フットゴルフ大会に知識・経験ゼロで出場し、飯田真輝選手とラウンドした男の絶望、そして救済
フットゴルフという競技がある。
名前の通り、ゴルフボールの代わりにサッカーボールを蹴り進めるスポーツである。フットゴルフ専用の大きなカップへとボールを沈めたら次のコースへと進む。
フットゴルフの名前は知っていたが、また謎のマイナー競技が誕生したのかなと思った程度で自分でやってみようとは思わなかった。
そんな中、栃木SC&ヴィアティン三重サポーターのかずみさんからフットゴルフの大会があるから出てみないかと誘われた。しかし、ゴルフだけはやらないと心に決めていたこともあり、あまり乗り気ではなかった。ゴルフはとにかくお金がかかるし、丸一日潰れてしまうと聞く。細かいマナーにもうるさいので、「自由人」たる自分とは相性が悪いと感じていた。
自称「自由人」の中村は、31歳まで大学院にいて、その後はフリーライター。兼業で書店員、タクシードライバーなどを経て、現在は出版社を起業し本を作っている。
↓中村が書いたかずみさんの紹介記事(無料公開)。
ゴルフには苦手意識があったものの、今回はフットゴルフである。正当なるゴルフではなくフットゴルフだ。最初はピンと来ていなかったのだが、何度か誘われているうちに、「フットゴルフならできるかも」という気になってきた。有名人の参加者も多いようで、人見知りの自分としては逃げたくもなるのだが、頑張って参加してみることにした。
今大会の正式名称は「第一回スポーツビジネス交流会フットゴルフオープン2022」である。今までの自分ならビジネス交流会と聞いただけで回れ右をしていたのだが、どういうわけだか会社の社長になってしまったのでこういう場所に行くのも大切なはずだ。もしも、フットゴルフで大活躍できたら、一躍有名人になって仕事に繋がるかもしれないのだ。
頑張れ、俺!
頑張れ、社長!
孤独なゴルフ場と恐怖の組み合わせ表
朝早起きする自信がないのと、自家用車が車検に旅だっていたので宇都宮に前泊することにした。本当は夜の宇都宮をすたすたぐるぐると満喫したかったのだが、仕事が押して出遅れてしまったので南大門のサウナに滑り込むのが精一杯であった。
朝方、宇都宮駅から電車に乗り、氏家駅へ。セブンハンドレッドクラブというゴルフ場へとたどり着く。
受付の手伝いをしていたのは、ヴィアティン三重サポーターのぴちょんさんで、なんと三重から来たらしい。
さて、ゴルフ場のクラブハウス。まったく勝手がわからず、少々心細い。もっとも、雰囲気はアウェイではなかった。本来ならゴルフクラブを抱えた襟付きシャツのおじさんたちが集まっているのだろうが、この日はみんなスポーツウェアを着てサッカーボールを抱えていた(この日は貸し切りなので何でも良かったのだが、普段はフットゴルフ時も襟付きの服を着ないといけないそうだ)。
ぼくのように単体で参加する人は少ないようで、みんな知り合いと話している。耳を澄ませてみると、フットゴルフを普段からプレーしている人も多いようであった。サッカーとゴルフという奇抜な組み合わせを楽しむ大会というイメージがあったのだが、フットゴルフという競技に本気で取り組んでいる選手も多いらしい。
そんな中、この日参加していた唯一の知人である上野直彦さんがいたのでほっとして話しかける。上野さんは、大宮アルディージャの番記者を務めたことがあるサッカーライターで、現在はサッカー漫画『アオアシ』の原作者として名を馳せている(他にも色々なところで有名人)。
『アオアシ』はサッカーを知らなくてもとにかく面白い。かといって子供だましではなく、日本の現場取材に加えて、欧州の最先端まで踏まえているため、サッカー教養書としてもトップクラスなのでとにかくお勧め。
上野さんのお話を聞いていると、フットゴルフを普及しようという取り組みはかなり本格的に行われているようで、W杯まで存在しているらしい。しかも、2020年には日本での開催が決まっていたのだが、コロナ禍の影響で延期・中止になってしまったとのこと。しかも、この日プレーするセブンハンドレッドクラブで、開催される予定だったのだそうだ。つまり、今いる、ここである。現在、日本のフットゴルフ界は再誘致に向けて動いているとのこと。
調べてみると日本でも約20カ所のゴルフ場でフットゴルフをプレーできるようになっているらしい。フットゴルフは、基本的にはゴルフ場を利用している。つまり、フットゴルフができるゴルフ場が20カ所程度あるということなのだ。
