あの日の憧れ

私は昔、ティンバーランドにめちゃくちゃ憧れていた。

毎日レゲエを聴き、ミニスカートをはいてパンツを見せびらかし、そのことを何とも思っていなかった若いとしか言えない頃、十六、十七歳くらいの話である。

そのころ、WOOFIN' という雑誌が発刊されていた。
いわゆるB系ファッションの雑誌で、女子版にWOOFIN'girlもあった。
どちらも現在は発刊していないが、私はその頃、その雑誌のファッションに夢中だった。

ステッカーをきらきらさせたニューエラキャップを被り、ぴちぴちのタンクトップを着て、ゴールドチェーンのアクセサリーをじゃらじゃら付けて、超ミニのプリーツスカートを履き、ティンバーランドのひざ下丈ブーツで決めるのが私の最も理想とするところだった。

でも、ティンバーランドブーツは高級品だ。
当時時給七百円代で働いていた私にとって高嶺の花。
ニューエラキャップだって当時の私には高かったのだ。

CDも欲しいし、でもティンバのブーツ欲しい。
遊びたいし、でもバイトしないと買えない。

様々な葛藤を乗り越え、当時の私はようやくティンバーランドのひざ下ブーツを手に入れた。
そのときの喜びは今でも思い出せる。
嬉しくて嬉しくて、そればっかりずっと見ていた。
最初なんて玄関に置いて家族に汚されるのが嫌だから、毎回部屋に持って帰っていた。
それくらい嬉しかった。

「次冬はこれで決まり」と書かれた雑誌を見て欲しくなったのだから、大体初秋のことである。
私が手に入れたのは翌年の夏。
全然トレンドには間に合っていなかった。
ロングブーツは明らかに季節外れだった。
それでも良かった。
「ティンバのブーツ履く私」が格好良いと私が思いたいから履いていた。
そのためにミニスカートばっかり履いた。
どれだけ暑くても、お洒落は忍耐だ、と自分に言い聞かせていた。
雑誌のアイテムが手元にあるだけで、なんか無敵になれたような気がしていたのだ。

ティンバーランドのブーツは今でも好きだ。
流石にファッション的に履くことはもうないけれど、靴屋さんに行くとふと欲しくなってしまう。

私はこれからもきっと、ティンバーランドのブーツを見る度にあの頃のことを思い出す。
そしてこそばゆい気持ちになる。
頑張って買った当時の私を褒めてあげたい。

頑張ってくれて、ありがとうと。

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