見出し画像

未来が早くやってきている—コロナ禍でスタートアップが集中すべきこと

「厳しい状況ではありながらも、来たるべき未来が早くやってきている」

HAX Tokyoのアドバイザーである、TomyK Ltd. 代表 鎌田富久氏はコロナ禍におけるスタートアップ・エコシステムについて、ネガティブな状況だけでなく、ポジティブな変化も起きていると指摘しています。

多くのスタートアップに投資し、事業化を支援する鎌田氏は、若き起業家や技術者にどのようなアドバイスをしているのでしょうか。

大企業の椅子を奪いにいくスタートアップ

−−前回は新型コロナが国内で拡大する前にお話を伺いました。あれから大きく環境は変わりましたが、鎌田さんから見たスタートアップの環境はいかがでしょうか

一言で言えば厳しいですね。どのスタートアップにも言っているのは、生き延びるのが最優先だということ。生き残らないことには何もできない。社会がリカバーした際に、高く飛べるように準備しようと話しています。

今年上半期の資金調達に関するデータを見ても、調達額もさることながら、件数も大幅に減っています。特にリスクの高いシード〜アーリーステージのスタートアップへの投資環境は依然として厳しいですね。

スタートアップにとって一番厳しいのは商談やプレゼンの機会が得られないことです。ハードウェアは実際にデモを見せないと良さが伝わらない。しかも、スタートアップの製品は『ちょっと良いな』ぐらいでは売れなくて、創業者の熱意が伝わらないと、企業は首を縦に振りません。オンラインだけの商談では難しいので、各社が試行錯誤を続けている状況です。

一方で新型コロナを期にリモート制御技術やヘルスケア分野は、この半年で一気に加速したと言えます。特に遠隔診療は半年で大きく前進しています。ただ、それは何か劇的なイノベーションが起きたのではなく、数年かけて実現すると思われていたことが一気に加速しているんですね。言わば未来が早く来ている状況なので、コロナが収束しても、「コロナ前」に戻るということはあり得ない。

今回の新型コロナに対して、「辛抱していれば通り過ぎる』と守りに入る大企業は、辛抱している間に過去に取り残されるリスクが大きいと思います。

特に、医療分野は、コロナでイノベーションが加速していますね。投資先のスタートアップにVLPセラピューティクスという創薬スタートアップがあります。彼らは少量でも効く新しいワクチンを開発する技術を持っていて、AMED※の『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発』の公募にも採択されたばかりです。他に採択されている企業は国内大手の製薬メーカーで、名だたる大手企業と肩を並べるほど期待されていて、国内外から注目を集めています。

オンライン診療を手掛けるMICINも今年に入って急成長していて、彼らが提供するアプリの利用者も爆発的に増えています。

※AMED…日本医療研究開発機構。内閣府所管の国立研究開発法人

お金を出した人の意見は、ほぼ正しい

−−何かがトリガーになって、一気にビジネスが加速した際にスタートアップが気をつけるべきことはありますか?

迷わずアクセルを踏むこと。強気の資金調達をして、優秀な人材を集め、後から参入する大手に圧倒的な差をつけなければいけません。

開発面ではユーザーの声に応えることに集中すべきです。先行者の最大の優位点はユーザーからのフィードバックを先に持てることです。何が必要なのかを理解しているというのは、先行者として最大の武器です。

そのためにも平時からユーザーからの声を集めておき、そこに向き合って、真摯に対応していく。お金を払った人の意見は、ほぼ正しい。スタートアップは評論家やメディアの意見よりもユーザーの声を大事にすべきです。

――ビジネスを加速させるためには、事業会社との提携や出資が必要な場面もあるかと思いますが、今の環境で事業会社との関わりについてスタートアップにアドバイスしていることはありますか?

スタートアップだけでなく、大企業も本気度が試されている状況です。軽い考えでスタートアップと関わろうと考えていた企業は撤退している一方で、真剣にスタートアップとの提携を捉えている企業の投資は活発です。ただ、スタートアップに対する目線は非常に高くなっています。

未来に向けて世の中が加速している今だからこそ、アクティブに動いているような本気の企業とスタートアップは組んだほうがいいですね。HAX Tokyoにも遠隔操作やロボット関連の技術など、まさに今年に入ってニーズが高まっている技術を持ったスタートアップが集まっています。こういったスタートアップと本気で未来を変えようとしている企業が理想的なパートナーだと思います。

(取材、文、撮影:越智岳人

※写真は、取材後の約1分間ほどの時間で撮影したもので、本編は、ソーシャルディスタンス、換気、消毒などに十分な配慮をして行いました。

HAX Tokyo Batch 3応募受付中

HAX Tokyoでは現在Batch 3(第3期)に参加するハードウェア・スタートアップを受け付けています。

HAX Tokyoはスタートアップの経営の基本を学び、技術シーズとビジネスニーズを引き合わせる場です。

採択企業にはハードウェアに特化したコミュニティが提供され、ビジネスおよび製品開発の分野で世界をリードする専門家からアドバイスを受けることができます。また住友商事をはじめとする日本のパートナー企業とのコラボレーションの機会も得られます。

詳細はHAX Tokyo公式サイトをご確認下さい。応募期間中は毎週オンライン説明会を実施しています。