フットゴルフという新しい競技が、伝統あるゴルフと共存できるものなのかと首をひねったのだが、ゴルフコースの合間を縫うようにうまくコースが設置されており、早朝から回っているゴルフプレイヤーがあがった後に、フットゴルフをプレーするようになっているようだ。ゴルフには丸一日潰れる面倒なスポーツというイメージがあったのだが、スピードプレーを意識し、半日で終わるように効率化するというトレンドも生まれている。
バブル期のゴルフブーム以後、少なからず経営に苦労していたゴルフ場にとっては、半日空いてしまったゴルフ場の活用できるため、フットゴルフプレイヤーの登場は歓迎されているとのこと。
日本でプレーできるのは約20カ所だが、アメリカでは約1000カ所でプレーできるとのことだ。もしかしたら、この競技はマイナースポーツには終わらないかもしれない。
(アメリカのコート数についての記述あり)
無言で調べ物をしながら周囲を観察するという根暗なライターらしい過ごし方をしつつも、少しずつ気持ちが盛り上がっていくのを感じる。なかなか興味深い競技である。
しかし、ラウンドを回る組み合わせ表を見て、途端に青ざめた。
ぼくが回る組は、主催者の軍司和久さんがいて、そういう意味では安心だったのだが……。
その次に“衝撃的な名前”が書かれていた。
飯田真輝
所属
奈良クラブ
応援しているクラブ
松本山雅FC
飯田真輝だと……。
反町康治監督率いる松本山雅FCの大躍進を支えたCBである。最後に見たのはいつだったかなと思い出すと、コロナ禍の前、松本市にあるサンプロアルウィンスタジアムでのこと。
この日は、まだ未熟だった前田大然選手がことごとくシュートを外し、長身FWの高崎選手も外しまくっていた。このまま0−0で終わるのかなと思っていたところ、名手セルジーニョがCKをあげる。それを頭で押し込んだのが飯田真輝選手であった。アルウィンの光景がよみがえってくる。
止まらねぇ俺たち松本
暴れろ荒れ狂え
松本山雅のチャントが頭に浮かんでくる。
いやいやいやいやいやいやいやいや……。
いくらなんでも飯田真輝選手と一緒にラウンドするとか無理でしょ……。ガチガチのプロ選手、Jリーガーと一緒に、小太りの40歳のおじさんが何をしようというのか。
それでもまだ、サッカーをプレーしていたときなら良かった。しかし、最後に11人制サッカーをしたのはもう5年前、いや6年、7年だろうか。とにかく思い出せないくらい前だ。そして体重は18kgも増えている。
18kgの重さ。子猫が2kgくらいなので、体中に子猫が9匹もまとわりついている状態である。
終わった……。ハイレベルな組の中で、一人だけ上手にキックできずに、足を引っ張る絵が浮かぶ……。気が重い……。
だって、アルウィンの中にいた選手だよ。あっち側の人だよ。いくらなんでも無理だって……。
青ざめていると、目の前でリフティングをしている長身の男性が目に入る。あの身長、体格、チリチリヘアー……。間違いない。飯田真輝選手だ。
華麗なる参加メンバーと小太りの私
どうしよう……。話かけてみようか……。実はぼくは、選手と話したことはほとんどない。サッカー記事を多数書いては来たものの、観客目線で記事を書くことを心がけていたからだ。練習場のファンサービスなども行ったことがない。選手と何を話せばいいのだろうか……。
とはいえ、同じ組だからいつかは挨拶するわけだし、正直言ってかなり暇だったので勇気を出して話しかけてみた。
「あ、あの!飯田さん!!あの、同じ組なんです!!えっと、あのぼく、サッカーの記事とか書いてて、アルウィンもよく行ってて、飯田選手のチャントも歌えます!!」
憧れのアイドルに初めて会った高校生のようにアワアワしてしまった。そして、押しかけた勢いで一曲歌った。
飯田真輝
おまえが砦さ
勝利のために
強く強く
松本山雅サポーターが愛する名作チャントである。飯田選手は照れたのか「やめてくださいよー」と言って目をそらしてしまったのだが、隣にいた奥様はすごく喜んでくれて、勢いで仲良くなることができた。この日、ぼくが自分から話しかけたのは同じ組の人を除くと、2,3人程度である。この程度の社交性の人間が、スタジアムで見た選手に話しかけるのは本当に勇気がいるのだ。
酒を……。酒をください……。
この日は、飯田選手だけではなく、浦和レッズや大宮アルディージャなどに所属していた加藤順大選手、水戸ホーリーホック、横浜F・マリノス、ヴァンフォーレ甲府などに所属していた小椋祥平選手、横浜F・マリノスや長野パルセイロなどに所属していた天野貴史選手も参加していた。
ひえー……。
