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役割を失ったままの手紙/野村在「君の存在は消えない、だから大丈夫」

銀座にある資生堂ギャラリーの野村在さんの展示「君の存在は消えない、だから大丈夫。」を見に行った。地上から地下2階ぶんくらいの階段を降りた。深いところにあるギャラリーの天井は高く、そこから乳白色の透けた帯状の紙が垂れていて、床の上で山の形をして積もっている。正確には、積もり続けている。紙は灰色の機械から規則的に、かち、かちと刻まれる音と動きを重ねて出力され続ける。そのリズムは人間の脈拍のリズムに設定されているらしい。 左手の壁にはアクリルボックスが3つかかっていて、それが事前

    • 私という言葉は人が人の形を保つためにあるように感じる

      • 書き留めること ヤケになってしまわないために

         私の日記はiPhoneのメモに日付と内容を書き、一ヶ月ごとにコピー紙にプリントして、クリアブックに閉じてつくるデジタルな日記だ。ゴシック体の文字が整列している平滑なコピー用紙には、あまり日記の雰囲気を感じない。  高校生のころはほぼ毎日手書きで日記をつけていた。年に一度くらい読み返す。  とても読みにくい日記だ。字は汚いし、内容にまとまりがない。同じようなことがだらだらと繰り返されている。読む人(未来の自分)に対する意識や意図がまったくない文章だ。しかしその、なにかを伝え

        • キュビズム展-好きな作品たち-

           上野公園にある国立西洋美術館で開催している「パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展—美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ」を見た。パリにあるポンピドゥー・センターから借りた絵画と国立西洋美術館所蔵の作品から、キュビズムを辿るという展示だ。  じっくり見ると90分以上かかりそうだが、時間がなかったので40分程で見た。展示は14の章に分かれていて、章ごとにボードで説明がされているが、そこで読んだ内容のほとんどはもう頭から消えている。  なので、この文章は

        役割を失ったままの手紙/野村在「君の存在は消えない、だから大丈夫」

          言葉をとどめる

           誰かと喋っている時、自分が発する言葉に違和感を感じるときがある。昔からずっとある。  そんなとき大抵、「なんか違う言葉」のまま話を進めてしまう。自分の発言に対してなんか違う、と思うのはふたつの私があるからだ。ひとつは、自分が思っていることを相手に伝えられたらいいなと思う私。もうひとつは、無理に言葉にしようとする私。無理に言葉にしようする私は、結局気持ちや感覚が伝わることを願う私を覆い隠してしまう。 ˚✧₊⁎⁺˳✧༚ 私たちは、カフェでとある映像作品の話をしていた。常設

          言葉をとどめる