心地よいSCって??

 先日、某研究会で「心地よいSC(ショッピングセンター)とは何か」をテーマに、最近の流通トレンドについてお話する機会があり、普段の取材活動のなかで得た情報と感じたことを一時間ほど話してきました。

 話下手なので緊張するかと思いましたが、存外緊張することなく、逆に、頭に詰め込んでいった内容を時間がある限りアウトプットしようと必死だったので、途中、結構、端折ってしまいました。

 ちなみに、以前、テレビの生放送に出演したときも、本番ではあまり緊張しませんでした。なぜなら、テレビの生番組では、スタジオにいる幾人もの人たちがそれぞれの役割を果たすことで番組が成立します。リハーサルのときに、フロアのアシスタントディレクターがきびきびと動いているのを見て、そのことに気づき、腹が座りました。

 ただ、先日の講演では、時間配分がおおまかだったために、十分に伝えられなかったと反省しています。講演のプロの方からは「時間の配分を考えて、必ず練習すること」と、アドバイスをいただいていたにもかかわらず、資料のスライド作成に思いのほか時間がかかり、練習をせずに望んだのが、失敗の原因でした。

 で、どんな話をしたのかというと

 研究会の参加者は、ショッピングセンターのディベロッパーやテナントの責任者です。SCのプロを前に、素人の私が話せることはほとんどありませんが、唯一話せることといえば、一消費者として顧客目線で考える「心地よいSC」とは何かということです。

 あくまで主観的な内容ですが、立ち場の異なる人間の意見としてお聴きいただけ、私にとっても有意義な時間でした。

 そこで、当日の講演内容を一部公開いたします。

 同じテーマでの講演依頼が今後くる可能性はゼロですし、時間の経過とともにどんどん中身が古くなっていくので、もしご興味のある方はご笑覧ください。

 以下、資料の内容と、発表者ノートの一部です。

 3回に分けて公開いたします。

【本日の内容】

・ひとつめは、話題の商業施設に見る心地良い取り組みとは

 パルコヤ上野店、ギンザシックス、枚方Tサイト、京都タワーサンド
 について、最新情報も含めてお話しします。

・2つめは、ファッション業界のオムニチャネル戦略

 ショッピングセンターにとっては脅威となるネット通販に対抗するために、リアル店舗に求められることは何なのか、最近オープンしたジーユーのデジタルストアとパルグループのSNS活用についてお話ししたいと思います。

・3つめは、今年ヒットしたモノとコト

 大阪のバッグメーカー「アネロ」と、鯖料理専門店「SABAR」について、最近の展開をお話しします。

・4つめは、異業種に見る集客のヒント

 ホテル業界と、銭湯について

・最後に、マスコミが取り上げたくなる情報について簡単に説明いたします。

【1.話題の商業施設に見る、心地よい取り組みとは】

ここでは、キーワードを3つあげてみました。

・1つめは、やはり、コト消費にいかに取り組んでいるか
 「モノ消費からコト消費へ」というフレーズは、みなさん、耳にタコができるくらいお聞きになってると思いますし、コト消費によっていかに購買意欲を喚起させるかに、日々取り組んでおられると思います。

 ただ、コト消費といってもさまざまな解釈があると思います。

 私が一消費者として、個人的に感じるのは、
 何かを体験して感動したり、記憶に残ったりした結果、関連するモノを買いたくなったり、またその場所に行きたくなったり、そしてSNSなどの口コミで拡散してしまうような消費行動だと思います。

 最近よく言われていることですが、いまは「所有の欲求を満たす」時代ではなく、「共有すること」でも十分満たされたり、「共感してほしいという欲求」の時代です。商品やモノにひもづいたコトを体験することに楽しみや喜びを感じる人が増えているのだと思います。

 ですから、単に、イベントを開催すればいいというのではなく、
イベントをきっかけに、意識や生活スタイルが変わったり、新たな行動につながったりするようなコトや体験には、大変興味がありますし、可能な範囲でお金も使うようになります。

・そして、2つめは、他の地域の商業施設にはない、その地域ならではの文化や歴史を背景とした、地域性を感じられる取り組みはあるのか。

 一時は、どこの商業施設に行っても同じようなテナントが入っていて、おもしろみが感じられなかったのですが、そこにしかないテナントや取り組み、サービスなどがあれば、消費者は足を運ぶはずです。
 地元で支持されるテナントを積極的に導入するのはもちろんのこと、その地域の文化や歴史、産業を背景にした、地域色を感じられる取り組みがあれば、地元客だけでなく、観光客を含めた広域からの集客が可能になると思います。
 インバウンドにしても、最近は都心部より地方都市に足を延ばしているわけですから、地方創生の面でも商業施設の役割は大きいと思います。

・3つめは、そこに働きに来る人を含めた地域の生活者が、毎日立ち寄りたくなるようなサードプレイス的な空間、サービス、商品があるかどうかです。
 やはり、地元民に支持されなければ、ビジネスとして安定しないので、地元民のライフシーンにあった、なぜか足が向いてしまったり、滞在したくなるような場の提供は必須だと思います。

 そんなことあんたに言われなくても、わかってますよ、とみなさん思っておられると思いますが、知識として知っていること、考えていることと、実際に現場で実現することとは大きな違いがあるので、このキーワードがなにかのヒントになれば幸いです。

 先日も、ディベロッパーの方がこうおっしゃってました。
「もう、コト消費は終わったっていわれてますよ。だから、次のことを考えないといけないんですけど、まだわからないんですよね」と。

 この方のご指摘はある意味、正しいのかもしれませんが、商業施設にとって大切なのは、お客様が顕在的あるいは潜在的に望んでいることを先に読み取って、心地よい商業施設を作ることだと思うので、「コト消費」などの言葉に踊らされないことも大切だと思います。

 ちなみに、11月に上梓された川上徹也さんの著書「コト消費の嘘」のなかでも似たようなことが指摘されていました。
 著書のなかでは、「コト消費とは、物語を売る、ストーリーブランディングの手法に近い」とか「コトとモノをつなげる消費を作っていくことが大切だ」「それを“コトモノ消費”と名付けました」とも書かれています。

 7つのタイプ別に、コトからモノへとつなげる方法が書かれていて参考になるので、一読の価値があると思います。

 次回は、具体例として、東京・上野御徒町エリアにオープンした「パルコヤ」からみていきたいと思います。


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