ぼくはあまり詳しくないので恐縮なのだが、スポーツビジネス界隈では有名な方もチラホラ。あ、Twitterをいつも拝見している西脇智洋さんともコロナ禍ごしのご挨拶。
プレーを始めたあとの話だが、前の組にいる女性、どこかで見たことがあった。身体の運びをみるとプロフットゴルファーなのかなとも思ったのだが、“キャピキャピ”しているので選手ではないようだ。どこかで見たことがあるのだが……。
後でわかった。三菱重工浦和レッズレディースの佐々木繭選手だ!!西葛西出版&OWL magazineから出した『サッカー旅を食べ尽くせ!すたすたぐるぐる埼玉編』にも登場する選手である。
ラウンド後に勇気を出して話しかけて献本しようと思ったのだが、読み返してみると途中出場で得点を決めた佐々木繭選手は1行しか書いていなかった。そもそも試合の描写がほとんどないサッカー本なのだ。素晴らしいボレーシュートだったのでもう2行くらい書いてあれば、献本した上で仲良くなれたかもしれない……。
ちなみにこのシュートを決めた選手(対戦相手のサンフレッチェ広島レジーナ公式Youtubeより)。
いざ、勝負!!フットゴルフに挑戦!!
そして時間がきた。何の時間?キックオフ?ティップオフ?用語がわからないがとにかく開始時間が来た。どうやらこの日は18コースも回るようだ。和気藹々5コースくらいを回る気楽なものだと思っていたので、改めて青くなる。18コースって——。そんなに本格的にやるとは——。
というわけで、顔をレ・ブルーにしながら回った結果どうなったのか書く。一緒にラウンドした軍司さん、飯田さん、布施さん、竹嶋さんとの会話はとても楽しかったのだが、それを詳細に書いていると字数がいくらあっても足りないので涙を呑んで割愛。
・自分、一応サッカー経験者ですから
11人制サッカーこそしばらくやっていなかったが、フットサルは普通にできるし、よほど組織化された相手との対戦でもない限りは活躍することはできる。30歳からプレーをしはじめたので細かい足技はないのだが、ディフェンスと駆け引きしながらゴールにねじ込むのが得意だ。11人制のサッカーでも、ジェラードばりのミドルシュートをたたき込んだこともある。なので、あわよくば上位を狙えるなどと企んでいたのだが……。
・ティーショットならぬティーキック
強い力で蹴り飛ばす最初のショット。一応経験者とは言ったものの、ロングキックだけはとことん苦手だった。セービングは得意だったのでGKでプレーすることも多かったのだが、ゴールキックがまったく飛ばない。止まっているボールを蹴ろうと思うと力んでしまって飛距離が出ないのだ。
さて、われわれの組で最初に蹴るのは飯田真輝選手。バコーンといい音がしてボールはミサイルのように飛んでいく。
次に蹴るのがぼくだ。ひえー……。緊張して心臓が止まりそうになりながら助走をするも、変なところを蹴ったらしくボールは左へと切れていく。
どうもボールと足のあたり方が良くないらしい。いくらなんでも昔はもう少し蹴れたはずだ。足首の角度を変えて、固定するよう修正してからは少しマシになり、飛距離は出ないもののまっすぐ飛ぶようにはなった。
インフロントおよびインステップという足の甲で蹴るキックがうまくいかないので、インサイドで強く蹴ろうと考えた。しかし、これがまったくうまくいかない。余計な力がかかっているせいなのか、止まっているボールを蹴るのになれていないせいなのか。
キック前の緊張感で体を硬くしながら、これはバスケでいうフリースローなのだと理解した。ぼくはバスケットボールもプレーしていて、サッカーよりもずっと得意なのだが、フリースローだけは大の苦手であった。ディフェンスを振り切ってシュートをしても2本に1本は入るのに、フリースローの成功率はそれ以下である。もっともこれはぼくだけの話ではなく、フリースローになると途端に入らなくなるプロ選手もそれなりにいる。
身体でわかってきた。フットゴルフはサッカーのようでサッカーではない。
では何か。答えは明白だ。
フットゴルフはゴルフなのだ。
サッカーは、ゴールへとボールをたたき込む集団競技である。一方で、フットゴルフは、ボールをカップへと入れる個人競技だ。同じようにボールを蹴るのだが、サッカーの場合は、仲間の選手へとボールを渡すパスをすることが多いのだが、フットゴルフの場合はボールを転がして止めるところまで意識しないといけない。プレー中は常に、どこにボールを止めるのかを考えなければならないのだが、これはサッカーにはない思考だ。ちなみにバスケにもラグビーにもない。カーリングやビリヤードにはある概念だ。
・あなたのハートにアプローチ!!
