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アクセラレーターの仕事:その技術を求める現場を見つけること

HAX Tokyoはシードステージのハードウェア・スタートアップに特化したアクセラレーション・プログラムです。
過去の記事でもアクセラレーターの機能と役割について説明しましたが、具体的にHAX Tokyoがスタートアップをどのようにサポートしているのか、その背景にはどのような想いがあるのかを本記事では紹介します。

シードだからこそ、顧客を探す

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HAX Tokyoがプログラムの中で重視しているのは「チーム作り」、「プロダクト開発とコンセプトの言語化」、「事業開発(BizDev)」の3点です。これらをスタートアップからの要望に応じて、ハンズオンで伴走支援していくことが特徴です。

この中でも重要なのが事業開発の支援です。ハードウェア・スタートアップ向けアクセラレーターというと、試作・開発の支援がメインのように思われがちですが、起業して間もないシード期こそ顧客と課題、そして解決策が市場のニーズと合致しているかをすり合わせる必要があると、私達は考えています。

どれだけ優れた技術や研究内容だったとしても、明確な用途やビジネスになりうる道筋が無ければ、普及することもなければ発展していくこともありません。
技術と市場とのギャップを最小限に抑えながら、顧客の課題を解決できるビジネスとして成立させるためには、早い段階で自分たちの技術が生かせる方法と業界を知ることが重要です。

HAX Tokyoに採択されたスタートアップは、まず顧客と課題、解決策の3つを言語化する作業を行います。
顧客と課題、解決策はスタートアップのステージに関係なく、自らの存在意義を明確にする上で重要なキーワードです。シード期においても企業や投資家にビジネスアイデアを説明する上で、この3つを明確にすることは避けて通れません。

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座学と並行してHAX Tokyoチームの共同運営者である住友商事・SCSKが持つネットワークの中からスタートアップの顧客となりうる企業とのミーティングを設定し、スタートアップ側のアイデアが実際に受け入れるか、プロダクトのコンセプトを磨き上げます。

ここではHAX Tokyoの専任スタッフがスタートアップと伴走します。週1回の定期的なミーティングに加え、接点のありそうな企業にスタッフがコンタクトを取り、実際のエンドユーザーになりうる企業とビジネスアイデアの壁打ちを行います。

事例紹介:Halo World

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Batch 1(第1期)での事例を紹介すると、安価なハードウェアで高解像度の3Dデータを生成できる「Halo World」は建設やエネルギー開発関連企業20社超とのマッチングを重ねました。

ある建設会社とのミーティングの中で、工事に必要なコンクリートの量を見積もる際にHalo Worldの3Dスキャンを活用した測量技術が活かせるということがわかりました。

建造物に必要なコンクリート量は熟練の技術者であれば勘と経験を基に見積もることができますが、そうではない技術者しか確保できなかった場合にはコンクリートを余らせてしまうケースもあるため、現場ですばやく測量できるHalo Worldの技術に需要があることがわかりました。
こうしたマッチングを経て建設市場へ参入すべく、データサブスクリプション型のビジネスモデルも確立をしていきました。

また、インターフェースの面でも変化がありました。
当初は三脚型のハードウェアを設置して、空間を何度か撮影するというスタイルでしたが、潜在顧客へのヒアリングを通じて足場の悪い場所は人が入れない場所を簡単に撮影したいというニーズがあることがわかり、作業員の腰に巻く形や、現場で使用しているロボットにマウントするという柔軟性の高い形に変わりました。
今後は2~3社の潜在顧客とともにプロダクトの開発を進めていきます。

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三脚にマウントする形(左)から、腰に巻く形へ仕様を変更した

このように、スタートアップが持つ優れた技術がユーザーを獲得するための最適なシーンやUI/UXは何かを可能な限り探ることに私達は専念します。
これによって顧客の課題や対象となる市場を理解し、自分たちの技術が顧客の課題を解決できる最適な手法であることがわかった状態で、次のステージとなるHAX深センにステップアップすることができます。

HAX Tokyoでは現在Batch 2に参加するスタートアップを募集しています

採用されたチームには、米国シリコンバレー発、世界的に実績のあるハードウェアアクセラレーター「HAX」にて蓄積された知識やノウハウが提供されます。また、ハードウェアに特化したコミュニティが提供され、ビジネスおよび製品開発の分野で世界をリードする専門家や、住友商事をはじめとする日本のパートナー企業とのコラボレーションの機会が得られます。

さらに、3ヶ月後のDemo Day後には、HAX Shenzhen、HAX San Franciscoのプログラムに参加し、ベンチャーキャピタル等から資金を得て事業を拡大できる可能性があります。

詳しくはウェブサイトまで。3月末までオンライン説明会も開催中です。

HAX Tokyo オフィシャルウェブサイト https://www.hax.tokyo/
Twitter: https://twitter.com/HaxTokyo
Facebook: https://fb.me/haxtokyo

文・越智岳人