同僚だったおっさんのこと 5
何って、その、言いにくいけどキャンさんの話だ。
キャンさんと聞いてピンとこない人はどうかそのまま読んでほしい。たぶん彼の人となりを知ってしまうと先入観が入ってしまうから。
さて。
単刀直入に言うとキャンさん、営業としてかなりヤバい。一個前の部署なら、扱ってる商品がそもそも市場に向いてないという致命的だが的外れではない弁護ができたのだけど、その部署を僕が自爆テロ的にぶっ潰したお蔭で、会社のメイン商材を扱う部署に異動している。
仕事は一言で言うと、忙しくてクソなのだけど中身自体は比較的ラク。どのくらい楽かっていうと、BtoBで既得権益もそんなになく需要が供給を上回っている業界っていうのが一番それっぽい。
競争はあるので、左うちわ、仕事しなくても大丈夫ってほどではないのだけど、ふつうに営業すればまあまあ仕事にはなる。
で、本題。
キャンさん、営業成績がヤバい。具体的にいうとアレなんだけど先月の売上でいえば、頑張ってニンテンドースイッチ並んで買って転売した方がよかったんちゃうかって状態。やり方変えた方がええんちゃう、と直接的に何度も言われてるけど全く変えてないみたい。
この記事でいうところの「ボトルネック」に当てはまらない規格外として扱うべきなのかな。仕事に向いてない、のレベルってあるよなーと思っている。
このへんの記事を受けて書いてます。
誰に相談しても「それは、もう、ダメなんじゃ…」って結論になるのであまり悩んではないのだけど、僕が興味あるのは、「なぜこういう人ができあがったのか」というもの。
具体的に症状をいうと、毎日レンタカーで車借りて、アポ取らずに飛び込みを繰り返して門前払いを繰り返している。奇跡的に話聞いてくれたとこに対しても、とにかくどっさりのパンフレットをとにかく押し付けて去るという頭抱えるレベル。もちろん成果はかなり厳しい。この半年、僕が年末年始に渡した案件が売上構成比の9割という地獄。
ちなみに、重箱の隅おじさんの概念にもちょっと被っている。言った言わないの問題に異常にこだわる。事実を踏まえてじゃあどうするか、の前に言った言わないを解決しないと何も動かない。
なぜこういう人ができあがってしまうのか。
前職、ルート営業をクビになって流れてきた人なんですけど、給料はそれなりにもらっているみたいです。下手すると僕以上かも。採用当時は困窮して定期代にも事欠くレベルだったけど、最近は高い昼メシ食ってるし。
中途採用のそのへんの闇ってありますね。
生きてけることを保証されると人は、人であることをサボるのか。
思うに、これは「成功体験」じゃないかなあと思う。今までそれでやってきて、やってこれたから、それを変える気にならないというアレ。
というか、そうじゃなかった場合、ちょっとおそろしくて考えるのこわい。
だってさー、うまくいく保証も根拠もないまま、一個のこと続けるって相当だよ、と思う。
僕がこうやってつらつら書き続けているのだって、たしかにこの先保証はないけど、だいぶいいものが書けたって実感とか、書いてる内容は間違ってねえだろって根拠とか、一応は持ってるもの。個人的な仕事であってもだよ。
ましてや他人と関わるもの。やり方を変えないで続けるってのは、そのやり方がマジョリティに刺さるって確信があるか、需要を作り出す体力がある場合だけじゃねえのって思う。
その点、成功体験の罪は深い。
システムに組み込まれたりうまく利用させてもらったお蔭で仕事になっている僕みたいのが、「おれすごいおれすごいおれどこでもやってける」って勘違いさせられるってすごくこわい。
たしかに、己の理解の及ばない事柄を「重箱の隅」と切って捨てちゃう問題の方が楽しいといえば楽しそう。
目的が共有されてないってことですね。
それはとても近視的なのが原因というか、物事のスパンの取り方の気がします。本質も対症も大事で、あとはトリアージの問題。そしてその中に、本当に些末で取り上げるのにも値しない小骨みたいな知見がポツポツ見受けられる、みたいな。
トリアージ。
自分で言っておいてアレだけど、トリアージの問題じゃないかなこれ。
大事なことを言っても「重箱の隅だろ」って言われちゃう場合は、力で黙らせるか、相手の望むことを片付けてあげた上で指摘する感じ。
あとは、難しい「本当にこれ大事か」を担保していく問題。でもやっぱり、比較とスパンと、目的の問題なのかなあとは思います。結局、どこまで行ってもどんなことでも「今のところ、誤字の指摘よりは重要らしい」しか言えない気はする。
ちなみにキャンさん、ド正面から他人と向き合う素質自体はある。
こんなエピソードもある。
他の記事にもチラホラ出ている「不動産の勧誘」に誠実にど正面から立ち向かうエピソード。
一度など電話口で「あんた一体なんなんだよ!来られるものなら来てみろよ!」などと叫び出して別室に連れてかれたことがある。
なのに、決して相手の了承なしには受話器を置かないという不思議な律儀感。
「いいですね?もう電話切りますからね?」
「だから興味もないし、投資できる余裕もあんまりないんですよ、切りますよ?切らせてください」
「なんでダメなんだ!なんであんたの話を聞かなきゃいけないんだよ!(この辺で激昂し始める)」
いい言葉でいうと「誠実」というか、ほんとよく分からぬ感覚があるんだよなこの人。
この後のボーナストラックは「キャンさん、不動産営業と戦う」の話。
課金するかメンバーシップに加入すると読めます。キャンさんのシリーズは全9回予定です。
続く
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