

  1. ・どんな選手を使っていた?

  2. ・どんな能力が求められる?

  3. ・山雅に当てはめると?

という3つの要点に絞り、今オフの補強・スカッド形成を各ポジションごとに考察していきたい。

■GK

※赤文字は新加入(大宮1年目は途中就任なので無し)、青文字は途中加入、下線は左利き

・どんな選手を使っていた?

山口では初年度に辛抱強く起用してきた藤嶋が川崎、山形へとステップアップ。その後は2年間は足元やキックの吉満、セーブ力の山田で正GKの座を争っていたが、起用数・傾向的には吉満がやや優勢

大宮時代も、それまでポジション争いで優位に立っていた笠原、クリャイッチではなく、就任からキックやビルドアップを得意とする上田を起用。そこからは残留争いという事情もあってか、横浜FCから南を補強。

今年南の負傷があった際にも緊急補強で加えたのは足元やビルドアップを得意とする志村だった。

・どんな能力が求められる?

山口では藤嶋、大宮でも就任直後は上田をチョイスし、経験や高さ、セーブ力よりもまずは『しっかりとボールを繋げて、キックも安定している』選手を好む傾向にある。その際にはもちろんビルドアップ能力はあった方がいいが、南のように『我慢して繋ごうとする、トライできること』自体を評価する印象。

ただし、失点が増えてくると別のGKにチャンスを与えるということも多いので、過去5シーズンを見ても1人の守護神が君臨するというよりは『コロコロと変わりやすい』傾向にある。

・山雅に当てはめると?

山雅は伝統的にGKのリスクは極力抑える傾向にあったので、そのやり方で長くやってきた選手ほど不利な立場になる危険性は高い。『ピンチだからと言ってセーフティなプレー選択をしない姿勢』が大切に。また、これからチームを作り、1から仕込むことを考えると若手にチャンスが回ってきやすいだろう。

これまでの山雅で考えても、経験やセーブ力で使いづらかった藤嶋や永井も来年なら真っ先に正GKとして起用されるはず。

少なくとも今年のようにベテラン2人が正GK・サブGKで固定されるという可能性は少ないのではないか……。現山雅だと4番手の薄井にもチャンスはある。

■CB

※赤文字は新加入(大宮1年目は途中就任なので無し)、青文字は途中加入、下線は左利き

・どんな選手を使っていた?

最高傑作は菊池流帆。
初年度のスタートはベテランの渡辺に加えて、俊足と対人性能を持った坪井らの起用が多かった。だが、ハイライン・ハイプレスを敷いていることもあって徐々に即戦力の大卒選手や外国人起用が多くなる。前が剥がされた時には数的不利で対応することも少なくなく、また相手が裏をめがけてロングボールを蹴ってくることも多いので、『裏対応や空中戦を繰り返すタフさ』が求められるのかもしれない。

大卒の例を挙げると、東京国際大で関東2部優勝&ベスト11入りを果たした楠本(182cm)、先ほども挙げた全日本大学選抜の菊池(188cm)、関東1部のベストイレブンに三笘や旗手と共に選ばれた眞鍋(182cm)ら大学界でもトップ級のCBたちが1年目から出番を掴んでいる。

そこに左利きでボランチもできるほど足元も長けたヘナン(183cm)を中心に、ワシントン(182cm)、ドストン(187cm)、ヘニキ(182cm)らを補強する傾向にあった。

坪井や大宮から移籍した菊地のようなベテラン選手もチーム内には置いているが、実績や期待値ほど出場数は多くはないというのが現実となっている。

大宮では大卒2年目だった西村(187cm)が定着。相方には河本(182cm)、新里(184cm)らが起用されていたが、いずれも定着はせず、1年目はSBに起用していた河面(184cm)をCBにスライドさせたりしていた。

・どんな能力が求められる?

まずはハイライン・ハイプレスの負荷に耐えられる『耐久性』
具体的にはCBとしての安定感よりも、繰り返し『跳ね返す能力』『裏のスペースをケアするスピード』は求められる。意外と注目されていないが、サイズ感も重視している印象。前貴之(172cm)のような例外もいたが、基本的には『長身CBが中心』となっているのは傾向として強い。圧倒的な空中戦、爆発的なスピードは2CBのどちらかには欲しい。

その上で保持面も重要。ビルドアップ能力が高くなければ使わないというわけでもないが、そこを得意としていない選手にも辛抱強く繋がせる傾向にあるので『繋ぐ部分での伸びしろ、ミスしても崩れない前向きさ』の方が重要となってくる可能性が高い。

・山雅に当てはめると?

これまでの山雅の常識をひっくり返すようなスタイルとなるのであてはめるのも難しさがあるが、エドゥアルドやジエゴ、星キョーワァンのような『身体能力で相手を圧倒できて、かつ保持もそれほど苦にしないタイプ』。あとは犬飼智也のように(当時)若くて、これからのJ1クラブで中心となっていけるようなポテンシャルを持っている選手が合うように思う。

現山雅でドンピシャにハマる選手というのは難しいが、サイズがあってボール扱いにも長けたレフティーの常田はこのサッカーだと価値はさらに高まるはず。裏への対応でやや不安はあるが今季保持の面で成長が見られた野々村にも期待したいところ。一方で晒された時に弱点に付け込まれやすいサイズの無い選手やアジリティが課題の選手は難しさが出てくるかも。

そうはいってもタフに戦えて、高さ・身体能力に優れ、広大な自陣のスペースをカバーでき、さらに足元もうまい選手をJリーグから補強するのは山雅に限らずそもそも容易ではない。山口のように外国籍の選手を入れるか、2CBもしくは3CB同士で補いながらやっていくのが現実的か。

■右SB

・どんな選手を使っていた?

