『トムと犬』〜全米は絶対涙しないけどイップスの人は涙するくらい核心ついた話

【イップス童話】という、ちょっとふざけたようなツイートをしてみました。

お恥ずかしながら、もちろん【イソップ童話】を文字っております。
しかし、一見ふざけているように見えて、私はいたって真面目です。

今年に入り、ツイッターで頻繁に発信し始めてから、目に見えてイップス相談の数が増えました。
それにつれ、イップス改善の取り組みの「軸」を少しズレて考えてしまっている方が多い印象を受けるようにもなりました。

そのイップス改善の「軸」のニュアンスをうまくお伝えること、伝えようとすることは、私の立場として、一番の肝であると確信しています。

長年悩んでこられた方ほど、半信半疑で相談に訪れることが多いため、そもそも新しい概念を受け入れにくくなっていることが大多数です。

そこでちょっと物語風にしてみました。


実は私は拙著「イップス〜スポーツ選手を悩ます謎の症状に挑む」(大修館書店)

でも共著【アスリートのメンタルケア—選手の心の悩みケースブック】(大修館書店)

でも、無意識に物語テイストを取り入れたので、何かをどうしても伝えたい時の一つのパターンになっているのかもしれません。

ツイッターという文字数が限られた空間ではあまりにも表現しきれなかったので、改めまして、オリジナルイップス童話「トムと犬」の読み聞かせをさせて頂きたいと思います。

【トムと犬】

昔むかしあるところに、トムという少年がいました。

とある日、犬にほえられ、驚いた経験をきっかけに犬を見るたび怯えて目を瞑り、体を強ばらせ、その場を走り去るようになった少年トム。 いつも犬に追いつかれてしまいます。

その走り方を見たトムの父親マイクは「もっと力を抜き、目を開いて、リラックスしたほうが早く走れて逃げられるぞ」とアドバイスしました。

マイクに言われた通り、公園で犬から逃げるために走る練習を重ねると、クラスでも1番速く走ることができるまでに、走ることが得意になりました。 

しかし犬を見ると、やはりどうしても元の走り方に戻ってしまい、トムもマイクも悩んでいました。


トムにとっての「転機」は突然訪れました。


ある晴れた日、ヨチヨチ歩きの赤ちゃんが、公園で犬と楽しそうに戯れて、遊んでいる光景を目にしたのです。その瞬間

『あ、犬って怖くないんだ。ボクは今までなんでこんなに犬のことを怖がっていたんだろう』

ふと思ったのです。

その日からトムは、犬が目の前に現れても、落ち着いて歩けるようになりました。
ときにはトムの方から、犬の方に向かって。

「うまく走る必要どころか、走る必要すらなかったんだ。」
と自分で気がついたのです。

認知の書き換えの瞬間です。

イップスの改善最大にして最終のキモはまさに、この「認知の書き換え」です。

症状が出てしまうときの「条件」が必ずあります。

少し難しい言葉で言うと
「課題得意的」なんて言ったりもしますが、言い方はどうでもいいです。

イップスは、決して
「動作」が出来なくなってしまったのではなく
「ある条件での動作」が出来なくなってしまっているのです。

つまりマイクのように、犬のいないところで、犬のことを想定しない動作の改善をしても、全くと言っていいくらい意味がないのです。
きっとイップスで悩んだ経験があったり、周囲に悩んでいる方がいて目の当たりにしたことがある方ほど、腑に落ちる話ではないかと思います。

そんなこんなで流石にこの「文量」をツイッターでお伝えするには無理があるのと、決して埋もれることなく、イップスを治したい、治してあげたいと思っている方に届くことを祈り、noteに残させて頂きました。ご静読頂き誠にありがとうございました。
それではまた。

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