最初のキックがうまくいかないのはもう仕方がない。まっすぐ飛べば御の字だ。この日のうちに飛距離を伸ばすのは不可能だろう。だから勝負はアプローチである。1打目が悪くても、2打目でカップへと寄せていけばいいのだ。
2打目以降についてはまずまずであった。力むと必ずうまくいかないのだが、リラックスして打つと綺麗な球筋になる。とはいえ、うまく蹴れたからといってうまくいくとは限らないのがフットゴルフの奥の深さであった。
フットゴルフは物理学であった。サッカーは集団戦であり布陣や戦術が問われる。一方でフットゴルフは、一人で物理学的な計算をブツブツとするスポーツである。
蹴る力とベクトル(力の方向)が原動力であり、芝の摩擦によって勢いが衰えていく。それだけならいいのだが、ゴルフ場は起伏に富んでいる。専門用語だとアンジュレーションというらしい。そのため、サッカーボールがもつ前に進むエネルギーと、高低差によって生じる位置エネルギーを計算しながらボールを転がす必要がある。
強く転がすと高低差の影響が小。弱く転がすと高低差の影響が大。
2系統の力を計算しなければいけないのが非常に難しい。理論が正しくても正確に蹴るのも難しい。おそらくゴルフの理論書でこのあたりを解決する公式や定石などがあるのだろうと思うので、後で探してみようとは思う。
一緒にラウンドしたフットゴルフの匠、布施さんによると、普通のゴルフは「空中戦」で、フットゴルフは「地上戦」なのだという。要するにゴルフの場合、ボールが空を飛んでいることが多いので、風の影響などを考える必要がある。一方でフットゴルフの場合は、ボールが地面を転がっている時間が長いため、ゴルフ以上に地形をよく見る必要があるとのことだ。
「ゴルフでいうパターの延長」という解釈を聞いて、このゲームの本質が見えたように思う。ちなみに布施さんは、同じく栃木県にある那須カントリークラブの副支配人で、同クラブにフットゴルフのコースを作る仕事をしている方である。なのでこのコメントは、とても貴重な「作り手側の意見」である。
サッカーやバスケなどは対人で勝つことが求められる。一方でフットゴルフは、コースの制作者に対して勝たなければならない。コースの制作者は、簡単には突破されないように各種の「意地悪」をしかけているのだそうだ。布施さんに言わせると、プレイヤーとコース制作者の化かし合いのようなものなのだそうだ。なるほど……。
ということは、コース制作者の意図を読み、起伏や芝目を計算しながら、正確にキックすれば勝てる。そういうゲームなのである。逆に何も考えずに適当に蹴り込むと、ボールは明後日の方向に転がっていく。
コロコロコロコロ……。
理屈はわかった。しかし、脳と技術がついてこない。そして初めてのゴルフ場体験にはしゃいでしまい、カートを使わずにゴルフ場を走り回っていた。そのせいもあって、後半は軸足がブレブレになってしまった。
小学校三年生の息子にいつも言われるのがこれ。
「パパって勉強できて頭もいいはずなのに、ほんと馬鹿だよね」
・悪夢のパター!!パターパターママ!!
これをパターと呼ぶべきなのかはよくわからないのだが、要するにカップへといれるためのラストショットのことである。パターには自信があった。
さすがのぼくもインサイドキックをまっすぐに蹴ることくらいはできる。ある程度離れたところにある空き缶に当てる練習をしていたこともあるし、ちゃんと当たる。
だが、しかし!!
