カサンドラ症候群脱却のための4ステップ その③定型発達の特性を理解する 『間接表現』『定型発達症候群』

前回までの記事ですでに定型発達の特性について触れていた部分もありましたが、改めて今回の記事でまとめていきたいと思います。

さて、今あなたはもしかしたらこんな疑問を抱いているかもしれませんね。
「定型発達に特性なんてあるの?」
「発達に凸凹はないわけだし、定型こそ人によって全然違うじゃない。それをひとくくりの特性で表せると?」
などなど。

【定型発達らしさ】

定型発達者には定型発達らしさというものがあります。
それはある意味、定型発達者と非定型発達者(ASD)を見比べることで見えてくるものかもしれません。
しかしやはり、属性としての定型発達は存在しますのでしっかりと理解することが大切で、それによってASD者との関係がよくなることに繋がっていくのです。

□感情中心思考

以前にも記事で書いているので簡単に説明します。
この思考を持つ人は感情の動きによって行動に繋がる傾向があります。

業績を上げることが求められる営利企業(株式会社など)においても、必ずしも物理的成果が最優先されると考えているわけではなく、集団の和を重んじることに価値を置くことが少なからずあります。

□情動的共感を大切にしている

こちらも以前の記事で書いていますので簡単に。
気持ちの慮りである情動的共感をとても大切にしています。
「そんなの当たり前では?」と思う方もいるかもしれませんが、多数派ではありますが当たり前ではなく、そういう価値観であるということです。

特に日本では気持ちを慮ることが尊いとされ、察し合いの文化が根付いています。
時に煩わしく感じる人も多いようですが、それでも日々お互いにこれを求めあっています。

多数派の価値観を持って生まれ多数派の環境下で育つと、それが当たり前のように感じてしまいがちですがそこに落とし穴があります。
当たり前と思うことが本当に当たり前なのかを自身に問いかけることは、定型発達者にとっては自身の思考のくせや偏りに気づく良い機会となりますので、ぜひ習慣にしてみてほしいと思います。

定型発達はASDと違い思考が自動で処理されるので、そこに意識を向けて手動で深堀りしていくのはなかなか大変な作業かもしれませんが、定型発達者が定型発達という特性を理解することは非常に重要で、ここをクリアできれば確実にストレスが減り生きやすさに繋がります。

簡単にと言っておきながら長くなってしまいました。

□間接表現を多用する

今回の本題ともいえるテーマが間接表現です。
間接表現と気づかずに使っているパターンも多いと思いますので、以下からしっかり見ていきましょう。

【間接表現とは】

間接表現とは、ある言葉を使わずにその言葉の意味を伝える表現です。
これを使うことによって情緒的な雰囲気を持たせることができます。

例えば、恋人が「次合えるのは一ヶ月も先だね」と言ったとき、寂しい気持ちを寂しいという言葉を使わずに伝えることができます。

親子間でよくありそうな例では、「宿題やった?」「ごはんまでにお片付けできる?」などもあります。
前者はやったかどうかの確認ではなく「やってないならやりなさい」という意味ですし、後者は可能かどうかの能力を聞いているのではなく「片付けをしなさい」という意味です。
直接表現だと𠮟責のようになってしまうので、やんわりと間接表現にしているのです。

しかしながら相手がASDの特性を持っている場合、言葉を字義通りに取りますので、恋人の例では「そうだね(なにを分かり切ったことを確認してるんだろう?)」や「正確には29日後だよ」といった返事になるかもしれません。
親子の例では「宿題やった?」に対して率直に「やってない」と答えることで反抗的な子と誤解を招いたり、「ごはんまでにお片付けできる?」に対しては「できるよ!」と答えたが片付けをしないという状況を招いたり、となるかもしれません。

つまりASD者に意図を伝えるときは間接表現を使わずに直接表現を使うように心がけることが必要になってきます。

そんなときに意識してほしい伝え方があります。
I(アイ)メッセージです。
これは主語を『私』にする伝え方です。
例えば夫婦喧嘩をしてしまったとき「なんであなたはいつもそうなの!!」と怒っているのならばそれはYOUメッセージです。
これをIメッセージにすると「私はあなたにそのようにされると悲しい気持ちになります」になります。
さすがにこんなに堅苦しい必要はありませんが。


【定型発達の特性も強すぎると生きづらさにつながる】

定型発達の察し合いや気遣い心遣いの文化は優しいコミュニケーションの世界とも言えますので、とても優れた社会を形成していると言えるのではないでしょうか。
しかしブラック企業などの問題が叫ばれる昨今においては、定型文化の弊害ともいえる歪みが顕在化してきています。

あなたは定型発達症候群という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
ASD側から定型発達を見たときに感じる違和感を少し揶揄するような形で表現した言葉ですが、以前NHKでも特集されるほどに注目を集めた概念であり、定型発達について知り深く考えるとっかかりになるでしょう。

まずは以下のNHKが公開したチェックリストを見ていきましょう。

□暇なときはなるべく誰かと一緒に過ごしたい
□集団の和を乱す人を許せない
□社会の慣習にはまず従うべきだ
□はっきりと本音を言うことが苦手
□必要なら平気でウソをつける

以上のチェックリストに一つでも当てはまったらあなたは『定型発達症候群』かもしれません。

これだけだと特に大きな問題のある特徴ではないと思われるかもしれませんが、アメリカの自閉症協会の資料によると、

・非常に奇妙な方法で世界を見ます。時として自分の都合によって真実をゆがめて嘘をつきます。
・社会的地位と認知のために生涯争ったり、自分の欲のために他者を罠にかけたりします。
・テレビやコマーシャルなどを称賛し、流行を模倣します。
・特徴的なコミュニケーションスタイルを持ち、はっきり伝え合うより暗黙の了解でモノを言う傾向がある。しかし、それはしばしば伝達不良に終わります。
とあります。
これでも比較的マイルドな口調のものをチョイスしましたが、この資料の表現(見る角度の違い)から定型発達を見ると、極端に定型発達思考に偏った人ばかりの世界がいかに問題を孕んでいるかが見えてきます。

そう考えるとASDも定型も価値観に優劣はなく違いがあるだけであるということが見えてくるのではないでしょうか。
この世界は多数派により多数派が過ごしやすいようにデザインされています。
そのことに気づく多数派が増えることを願うとともに、この記事がその一助となれば幸いに思います。

ご自身のカサンドラ脱却のためのASD理解、そしてASD理解の鏡としてぜひ定型発達理解を深めていって下さい。
気づいた先には必ず笑顔が待っています。

最後までお読みいただきありがとうございました。


【役立つ1冊】 『妻のトリセツ』黒川伊保子編著
ASDは究極の男性脳ともいわれることから、定型発達を理解するには女性脳について学ぶことが役にたちます。


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