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VCや事業会社に「会いたい」と思わせるテック系起業家ピッチの法則

売り込む製品やサービスが完成していないシード期のスタートアップにとって、投資家や企業へのピッチ(5分から15分程度の短いプレゼンテーション)は最大の武器と言ってもいいでしょう。

スタートアップがピッチを行う主な目的は、自分たちと製品を相手に知ってもらい、出資や提携など必要な協力を得ることです。そのためには相手の理解を得るに十分な情報と、端的に相手の心を動かすための戦略が必要です。


聴く側のモチベーションも学会での発表や技術説明会とは異なります。そのため、単に発表するだけではなく、オーディエンスの心を動かすに足る良いピッチでなければ成功とは言えません。

では、良いピッチとは何でしょうか?あなたがこれまで見たピッチを思い出し、良いピッチの要素は何か考えてみましょう。

清潔感のある服装、デザインの凝ったスライド、シンプルなテキスト、相手の心をつかむ言葉遣いや態度――それらは確かに良いピッチで見かける特徴ではありますが、これは上記に挙げた目的を達成するための手段でしかありません。

「話が面白かったら、声をかける」つもりで参加するオーディエンス

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具体的なピッチの作り方を説明する前に、スタートアップがピッチする環境について理解しておきましょう。

学会での発表や学生に向けた講義、セミナーやイベントなどの講演の場合、参加者は「登壇者から学ぼう、情報を吸収しよう」という状態で参加します。そのため、発表内容に多少伝わりづらい点があったとしても、多くの場合において問題になることはありません。

一方でスタートアップとしてピッチする場合、参加者は必ずしも「学ぼう、吸収しよう」という意欲で参加していません。むしろ参加者である投資家や企業の担当者の多くは「発表内容が面白かったら、あとでコンタクトを取ろう」という状態で参加します。
ピッチは発表することが目的ではなく、自分たちとプロダクトを知ってもらった上で有望な投資家や企業から協力を得ることが目的です。

つまり、「コンタクトを取りたくなるほど興味を持たせるための情報」が、スタートアップのピッチには不可欠なのです。

ピッチで抑えるべき6項目

ピッチの持ち時間は5分から10分程度が目安です。これから紹介する項目一つにつき、スライド1枚を使い、ゆっくり話して1分以内に収まるように準備しましょう。

1. 課題とターゲット

顧客となる個人や企業がどんな課題を持っているのか。その課題があることによる問題の大きさや、解決することによる効果を説明しましょう。

投資家の中には市場規模をはかる上で、課題の大きさを重視するケースもあります。

2. 解決方法

ここでは先に挙げた課題を解決するために、あなたが開発しているプロダクトを説明します。あなたのビジネスに対する理解が深まるよう、基本的な使い方や性能、効果などを盛り込みましょう。後ほど触れますが、オーディエンスに合わせて情報量を調整することも重要です。

3. 自分たちが解決する理由

創業者は市場環境をどのように捉え、どんな経験を通じて、ビジネスに取り組んでいるのかを伝えます。プロダクトを開発し、市場に送り出すための信念や原動力は、投資家が最も重視するポイントです。

「他でもない、自分たちがやる理由」に説得力をもたせることができれば、この後に紹介するメンバーも含めたチームに対する信頼度を高めることができるでしょう。

4. ビジネスモデル

マネタイズの手段や、どれぐらいの期間をかけて、どの程度の規模まで成長するのかを説明しましょう。

売り切り型なのかサブスクリプションなのか、1回もしくはミニマムの継続期間での金額はいくらなのか、そして目指す業界シェアをまとめます。

ここでは予測値をもとにしたグラフを使用することもありますが、非現実的なグラフの羅列はリアリティがなく、オーディエンスに与える効果も薄いので多用は避けましょう。


5. 実績

現時点でのジームとしての実績や、プロダクトの事例などをまとめましょう。
実証実験などの実例があれば、必ず盛り込みます。ここでは前職など起業前のことには触れず、現在のチームとプロダクトだけにフォーカスしましょう。

6. メンバー

チームを構成するメンバーを紹介しましょう。ここでは名前や経歴、写真を単に羅列するのではなく、「なぜ自分たちは成功できるのか」という軸で経歴や実績などを整理しましょう。

最後までやり通せるパッションとキャリアを持っているか、聞き手に伝わる内容であることも重要です。

聞く相手によって情報量を調整する

ピッチを聞く相手によっても、6項目の重み付けは変わります。
投資家は1〜6全てが重要ですが、協業先候補となりそうな企業担当者は1、2、5。メンバーの採用活動では1,2,3,6。金融機関の融資担当者には4,5というように立場によって重要な要素は変わります。

あなたがどんな目的で、誰にピッチするかを考えた上で説明内容はチューニングしましょう。

最後のページの禁じ手は「ご清聴ありがとうございました」のみ

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ピッチが終わり、最後のスライドを写す際に最も適切な内容は何でしょうか。

大半の場合、ピッチの後に質疑応答の時間が設けられます。また聞き手によっては、ピッチ後に声をかける時間がなく、連絡先をいち早く知りたい人もいるかもしれません。
こうしたことを踏まえて、以下の三点を記載するようにしましょう。

・ピッチ全体を通じた要点(ターゲット顧客と課題、解決策)
・今回のピッチの相手に向けたリクエストを簡潔に記載する
例)「出資に興味のある投資機関を探しています」「協業先の企業を探しています」
・連絡先(電話、メールアドレス、ウェブサイト、SNSアカウントなど)

間違っても「ご清聴ありがとうございました」と一行だけ書かれたスライドを投影しないようにしましょう。

HAX Tokyoではアクセラレーションプログラムに採択したスタートアップに対して、こうしたピッチのメソッドや各社毎の具体的な訴求ポイントや改善点の洗い出し、相手に効果的に伝えるための実践的なトレーニングの場を提供しています。
プログラムにご興味のある方は是非お問い合わせ下さい。

監修:岡島康憲
取材・文:越智岳人

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