一番足を引っ張ったのはパターであった。ぼくのスコアは最悪中の最悪であったのだが、その最大の原因、忌むべき病根がパターであった。
目の前の大きな穴にボールを蹴り落とす。そんな簡単なことがどうしてできないのか。5メートル先の味方にパスを繋ぐことは簡単だ。しかし、5メートル先のカップにボールを沈めるのは本当に難しい。
サッカーやフットサルでパスをするときは、ぼんやりと周りを見渡しながら、パスコースをみつけたらターゲットへと意識を集中する。これを分散集中から一点集中への切り替えと表現する。これはできる。
問題は最初から一点集中をしようと思うと、意識が散ってしまってうまく集中できないことだ。
そして、カップ付近は複雑な起伏をしていて、いわゆるラフの上にあるため芝目も荒い。カップまでの最短距離を結ぶ直線を描き、正確にキックしたところで、そのまままっすぐ飛んでいくことはまずないのだ。上級者の軍司さんは、起伏を読み切ってボールを蹴り、5メートル以上離れた位置からでも一発でボールを沈めていく。
一方でぼくは、目の前なのにボールが入らない……。屈強なディフェンスを背中に背負いながらボールをキープしろと言われたほうがよっぽど気が楽だ。そして同組にいる屈強なディフェンダー飯田真輝選手は、最初こそ戸惑いもあったものの、すぐに順応して難しいショットも決められるようになっていた。
一方のぼくは、なかなか入らないので段々とキックが雑になってしまい、さらに入らないという悪循環。ダブルパーカットというルールがあって、パー4のコースでは8打で打ち切りになるのだが、後半はこれを連発してしまった。
・結果発表
というわけで、フットゴルフへの初挑戦は惨憺たる結果となった。
結果を振り返る前に、ゴルフ用語を確認しよう。まずは基準となるのがパー。ゴルフのコースはパー4とかパー5などと基準となる数値が決められている。このパーの数字よりも少なく打つのが一つの目標といえる。
1打でカップインするのがホールインワン。めったにないものらしいがフットゴルフだとそれなりに発生するらしい。
パーよりも3打少ないのがアルバトロス。翼を広げると3メートル近くになる大きな海鳥、アホウドリのことである。
パーより2打少ないのがイーグル。大型の猛禽類である鷲のことで、アメリカの国鳥でもあるハクトウワシのことだろうか。日本でいうオオワシ、オジロワシ。翼を広げると2メートル以上になる。
パーより1打少ないのがバーディー。英語のニュアンスだと「小鳥ちゃん」というような感じのようだ。
と、ここまで書いたことはぼくにはまったく関係がない。最高でもパーなのである。バーディーチャンスは何度かあったが、ことごとく外してしまったのだ。
パーより1打多いとボギー。この言葉の由来は鳥ではないらしい。イギリスの妖精のようなもので、なかなか捕まえられないレアな存在のブギーマンというものがいるらしい。これを捕まえられるほど良いスコアが残せたということでブギーとかボギーとか言い出したのが語源なのだそうな。
パーより2打多いとダブルボギー。ホークということもあるらしい。小型の猛禽である鷹のことで、ノスリのことらしい。ノスリは、ずんぐりむっくりした鷹で、森の周縁部などでよく見かける。
ここまでは知っていた。この先はあまり一般的ではないそうなのだが、野鳥ファンとしては押さえておきたい。
パーより3打多いとグラウス。雷鳥である。雷鳥と言えば、飯田真輝選手が所属していた松本山雅FCを象徴する鳥である。飛翔能力は低く、あまり移動しない。
パーより4打多いとターキー。七面鳥である。日本人の感覚でいうとニワトリが近いのではないだろうか。
パーより5打多いとグース。ガチョウのことだ。フランス人に栄養を流し込まれて肝臓をフォワグラとして食べられる家禽である。
今回はここまでにしておくが、この先も絶滅種のドードー、モア、始祖鳥。伝説の鳥であるフェニックス、ケツアルクアトルという言い方もあるらしい。なるだけ出会いたくないものであるが。
というわけで結果。
・前半
コース1 Par4
→ 4打 パー
コース2 Par4
→ 4打 パー
コース3 Par3
→ 6打 グラウス(雷鳥)
コース4 Par5
→ 6打 ボギー
コース5 Par3
→ 4打 ボギー
コース6 Par4
→ 7打 グラウス(雷鳥)
コース7 Par4
→ 4打 パー
コース8 Par5
→ 8打 グラウス(雷鳥)
コース9 Par4
→ 5打 ボギー
Par36のところを48回蹴っているのでスコアは+12である。なに前半は緊張もあったのだが、後半で巻き返せばいい。
・後半
コース10 Par4
→ 8打 ターキー(七面鳥)
コース11 Par4
→ 4打 パー
コース12 Par3
→ 5打 ホーク(ノスリ)
コース13 Par5
→ 8打 グラウス(雷鳥)
コース14 Par3
→ 5打 ホーク(ノスリ)
コース15 Par5
→ 7打 ホーク(ノスリ)
コース16 Par4
→ 4打 パー
コース17 Par3
→ 3打 パー
コース18 Par5
→ 10打 グース(ガチョウ)
後半はPar36のところ55打である。さあ、この日、集めた野鳥たちを紹介しよう!!
