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2023年12月の歌        


紅白歌合戦

紅白の馴染みの薄い歌手リストに昭和は更に遥かになりぬ
正月を異国に迎えて半世紀お雑煮の味を二世に引き継ぐ
岡まなみ

目の検査無事に済ませてあと二年運転できる免許をもらう
二年後に九十一歳になる我の運転免許じっと見つめる
小島夢子

元日の朝がなんだとキジ猫はシッポふりふり車道を渡る
大空を縦に横にと切りきざむ音もおどろな冬の雷
関本なつ

報知紙の分厚いページの特集に胸弾ませし春を忘れじ
パスワードを鍵束のごと携えてウェブセールに参じる金曜
筒井みさ子

幾年もブーゲンビリアは咲きつぎて師走の空を今日もながめる   
歳晩が梢のかなたに暮れてゆきオレンジの月が出番を待てり   
原葉

母、娘、孫と3人そっくりのカードが届きしクリスマスかな
抱き上げれば逃げ出すくせにすぐにまたすり寄ってくる猫の気まぐれ
藤代敏江

二時間の戴冠式は長かったプリンス五歳のあくび可愛い     
フィナーレは皇室家族と国民の見上ぐる空の儀礼飛行に     
三浦アンナ

テーブルの上を片付け花を挿し今日は夫の退院する日    
にぎやかにサンタブーツの並びおるスーパー出れば陽ざしまぶしき 
森田郁代

病得て師走の冷えに身に沁むは家族の気遣ひ友の励まし   
大イチョウ十日遅れの黄葉はバス停覆ふ巨大電飾     
山下ふみ子

亡き母の形見の碗に茶を練れば香り広ごる年明けの朝 
香りよき新茶を淹れて夫(つま)と飲む昨日と変わらぬ静かな時間
楽満眞美

来年の干支は辰年われの年巡り来るのはあと幾たびか  
釣竿は夫亡き後十年後沖縄の海に蒼く輝く 
伊藤美枝子

黄昏の海の彼方を眺めると悲しいほどに君に逢いたい
空に夢セスナも君も揺れていたチノの上空想い出深し
今森貞雄

この店で朝のコーヒー飲もうかなクリスマス飾りの店内覗く  
容赦なく過ぎゆく時よ七度目の干支を迎えてグラスを上げる    
鵜川登旨

お正月ペンギン歩きの一歳は道でぺたんと尻餅をつく
もみの木の坂を下れば前方の空にそびえ立つ真っ青な海
大室やよい

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