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「ピボットは死、モノが売れないCEOに価値はない」シード期のWHILLが選んだ成長戦略とは

HAX Tokyoでは日本で活躍するハードウェア・スタートアップを招くトークセッションを不定期に開催しています。今回は2020年1月にHAX Tokyoのオフィスで開催されたイベントからWHILLの杉江理CEOによるトークセッションを2回に分けてレポートします。

WHILL
2012年創業。「100m先のコンビニに行くのをあきらめる」という一人の車椅子ユーザーの声がきっかけとなり、杉江 理氏(CEO)、内藤 淳平氏(CDO)福岡 宗明氏(CTO)によって創業。デザインとテクノロジーの力を生かした身体の状態や障害の有無に関わらず
誰でも乗りたいと思えるパーソナルモビリティを開発、2014年に商品化に成功。現在は個人向けのモビリティに加え、商業施設や空港などの公共施設でのMaaS※サービスを手掛ける。

※Mobility as a Serviceの略。MaaS は、ICT を活用して交通をクラウド化し、公共交通か否か、またその運営主体にかかわらず、マイカー以外のすべての交通手段によるモビリティ(移動)を 1 つのサービスとしてとらえ、シームレスにつなぐ新たな「移動」の概念(国土交通省ウェブサイトより引用)

−−WHILLは個人向けモビリティの開発に加えて、最近ではMaaSにもビジネスを広げています。大企業とビジネスを進めるにあたって重要なことは何でしょうか?

WHILLは1年ほど前から大企業との案件をやりはじめています。スタートアップにとって重要なのはPMF※をやりきること、そこから売り上げを積み重ねて、エコシステムを作っておくことが大事です。

例えば、モビリティでの移動中に事故などトラブルが起きた際に保険でケアできるような仕組みを構築しておくとか、仕組みを用意しておくことが大企業とのビジネスではポイントになります。

ただ、そういったエコシステムの構築はグロースステージ(継続的な成長と収益が実現し、成長するフェーズ)でやるものであって、シード・アーリーステージのスタートアップはPMFこそが大事だと思います。

※プロダクト・マーケット・フィットの略。顧客の課題を解決できる商品を提供し、それが適切な市場に受け入れられている状態になること。

−−PMFをやりきるために、杉江さんがやってきた事、大事にしていた事などありますか?

大前提として、ハードウェア・スタートアップはピボットしたら死にます。なぜならピボットするお金がないからです。そうならないために最初に重要なのは仕様を決めること。300人のユーザー調査から購入するという契約書にサインした5人の意見を聞いて、「これでいいよね」と全員が納得して合意するところまで突き詰めました。

ユーザー調査も人に任せずに全員で行くようにしていました。「これで会社が潰れたとしてもいいよね」ぐらいの覚悟がある確認をとらないといけないので。
そのためにはメンバー全員がユーザー調査に行って、「○○さんはこう言ってたよね、××さんはこういう風に操作してたよね」という共通理解がある状態で、ディスカッションを重ねたほうが効率的だし、後々になって後悔しないと思いました。

−−仕様を決め、完成した商品を売り込むにあたって、どんなことをしていましたか?
最初の5年間は常に潰れそうで必死でした。その中でまずやることは、「自分たちのプロダクトがユーザーに受け入れられるのか」ということ。そのためには最初の5台、50台はCEOが自ら売り込みに行くべきですね。CEOが売り込みに行って売れないなら、そのCEOは交代したほうがいい。特に最初の頃は法人であれば経営的判断で試しに導入するケースもあるけれど、会社のポテンシャルや「この人は面白そうだ」という要素も少なからず影響するので、営業でもCEOが先頭に立つのが良いと思います。

WHILLの場合、最初に50台製造して完売した後、2015年頃に500台製造したのですが、売れ行きが芳しくなく経営的にも厳しい時期がありました。その時は「全員営業」のつもりで部門関係なく全員営業したような時期もありました。

その時々で会社として何が一番重要なのか、それをしっかりキャッチアップしてコミットすることが重要だと思います。

※後半は来週掲載します。

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HAX Tokyoでは現在Batch 2に参加するスタートアップを募集しています。
採用されたチームには、米国シリコンバレー発、世界的に実績のあるハードウェアアクセラレーター「HAX」にて蓄積された知識やノウハウが提供されます。また、ハードウェアに特化したコミュニティが提供され、ビジネスおよび製品開発の分野で世界をリードする専門家や、住友商事をはじめとする日本のパートナー企業とのコラボレーションの機会が得られます。

さらに、3ヶ月後のDemo Day後には、HAX Shenzhen、HAX San Franciscoのプログラムに参加し、ベンチャーキャピタル等から資金を得て事業を拡大できる可能性があります。

詳しくはウェブサイトまで。

HAX Tokyo オフィシャルウェブサイト https://www.hax.tokyo/
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文・越智岳人