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せっかく入場無料ならと、博物館・美術館を巡ってみた

10月22日は即位礼正殿の儀に合わせて、全国の公的施設が慶祝事業として入場が無料となった。都内では上野動物園をはじめ、庭園や美術館などが入場無料となった。
私が住む北海道網走市も、市内の4つの施設が入場無料となったことをツイッターで知り、せっかくなのでひと巡りしてみようと思い立った。見学は、郷土博物館⇒美術館⇒モヨロ貝塚館⇒道立北方民族博物館という順番にした。南から北へ移動し、モヨロ貝塚館からバスターミナルに移動して「市内観光施設めぐり」の定期バスで最後の目的地へという形だ。

1️⃣網走市立郷土博物館

まず最初に訪れたのは、網走小学校の近く(桂町1丁目)にある網走市立郷土博物館。

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1936年(昭和11年)竣工の本館は、北海道を代表する建築家である田上義也氏の設計。当時は「北見郷土館」という名称だった。網走市中心部より北に位置するモヨロ貝塚を発見した米村喜男衛氏が、資料の散逸を防ぐために住友財閥の支援を受けて設立した。後に米村氏自身も館長に就任している。
その後1948年(昭和23年)4月に網走市へ移管され、1961年(昭和36年)11月には創設25周年を記念して別館が増築され充実が図られている。
網走の豊かな「自然」と古代から現代に至る「歴史」の流れを展示解説し、郷土のあり方を探ろうとしている。
特に独自の文化形態をもつモヨロ貝塚から発掘された品は見どころが多い。また、江戸時代・文化年間に漁場が開設されてからの郷土資料も展示。その他網走地方の自然や産業の豊富な資料を目にすることができる”郷土を語る博物館”である。
春(5月中旬)には付近の公園が桜の名所にもなっていて、今の時期は紅葉が鮮やかだ。

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1枚目はラッコの親子の標本。オホーツクの生き物が、見事な剥製で蘇っている。鳥類やヒグマ、キタキツネやエゾシカなども展示されている。他にも植物や希少な昆虫なども見ることができる。
2枚目はモヨロ人の住居を再現したもの。発掘された土器なども展示されている。
3枚目は1912年(大正元年)に網走本線が開通した頃の網走停車場周辺の写真。
4枚目は開通直後の釧網線の写真と初代網走駅(のちの浜網走駅)のホームの写真。
5枚目上はモヨロ浜(川向地区東部海岸)にあった市営海水浴場。1960年(昭和35年)撮影。ここに行った記憶はないから、この数年後には廃止されたと思われる。同下は1955年(昭和30年)の観光網走さくら祭の写真。この祭も今はない。花の友は、現在も合同酒精から出ている日本酒。ホワイトオーシャンは、現メルシャンの三楽オーシャン時代のブランドだろうか。
6枚目は、網走熱帯植物園の入場券。網走に熱川バナナワニ園みたいな施設があったのである。向陽地区に向かう途中にあったが、駐車場の問題などから観光コースとして定着せず、1971年(昭和46年)に閉園となった。

別館は現在は2階のみ公開されていて、近代の網走に関する展示がある。本館階段途中の窓のステンドグラスも見どころのひとつ。開館時間は9〜17時(11〜4月は16時まで)で、原則として月曜日、国民の祝日、12月29日〜1月3日が休館日。入館料はおとな120円、こども60円(20名以上の団体は96円、48円)。

郷土博物館プロフィール|教育・文化|網走市
https://www.city.abashiri.hokkaido.jp/270kyoiku/050kyoudo/010profile.html

2️⃣網走市立美術館

次に訪れたのは、網走市民会館の隣(南6西1)にある網走市立美術館。郷土博物館からは徒歩で10分ほどだ。

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網走市在住の美術収集家・宮川辰雄氏より、網走育ちで独立美術協会で活躍した洋画家居串佳一(いぐし・かいち、1911-1955)の遺作38点の寄贈を受けて、1972年(昭和47年)に開館した新築としては北海道内初の市町村立美術館である。 この居串佳一や高橋道雄をはじめとする網走ゆかりの作家の作品、および網走とオホーツクを主題とする作品を主に約1,400点を所蔵、展示している。
館内は撮影禁止のため写真はないが、居串氏の常設展のほか、今から約25年前に当時武蔵美の学生だった人たちの作品を集めた「若手版画作品展」を開催している。もしかしたら、今は著名な版画家になっている方の作品もあるかもしれない。
もし来館されたなら、やはり居串氏の作品はぜひ観ていただきたい。力強いタッチで描かれた大きなサイズの絵画に圧倒される。また、20歳前後の頃の瑞々しい作品にも心を動かされる。
開館時間は開館時間は10〜16時で、休館日は原則として月曜日、国民の祝日、年末年始(12月31日~1月5日)。入館料はおとな120円、こども60円。特別展は別途設定されることがある。

