見出し画像

長期的な成果を考える

僕は研究人なので普通のビジネスマンとは異なるかもしれない。しかし,外部の方々との交流が多く毎週メールやミーティングは欠かせない。そうした業務も含めて研究とされている。今回は業務内容に問わず,仕事に対する考え方について書いてみる。

まず,僕は仕事が好きだ。僕のやっている仕事は自分の考え方が直接的に反映されるのでやりがいがあるし,やった分だけ論文や学会,はたまたメディア露出という形で成果が出るので楽しい。やればやるほどやりたくなってしまう。時には家に帰ってもずっと考えてしまい,寝付けないことも多かった。しかし,頑張りに応じて成果が出るため,さらにのめり込んだ。

そんな生活を続けているとクローン病という難病になった。潰瘍性大腸炎と並びIBDと呼ばれる消化器系の病気である。潰瘍性大腸炎は安倍元首相やオリックス・バファローズの安達了一選手,短距離の桐生選手なども患っている自己免疫疾患による病気である。生活習慣,特に食生活を見直す必要があると医師に言われた。

投薬や食生活の改善に取り組んだ。症状がひどい時はペースを落としながらも休まなかった。そして治癒が進み人並みの食生活ができるようになると,前に頑張っていた自分が忘れられずに再び仕事に没頭する毎日を送った。ただ,以前とは異なり,無理すると体調を崩すようになった。その度に仕事にブレーキをかけて,ストレスを感じながらも仕事以外の時間を作った。やればやるほど成果が出ることに対して自分の報酬系に歯止めが効かず常に興奮している感じだった。頭では,仕事は身体を壊してまでするものではない,とわかっている。しかし休んでいる時も心の奥底では,今やれば成果が増えるぞ,と思ってしまう。そんな日々が続いた。

だらだらと健康とは言えない生活を続けていたら,偶然にも虫垂炎になって入院せざるを得なくなった。初めてちゃんと長期的に休んだ。そして,これまでの体力低下がたたったのか治癒に時間がかかりなかなか復帰できず,多くのチャンスを逃した。その時から,このまま仕事できなかったら一生の成果はここで終了する,と考えるようになった。うさぎとカメの童話はよくできている。ゆっくりでも健康で着実に進んでゆく者の方が大きな成果を挙げられる,と心の底から納得できた。

短期的な成果を見ると,死ぬほど頑張った方がいい。けれど,それは長期的に見ると実に非効率である可能性もある。健康を犠牲にして続ける様を見て,未来の自分があざけ笑っているかもしれない。長期的な成果を考えて自制すること。それが僕の仕事の心がけである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?