逆噴射小説大賞2020 講評御礼ふりかえり

こんにちは。
お陰様で先日、発表になった逆噴射小説大賞2020、大賞は逃してしまいましたが最終選考に残って講評などをいただきました。ありがたいのう、ありがたいのう。

講評で取り上げていただいたのはこちら。

講評の中で言及のあったもう一編「ローグ・ローグ・ローグ」はこちら。

大賞に届かなかったことは残念ですが、肩肘張らず、地力での他流試合、腕試しのつもりだったので大変嬉しい結果でした。
褒められ慣れてないのですが、各所からこれはベタ褒めやぞ、と言われてなんかそんな気分になってきました。えへへ、えっへへへ。褒められると増長します。天狗やからな。特にな。

この先の自分の課題は、最初の一行が大事、というのを割と軽視している気がするので、ちょっと気にしてみようと思っています。大筋、筋の悪くない動きができているなら、細かい所作を整えていけばいつか大悟するじゃろというやつですね。

今回の参加で一番良かったことはたくさん読んでもらえたことと、二番目に「書くこと」自体を楽しむコミュニティに接続できたことです。書いてチヤホヤされることを目的にするのではなく、とにかく面白いものを書く、ということを主目的にしているコミュニティというのは、ほんと、素晴らしくいいですね。

折角なので普段あまり語らぬ自作についてのあれやこれやを書いていこうかと思います。

とりあえず、今回「蘭之助、もう吠えないのか」を読んで、応援して下すった方向けにボーナストラック一編書きました。

21話でこれは話の展開遅すぎだろって声が早速上がったのですが話数のことは忘れてください。大体、刺客を三人くらいやっつけて、宿場の娘との恋を台無しにされた回があって、俺得温泉回も済ませた後の感じです。

ちなみに発表直後、Twitterとかで書き散らかした辺縁情報はこんな感じ。幻覚味が強い。

今回のボーナストラックで、妖怪の力を借りないでやる話を使ってしまったので、展開はこの初期幻覚とは違うエンドになりそうですね。

以下、今回のレシピです。

こちらの作に関しては、あんまり改稿などを入れていません。電車の中、新橋→大宮間で大筋ができあがり、戻りの電車内で字数超過した分を削る作業を行ってます。時間をかけると僕の場合はあんまり良くない気がします。

最初「おいは犬ではなか」という台詞だけがぽこっとあり、ここに合わせて、いやいや犬みたいなもんだろ、とツッコミを入れる役の妖怪が生まれました。

犬みたい、という言葉の根拠として、そらみろ犬と同じじゃないか、という説得力要素を足そうかなという発想があり、じゃあ主人公は犬の鳴き真似を強いられるようにしようかな、あ、そこにメリットがあれば「やる人」はやるよね、と繋がっていきました。やらないと殺す、って言われてやらされるより、やらなくてもいいけどフーンやっちゃうんだ?の方が堪えるかなあとか考えました。エロマンガメソッドですね。

そこからは、どんな風に犬の鳴き真似に染まって行くのかというディテールに、ちゃんとした説得力を持たせるための実例を列記するパートに移ってます。

大抵、書いてる時はこういうパートが一番楽しいです。初期稿、チンチンするとビームが出るとか、腹見せして舌を出して服従のポーズをするとバリアが出るとか、そういうオプションサービスも考えたのですが、字数の関係と、ちょっとギャグ要素が強くなりそうなのでやめました。組み込むとすると、本当にシリアスな場面で妖怪が提案するけど怒って実行しないとか、「あの時言ったのは本当だろうか」って選択肢が頭の中に浮かんでしまって蘭之助が煩悶するとか、その辺のシーンかなと思います。

イヤイヤ言いながら結局毎回つこうとったやんけ、というのは、書いてみてから思ったことでした。やっぱり最初にだーっと書く時はツッコませようとか邪念を起こさない方が面白くなりますね。こういう能力があったら自分ならどうやって使うか、どういう状況なら使わざるを得ないか、その辺のとこで書いてます。(1)武器がない時(2)敵わない相手の時(3)色々紙面的にもヤバい時、くらいの列挙に止めました。割とロジカルです。客観的にはギリギリ、だって仕方ないじゃん、と言わせられるラインにしてます。本人は決して言わないだろうけど。

振り返ると、思考の道筋と、実際に書かれた話の展開がそのまんまですね。
良いか悪いか、先を決めずに考えながら書いているとこうなるという好例だけど、実は、読む側としても順を追って「知りたいこと」が提示されてくので読みやすいような気もします。構成に凝るのもいつかやってみたいです。

ともあれここまで好きに書いてから、なんで戦わなきゃいけないんだ、という理由のとこを考えました。月並みですがここについてはやっぱり時代劇だしお家騒動だろ、と、妖怪が出てきてる以上、敵にも妖怪が絡んでるだろ、とかなり安直に決めてます。