絶対的な地位を確立していたのは前貴之。
2年目で右HVや右CBにポジションを移したが、ポジションが変わっても基本的な役割は変わらず右サイドの保持/非保持を支えていた。

前移籍後にもこのポジションで起用されていたのは現山形でキックやビルドアップの質の高さを見せている川井や本職はボランチの田中陸。

大宮時代もキック精度の高さや保持でのプレーの幅が広い馬渡は重宝され、多くの試合で出場。浦和に個人昇格するだけの活躍を見せた。

2年目は茂木を補強。SBやHVの位置から積極的な攻撃参加を見せ、持ち前のサッカーIQの高さで攻守で駆け引きを制する前貴之に近いタイプを起用している。

・どんな能力が求められる?

全ての選手に言えるのはCBやボランチなどをこなす『ポリバレント性』。クロスはもちろん、『組み立て時のキックやパスの精度』。そして、立ち位置(ポジショニング)で相手を困らせることができるような『個人戦術や動きの質の高さ』。

保持時には中央に入って、ボランチのケア、SHをサイドに張らせるようなポジション取りが必須になってくる。周りとのコンビネーションプレーが重視される一方で、『独力での突破力やフィジカル面はそれほど優先順位は高くない』ような印象がある。

・山雅に当てはめると?

言うまでもなく、前貴之。『足元の技術』と『試合の全体の流れとピッチ上の状況を読み取れるサッカーIQ』が必要に。
岩上も近い特徴を持っていたが、彼の場合は自身で動き回ってボールを散らすのを得意としているので、よりシステマチックに、時には自分の立ち位置によって周りがボールを回しやすくなるような『配置の優位性』をより生かすタイプがこのポジションの適任。

現山雅だとSBの位置から組み立てができ、キックの精度も高い浜崎が最も近い。だが、高い位置まで上がっていく分、素早い帰陣を強いられるシーンも多々出てくる。

これまでの守備での貢献度や攻撃で飛び出していける運動量とは全く違う要素が求められることになってくるので、現メンバーに限らず、ほとんどの選手はこなそうと思うと苦戦することになるのではないか。仕込んだとて1年や2年で簡単に身につくようなものではないので補強が必要かも。。。

■左SB

・どんな選手を使っていた?

山口時代、右で前貴之が定着していた一方で左サイドは流動的。
1年目は新加入の瀬川がポジションを掴んでいたが、途中でボランチやSHの鳥養がコンバート、しかし最終的には瀬川が取り返した形。

2年目は瀬川が最初は起用されていたが、川井が頭角を現してポジションを奪取。しかし、夏に瀬川が移籍してからは本職ではない石田や楠本が使われたり、3バックにしてWBに高木大輔が入るなどなかなか安定しなかった。

そして、3年目はその反省もあってか、本職でレフティーの安在を補強。5月には当時大学3年生だった橋本健人が内定。TPJもこのポジション争いに加わるなどこのポジションだけを見ると、ここ3年で一番充実の年となった。

大宮時代は最初の5試合は翁長が使われていたが、その後は河面が中心に。肉離れによる離脱やCBでの起用もあったので、左SBの1stチョイスという意味では河面だったと思われる。

しかし、2年目は河面、翁長、松本がともに移籍。明らかに手薄なポジションとなっていたところに、SH・ボランチの小野が「今までやったことがなかった」というこのポジションにコンバート。新たな才能を開花させた。

・どんな能力が求められる?

基本的には右のSBと変わらず、『組み立て時のキックやパスの精度』『個人戦術や動きの質の高さ』が求められるが、『ポリバレント性』という点ではより攻撃的な要素を求められることが多い印象。

鳥養やTPJ、そして大宮時代の功績でもある小野のコンバートなど『右よりもアタッカー寄りの選手』を置く傾向が強い。これは恐らく右サイドに低い位置から組み立てができる選手が多かった点や右WGにウィングストライカー(浮田・富山など)を置くケースがあった点など、周りとの兼ね合いもあったとは思うが、それは山雅でも同様になりそう……。

そして、絶対というほどではないが順足となる『左利きは優先度が高い』。右とは違って逆足SBは比率的に多いので、この点は違いになってくるかもしれない。

・山雅に当てはめると?

山雅は代々、守備に重きを置き、組み立て能力や利き足はそこまで重視していなかったことからここのポジションで求められることはこれまでとは全く異なってくる。強いて言うならばもう少し攻撃に振り切った岩沼俊介という感じ……?山雅にうまくフィットしなかったジエゴや志知、表原ともまた少し違ったタイプ。

ただし、現山雅で考えると山本龍平がかなり適正レベルの高い選手。ポリバレント性があり、戦術理解度・キック精度も高く、さらにレフティーというアドバンテージもある。名波監督に見い出され、今年取り組んできた『SHやシャドーでの経験』も来年SBで生かせるだろう。そして左利きという観点ではゲームメイカーとして住田、ドリブラーとして村越らもこのポジションで起用される可能性も。

一方で、外山や下川のようなアップダウンを繰り返し、フィジカル能力でサイドを圧倒する従来の山雅らしい左WBはやや不利に。これまでにない評価軸でのポジション争いで序列・去就はどうなるか……。


続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?