甘栗と生栗

先日ふと甘栗が食べたくなった。

出掛ける用事があった旦那に「ついでに甘栗買ってきて」と頼んだ。
「むいてあるやつ?」と聞かれたので、「むいてるやつは高いから、むいてないやつで良いよ」と答えた。
旦那は「分かった」と返事をし、その日は何も買ってこなかった。
忘れたんだな、と思い、何も言わなかった。
別に嗜好品だし、なくて困るものでもない。
翌日私は自分でスーパーに行った際、むいちゃってある甘栗を買って帰って来た。
一人で美味しくいただいた。
私の中で、それで話は終わっていた。

ところが、その二日後、旦那が買ってきたのである。
甘栗ではなく、生栗を。
差し出されたネットを受け取った私の衝撃をご想像頂きたい。

「え?」
「え?」
「だって栗買ってきてって言ったじゃん」
「いや、私が言ったのは甘栗だよ」
「え? だってむいてないやつって」
「むいてない、殻付きの甘栗だよ」

二人で「ああー」ってなった。
日本語って難しい。
ちゃんと伝わっているつもりで、お互いすれ違っていた。
コントかよ。

コントならここで話を終わらせてもいい。
でも、うちには生栗がある。
絶対にむいちゃった甘栗より高い国産の生栗は、旦那の善意で我が家に辿り着いたのだ。
無駄にするのは申し訳ない。

かといって、栗を調理したことなんかない。
レシピを調べて途方に暮れた。
美味しそうなものほど調理がめんど……難しい。

そして今日、私は栗を茹でた。
身の丈にあった調理法を実践した。
それでも二時間半かかった。
茹でるのに一時間、一時間半で、さほど手間はかかってないので偉そうなことは言えないけれども。

半分に切って、スプーンで食べた。

「よつばと!」という漫画の中で、お隣さんとの綾瀬家が実践していた調理法。
恵那ちゃんがスプーンで食べてたなあと思いながら食べた。
もちろん美味しかった。
ちゃんと成功はしていた。

茹でるだけで失敗するほどミラクルな腕は持ち合わせていない。
面白くなくて申し訳ない。
でも、これ以上のスキルもない。
だから今後は甘栗を旦那に頼むとき、少し高くても「むいちゃってあるやつ」を頼もうと思っている。
食欲の秋に起きたすれ違い。
日本語って、難しいのである。

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