そうして過去を書いてみると、犬小屋で両親の死を隠れてみてるしか出来なかった子に犬の真似させるとか、無邪気に書いた前半の心理負担がめちゃくちゃ重たくなりすぎてしまったのと、次回へのヒキがなんもなくなってしまったので、エイッと、ちょっとカウンターを取るような意味で、(4)使うつもりがないのに使っちゃう、を挟み込んでバランスを取ってちょうど800字。

ワンニングス・ケンネルという名前は何となくの思いつきでしたが気に入ってます。たぶん割と日本語に堪能で、「ヘイ、お侍サーン!武士の誇り、ドコイキマシタカー?」「名乗りアゲナイ、相手の名前も呼バナイ、ソレデモ薩摩隼人デスカー?」とか煽ってやられます。得意武器は首輪投げ縄。あらゆる攻撃が相手を拘束することを前提にした繋ぎ技、ちゃんと戦えば強いです。たぶん。

妖怪の出自については、書き上げてからぼんやり考えたりしてます。基本的には嫌なやつで、主人公の仲間ではないやつ。途中から妖怪が蘭之助に愛着をもったりする展開の作品は既に沢山あるので、ほぼ最後まで嫌なやつでいさせようかなという風には思います。餌だから、蘭之助の名前も頑なにに呼ばない。蘭之助を選んだのは、彼を狙う連中を殺すのが最終目的だから、というすごくドライな感じです。勿論、彼の両親が殺された経緯とかも知らないのでガンガン心の地雷踏めるやつ。そっちの方がなんとなく良いじゃろと思う。

講評などでも散見されましたが、思いつきだけで800字で投げっぱなすのと、ちゃんと続きを書ける構想を持つのとの違いは、わたしの書き方でいうとあんまり違いがありません。普段から、明日の自分が何とかするだろ、という生き方をしているのと、どう考えても袋小路には入らないようにしているのが関係しているのかも知れません。

物語には、広がるタイプの間口と、閉じていくタイプの間口があります。これは感覚的なものですが、結末を決めて、そこに向かって閉じて行くタイプの物語には技巧というものが強く作用するように思います。

逆に、出発点があり、この先どうなるのかなというのを作者自身にも思わせる物語というのは技巧というよりはパッション、情熱が関係する気もします。

その意味では800字の中に無理してオチをつけないの!というのは的確なアドバイスです。広がる物語は、最後の一文字まで開いて行く方向に顔を向けているべきかとわたくしもひっそり思います。

ちなみに、割とそんな感じのスタンスで書いている小説が、「ハニカムウォーカー、また夜を往く」です。
先の展開を決めては壊し、決めては壊しなのですが、読みやすいくせに一体どうなるのかわかんない小説になってると思います。

やあ、君。
こうしてわたしが挨拶をするのは二度目だね。

もっとも君は覚えていないかもしれない。その頃のわたしは別の名前を使っていたし、わたしが声をかけるのはいつも暗いところからだったからね。
でも気にすることはない。わたしの本当の名前がなんなのかということにあまり意味はないからだ。証拠に、そら、君たちの王のことを思い出してみるといい。
王に名前はない。そうだろ。
王は龍で、王としか呼ばれない。七年ごとに身体を乗換え、新しく生まれ、そして連続していない。
つくづく不思議な話だと思うよ。わたしがこの龍の国に身を寄せてからもう二年になるのかな。この国は他のどの国とも違う。

こんな書き出しで始まる、胡乱な“掃除屋”の話です。メアリ・ハニカムウォーカーと名乗るおしゃべりな有角人。どういう状況で彼女が語りかけているかに関しては、すぐ明らかになります。
読み始めると割と止めどころがないみたいなので、よかったら読んでみてください。止めどころがないってのは褒め言葉なのかな。

ともかく。

「ハニカムウォーカー、また夜を往く」は現在、カクヨムと小説家になろうにて連載中です。なろうで細かく、1500字から2500字くらいの分量をちまちま連載して、ある程度纏まったら前中後編くらいにしてカクヨムにアップしてます。

この書き方のいいところは、割と反応を見て展開を変えたりとか、細切れの中にある程度の「ヒキ」を意識することによって、「読んでる人が飽きるかも」という緊張感を持って書けるとこです。
書けば読んでもらえる、というのは実はめっちゃくちゃ贅沢なことなので、読んでもらえるように色々工夫をするのはとても大事だなあと思う今日この頃です。
それはそれとして、丁寧に書こうと思うとこうなっちゃうんだよな。

ちなみにわたしは、わざとやってんのかお前、というレベルで宣伝がクソ下手なので、導入を自力でなんとかするのは諦めました。「内容」という物理で殴り倒して行く方向にスキルツリーを伸ばします。

誰か助けてください。
これは冗談でもなんでもなく、宣伝がクソ下手なので、こういう風に書いて誰かが紹介してくれると、それだけでいつも累計PVが倍とかになります。日計じゃないですよ、累計ですよ。この歪なスキルツリー、自分でもほんとどうかと思うんだ。

ともあれ、またなんとなく創作論を書きたくなったり、要望があれば「蘭之助、もう吠えないのか」29話とか「ローグ・ローグ・ローグ」についてとかも書きます。
それではまた。ごきげんよう!

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