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「インターネットの父」村井純氏の眼差し−−危機を救うのはスタートアップだと歴史が証明している

HAX Tokyoのアドバイザーで慶應義塾大学の村井純教授は社会の変革期である今こそ、スタートアップが活躍する時代だと断言します。その発言に込められた思いや、スタートアップを支える社会のあり方について、オンラインでお話を伺いました。
(※写真は2019年12月に撮影)

−−コロナ禍においてはコミュニケーションやデータ、制御などの面でインターネットの貢献が大きかったように思います。

インターネットが間に合って良かったと思います。もし、この状況下でインターネットが無かったらどうなっていたか想像もつかない。しかし、まだインターネットにつながっていない人や場所を、つなげていく必要性はたくさんありますね。

マイクロソフトのCEO(サティア・ナデラ)が、「2年かかるDXが、(コロナ禍で)2ヶ月で実現した」と言っているように、今は歴史的に見ても変革の時期にあります。紀元前から現代に至るまで、人類には未曾有の危機が度々訪れましたが、それに立ち上がったのは今でいうスタートアップです。その時々の新しい力が社会を救っています。そういう意味では、今起きている状況を救うのはスタートアップに他ならないでしょう。

特にコロナ禍では、それで規制や法律などの壁に阻まれていたメディカル系のスタートアップが皆のびのびとやっていますよね。一方で大企業にとっても経営者の知恵が試される時代です。どう改革して生き残るかを考えなければならない。そういう状況だからこそ、大企業は積極的にスタートアップへ投資すべきですね。

――製品やサービスが固まっていないスタートアップの中は、投資の機会も減り、市場環境の変化によって厳しい状況にいるところも少なくありません。

HAX Tokyoに採択されているスタートアップは、基礎技術が面白いところが選ばれていますよね。応用先の環境が変わるのであれば、マッチングさせる課題や業界も変えていくことを考え直す必要もあるでしょう。

基礎技術というのは特定の業界にしか使えないわけではありません。ユニークな技術で新しい挑戦に資するものであれば応用は利きます。かつて電話からインターネットに通信業界がシフトしたときも、電話向けに通信機器の需要は衰退しました。しかし、通信そのものに面白さを感じていたスタートアップや研究者は、基礎技術を使って新たなものを生み出し、放送やインターネットなどにピボットできたわけです。

−−Batch 2のDemo Dayが先日終わりましたが、いかがでしたか?

今回の新型コロナを受けて日本が取り組むべきことが2つあります。1つは東京一極集中を緩和して、地方でも働きやすい社会を作ること。東京と大阪にデータセンターが集中している状況は災害リスクから考慮しても非常に危険です。

そして、スタートアップを生み出すことと並行して、一次産業を大きく発展させることです。そういう面では遠隔操作技術や一次産業に貢献するサービスを開発するスタートアップが採択されていて、非常に好感を持ちましたし、今後に期待できる内容でしたね。

−−今回は在京ではなく、地方に拠点を構えるスタートアップも採択されましたね

地方でスタートアップが活き活きしているということは、地域の底上げにもなります。慶應大でも地元自治体の協力を得て、山形県鶴岡市に研究所(慶應義塾大学先端生命科学研究所)を2001年に立ち上げましたが、そこから長い時間をかけて環境を整えていった結果、Spiberのような素晴らしいスタートアップが誕生し、現在では地域に多くの雇用を生んでいます。

一方でスタートアップが地域に根を下ろし、家族と共に暮らしていくには、子供たちが通う学校の質も上げていかなければならない。一次産業に関連する技術であれば、現場は地方にあるわけですから、地方にあっても「あの大学に行きたい」とか「子供の教育のために東京に帰らなくてもいい」と思えるような環境を作るべきだと思います。

(取材・文:越智岳人

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