カサンドラ症候群脱却のための4ステップ その②ASDの特性を理解する その③定型発達の特性を理解する 『共感の種類』

【ASDの人は他人の気持ちが分からない?】

今回はASDの特性でも定型発達の特性でもないのですが、両者で使い方に大きな差がある『共感』についてお話ししたいと思います。
前回の記事でASD者の『事実中心思考』と定型発達者の『感情中心思考』についてお話ししましたが、この二つの思考を理解するうえで重要なのが二つの共感の種類について知ることです。

ASDの人は他人の気持ちが分からないのではないかと言われることがありますが、それは誤解です。
つまり所謂共感の表現が乏しいからそのような評価になるわけですが、実は共感には『情動的共感』と『認知的共感』の二種類があるのです。


【情動的共感とは?】

情動的共感とは気持ちの慮りです。
普段私たちが何気なく「共感」と言っているものが情動的共感のことであると考えて差し支えないでしょう。


【認知的共感とは?】

認知的共感とは事実の洞察(物事を正しく見通し解決方法を探ること)です。
見たものの状況をとらえる力といった感じなのですがイメージが湧きにくいかもしれませんね。

ではそれぞれの強弱を極端につけた例を見てみましょう。


□極端に情動的共感が強く、極端に認知的共感が弱いと

『思いやりがあるけどトンチンカン』です。
感動して泣いている人を見て「大丈夫?どこか痛いの?」と声をかけるようなことになります。

□極端に認知的共感が強く、極端に情動的共感が弱いと

『正しいことを言うけど冷たい』となります。
仕事でミスをしてしまった人に対して「ミスの原因は○○だね。直したほうがいいよ。」と言ったり。

また、ASDとカサンドラの日常にありそうなシーンでは、「昨日キミが使ったフライパンの汚れ、取れてなかったよ。ちゃんと洗いな。」といった言葉になるかもしれません。
ちなみにASD者の場合、過去を振り返って責めたい気持ちや嫌味で言っているのではなく、あくまでも未来に同じ失敗をしないためであったり、不衛生なためにあなたが健康を害することがないようにと思っての発言の可能性が多分にあるということを心に留めていただければ幸いに思います。


【ASD者にも情動的共感がある】

ASD者は認知的共感が強く情動的共感が弱い(ない)というわけではありません。
認知的共感は正解が誰でもだいたい同じか近いものになりますが、情動的共感は人それぞれで、定型者同士だとある程度近いものがありますが、ASD者と定型者だとだいぶ差がある場合もあります。
そのため、自分がされて嬉しいことをしたのに相手が全然喜んでくれなかった、という行き違いが起きることがあります。
また、ASD者は相手の内面を把握することが苦手なため、価値観の違いに輪をかけて定型者の気持ちに寄り添うことができなくなってしまうのです。
そのため所謂「ASDの人は他人の気持ちが分からない」と言われる現象が起きます。
しかし実際、イギリスの研究者サイモン・バロン=コーエンによると、ASD者は誰か困っている人がいると優しく接する人が多いということです。


ということで今回は2種類の共感についてお話ししました。認知的共感は普段共感として意識することがないかもしれませんが、優しさが根底にあることも多いはずですので、今後のコミュニケーションのシーンで参考にしていただければと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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