見出し画像

chapter2 : なにはともあれ家は良い

癌と闘ってきた父に、これ以上の治療は難しいと医師から話があった日。その診察室を出た廊下で、母が倒れてしまった。

騒ぎが終わった頃には、時計が23時を回っていた。
父も憔悴しているし、これから1時間強の旅を要する帰宅は難しいかなと、近くのビジネスホテルへと、二人をタクシーで送った。私はホテルの部屋を確認し、必要品をコンビニで買ったあと、二人と別れ、母が運転してきたワーゲンゴルフを取りに病院へと戻った。

が、気が動転していたのか、キーをホテルに置いてきてしまったことを、車のドアを目の前にして気付く。さらには駐車券を何処かへやってしまい、深夜に途方に暮れていたら、優しいガードマンに助けてもらった。

とにかく、ここは森のように広い。
ああ、やっと帰れる。高速に乗って家路へと急いだ。
家では、縁あって家族になったばかりの仔犬ココがお腹をすかせて待っていた。

パパ、ママ、明日の朝、迎えに行くからね! 

その日、家に帰ってきてからの記憶はほとんどない。きっとバタンキューで寝てしまったのだろう。

明くる朝、もう一度ビジネスホテルへ父母を迎えに行き、やっと家族全員が家に揃うことになった。

私は自分の寝室があるけれど、パパとココとママは川の字に寝るのが常で、堂々とベッドの真ん中を陣取るココを見ながら「面倒くせぇよ」とパパにいつも言われてたっけ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?