スローな社会文化 「都市でのスローライフの楽しみ方」

はじめに

#0では、「スロー」の広範な定義に触れました。
では、都市で生活する人々にとって、スローライフはどのように愉しまれているのでしょうか?

その手がかりとして、
都市型農業に参加する/家庭菜園を行う 
を挙げようと思います。

1.都市型農業に参加する/家庭菜園を行う 

都市型農業=Urban Farming とは?

都市部で遊休化している場所などを上手く利用し、植物を育てる。
そのような取り組みが世界各地で拡がっています。

まずは、「IDEAS FOR GOOD」が述べる定義を眺めてみましょう。

都市農業(都市型農業)は、東京やニューヨーク、ロンドン、パリなど大都市の市街地区画内で農業をし、食物を生産・流通させること。
たとえばビルの中の室内農園や、建物の屋上農園、住宅街などにある市民農園(共同で管理する小規模な畑)などだ。国連のレポートによると、世界中で8億人以上が都市で農業し、家畜を飼育しているという。英語だと Urban farming や、Urban gardening、Urban agricultureなどと呼ばれる。
これまで農業といえば、郊外や地方の広い土地がないとできないものであったが、ビルなどの高さや傾斜面を利用する「垂直農業」などをすれば、都市の狭い土地でも作物を育てることができる。2050年までには人類の80%が都市に住むといわれる中、都市農業は、増えゆく都市の人口に見合う食糧需要を満たすのにも大きな役割を果たすだろう。

他にも、下記のような社会的メリットがある。
・フードマイル削減(生産地と消費地を近づけることによるCO2削減)
・都市に住む人にとっての身近な農業体験の場を提供(誰もが生産者に)
・災害時の食糧供給や、避難場所
・都市緑化によるストレス軽減
(※「都市の緑化でメンタルヘルス向上」米ペンシルバニア大学が発表
・都市に住む人の農業への理解醸成

IDEAS FOR GOOD. 「都市農業とは・意味」
https://ideasforgood.jp/glossary/urban-farming/, (参照 2022-03-20)

都市型農業は、消費する人が、生産者に変わり、都市に住む人々の食物への関心が高まることで、
これまでの産業化社会が築いてきた生産者/消費者の確立した境界を、曖昧化するところにおもしろさがあると思います。

フランス・パリの事例

ヨーロッパやアメリカでは、盛んに都市型農業が取り入れられています。
その一例として、パリのポルト·ド·ヴェルサイユ見本市会場の屋上で、2020年から実施されている「NATURE URBAINE」があります。
※「NATURE URBAINE」HP : https://www.nu-paris.com/

inexhibit ,「The word’s largest rooftop urban farm sits on top of a Paris building」https://www.inexhibit.com/case-studies/the-words-largest-rooftop-urban-farm-sits-on-top-of-a-paris-building/ (参照 2022-03-20)

広さは14,000平方メートルであり、約30種類の野菜や果物が育てられています。夏の盛りには1日500キロのトマトを収穫した日もあるというほど。
バジルや、バナナの香りのするミント、ほかにもハーブ野菜やいちご、ズッキーニなどが栽培されています。
併設したレストランでは、収穫したての野菜を食べられ、一部のスペースをレンタルすることもできるそうです。また、その野菜は、製品販売も行っており、この場所に来ると、農薬を一切使用していない野菜が手に入るのです。

日本・東京で進められている活動

近年、東京においても、都市型農業が進められています。
株式会社博報堂による研究機関「UNIVERSITY of CREATIVITY(ユニバーシティ・オブ・クリエイティビティ)」に、
JR東日本が展開する山手線ブランド「東京感動線」、プランティオ株式会社、株式会社プロトリーフが参画し、
2021年より実施されている「Tokyo Urban Farming」を見てみましょう。
※「TOKYO URBAN FARMING」HP :https://tokyourbanfarming.jp/#vision

「Tokyo Urban Farming」は、ビルの屋上などを活用し、実際に都市に農園を創っています。また、ファーミングイベント、ワークショップも実施し、都市に住みながらも農業に触れることができます。また、「grow SHARE」を通して、育て方のアドバイスや収穫時期など、学びながらスペースの一部をシェアすることができます。

都市に住みながらも、自らが生産に関わり、新鮮な野菜や果物を食べたり、売ったりできる生活が広がりつつあるのです。今後、以上のような活動は、様々な場所で行われるようになるのではないでしょうか。

まとめ

都市型農業は、これからの「スローライフ」の姿を描く、一つの手がかりなのではないでしょうか。従来の地方で生産された野菜や果物が都市に大量輸送され、消費されるというサイクルは、生産者が見えづらく、環境負荷も高いため、限界があると言えるのではないでしょうか。
都市に住む人は、その分断される生活から逃れ、愉しく生活を送るためにも、さまざまなイベントにアンテナをはり、積極的にそのような活動に参加してみる、または調べたり、何か行動してみることがいいのかなと思います。

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