網走市立美術館
https://www.city.abashiri.hokkaido.jp/270kyoiku/040bizyutukan/

3️⃣モヨロ貝塚館

3番目に訪れたのはモヨロ貝塚館(北1東2)。網走市立郷土博物館の分館である。美術館からは徒歩11分ほどで着く。
モヨロ貝塚は、オホーツク海にそそぐ網走川の河口に位置する遺跡。今から約1300年前、北の大陸からやってきた人々は、網走にムラを構えた。巧みな航海術と海獣狩猟・漁場の技術を持った彼らの暮らしはオホーツクの豊かな海の恵みに支えられ、それまで北海道では見られなかった「オホーツク文化」とよばれる独自の文化を発展させていった。
モヨロ貝塚館は、貝塚の復元模型やオホーツク文化に関するさまざまな資料を展示する博物館だ。現在の建物はリニューアルした2代目で、2013年(平成25年)5月1日にオープンした。

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1枚目は建物全景。2階建になっている。建物のすぐ前に、2枚目のような縦穴式住居跡や墓の跡などを見ることができる。貝塚や遺跡を周遊する園道も整備されている。
3枚目のような土器などを多数展示している。
4枚目は、実際に出土した動物の骨や貝をそのまま展示していて、実際に触ることができる。
5枚目はミンククジラの全身骨格標本。スペースが狭いところに展示してあったので、縦方向からしか撮影できなかった。
6枚目は埋葬状態を再現したもの。1階のスペースの足元にある。
開館時間は9時~17時。冬期間(11~4月)は16時まで。7~9月は無休。10~6月は原則として月曜と国民の祝日、年末年始(12月29日~1月3日)が休館となる。入館料はおとな300円、高校生・大学生200円、小学・中学生100円。各種団体(20名以上)は20%割引になる。

モヨロ貝塚館|網走市立郷土博物館分館|北海道|網走市|
http://moyoro.jp/smarts/index/1/

4️⃣北海道立北方民族博物館

最後に巡るのは、4つのなかで唯一道立のもの。天都山にあり、歩いてもいけないことはないが、上りがきついのでバスで行くことに。1週前に網走バスの「観光施設めぐり」が1日5往復に減便されているのを気づかず、1時間ほど昼食を摂るなどして時間をつぶした後、網走バスターミナル14時発の便で向かった。およそ18分ほどで終点の北海道立北方民族博物館に着く。1週前までは、この先の「はな・てんと」会場まで運行し、1日6便だった。来年1月20日からは冬の観光シーズンを迎えて、一気に運行数が増える。

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北海道立北方民族博物館は、潮見309-1にある。北海道教育委員会が設置し、財団法人北方文化振興協会が指定管理者として管理をしている。開館は1991年(平成3年)2月10日。この博物館が対象とする北方民族とは、オホーツク海・北極海周辺の、北海道、ロシア沿海州、アラスカ、シベリア、北欧等の地域に棲む民族(アイヌ、ニヴフ、イヌイト、サミ、スオミなど)で、これらの地域と民族の文化と歴史の研究や理解促進を目的としている。これらの民族を対象とした民族学博物館としては、日本では唯一のものである。
常設展示は大きく分けて2つ。①北方地域の諸民族の文化:北方の諸民族を対象とし、衣・食・住・生業・精神文化・文化の伝承などのテーマ別に展示。②先史文化:北海道のオホーツク海沿岸にかつて栄えていたオホーツク文化を中心に展示している。
その他に随時特別展や企画展、写真展が開催されているが、この日は常設展示以外の特別展のようなものはなかった。

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1枚目は、アザラシの腸で作った腸製衣と呼ばれるもの。パーカーと表示してあった。
2枚目は、アイヌの男性の服。
3枚目の奥に見える黄色いものは、トドの内臓で作られた油入れ。
4枚目と5枚目のような小物から、大きな舟やシャーマンの衣装などさまざまな展示がある。

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11月1日〜7日は、芸術週間のため、再び無料開館が実施される。また、3日は「北方民族はくぶつかんまつり」で、衣・食・住・遊をテーマにさまざまなイベントが行われ、なかでも食のコーナーではボルシチが無料で振る舞われるそうだ。この機会に訪れてみてはいかがだろう。

トクをした額は合計しても千円に満たない微々たるものだが、無料開館をきっかけに訪れる人は結構いたようだった。特に、モヨロ貝塚館には家族連れが目立った。案外、地元の博物館には足を運ばないもので、慶祝事業は良いきっかけになったと思う。
地元紙などにそれぞれの博物館や美術館のイベント情報が掲載されることもあると思うので、しっかりチェックして、興味のある内容ならば足を運んでみるのも新たな発見に繋がったりする。身近なスポットにもっと関心を持ちたいものである。

⛩おまけ

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北方民族博物館から少し歩いて流氷館の駐車場のあたりまで行って、周囲を散策していたら小さな社があった。
「天都山福禄寿神」とあり、網走七福神で唯一現存するものだそうだ。

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紅葉はピークを過ぎていたが、チラッと見える海別岳とともに。

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地元網走に帰ってきて5年半経ちました。元競馬専門紙編集部員。サッカーや野球、冬はカーリングなどスポーツ観戦が好き。もちろん、競馬も話題にしています。時事ネタや網走周辺の話題なども取り上げます。よろしければ、サポートもお願いいたします。