+2打 ホーク(ノスリ)が3羽。
+3打 グラウス(雷鳥)が4羽。
+4打 ターキー(七面鳥)が1羽。
+5打 グース(ガチョウ)が1羽。
計9羽の鳥たちに囲まれて、ぼくは天空へと飛びたった。ああ、人は昔、鳥だったのかもしれないね。こんなにも、こんなにも空が恋しい。
というわけでスコアは+31。同コースを回っていた72人中69位。別のコースを回っていた組とあわせた総合順位は153人中147位であった。
何と!!経験者とか言っていたぼくが!!147位だと!!!
成績は悪かったものの、ハンディが設定されるため、下手な人でも上位を狙える仕組みになっているらしいのだが、それをふまえても152人中134位という成績に終わった。
うーん、酷い。フットゴルフはちょっと向いてないのかもしれないな。
魂の救済・壱 「ゴルフ場に舞い降りる天使の舞」
ラウンド後は、出店も出ていたので適当につまみつつ、結果発表のセレモニーを眺めていた。流石に疲れたので、芝に寝転んでいたのだが、とある拍子に飛び起きた。
女子アナ様とアイドルが来ていたのだ。
フリーアナウンサーの中里弥菜さんと、リアル姉妹アイドルのLovin&S(ラビンス)のお二人が舞台に立った。アナウンサー様は良い。心が洗われるようだ。そして、Lovin&Sによるステージもあった。生まれてはじめてアイドルのライブを見たのだが、心が洗われるようであった。
惨憺たる結果に傷ついたハートが癒やされる……。
後からみてみると、飯田選手の奥様、Lovin&Sのお二人、中里弥菜さんは同じ組で回っていたようだ。もう一方いらっしゃいますが、載せていいかわからないので割愛!!
と思ったけど調べてみたらフットゴルファーの阿久津里奈さんだった!!
ぼくは思った。愚かなぼくは思った。
次はこの組に入れてほしい、と。
ただ、数字は残酷なものである。もしもぼくがこの組に入っていたらどうなったか……。
1位 阿久津選手 -7打
2〜5位 +25~+29打
6位 中村慎太郎 +32打
なんとビリであった。リアル姉妹アイドルにも女子アナさんにも勝てないという地獄のスコアを見て、逆に少し楽しくなってきた。
魂の救済・弐 「雷鳥は頂を目指す!」
今回のスコアは+32打。信じられないほど悪いスコアを見てぼくは笑った。大笑いした。もしかしたら、大叩きしたぼくを心配してくれた人もいたのかもしれない。が、ぼくは逆に嬉しくなっていたのだ。
この年になってできないことに出会えたことが本当に嬉しい。
ぼくは4羽の雷鳥(グラウス)を抱える羽目になった。ノスリも3羽、七面鳥とガチョウも1羽ずつ。そして身体には18kg分の猫が巻き付いている。
酷い状況だ。しかし、これ以上悪くなることはあるまい。燃えてくる。雷鳥(グラウス)を4回もとってしまったことがわかったとき、最初に思い浮かんだフレーズはこれだ。
雷鳥は頂を目指す
ぼくはフットゴルフには向いていない。理由は簡単で、集中力が散漫で、すぐに意識が切れて散漫になってしまうからだ。そして、遠くに飛ばす技術もないし、正確に蹴ることもできない。メンタル、テクニックの両面で向いていないのだ。
逆に対人競技ならある程度自信がある。駆け引きの問題だからだ。目の前に相手がいて「負けるものか!」と思えたらある程度強い。一方で、自分との戦いにはめっぽう弱いのである。
ただ、これはフットゴルフだけの問題じゃなくて仕事上でも弱点になっている。みんなと協調する作業ではある程度優秀なのだが、一人で原稿と向き合うのは実は苦手としている。なので、世の中に出せたコンテンツの数はあまり多くない。著者としてもあまり結果が残せなかった。ぼくは出版社を立ち上げて社長と名乗り始めたのだが、それは著者としては経済的に成功しなかったからなのだ。
ぼくはフットゴルフができない。だからこそ、これから上手くなる余白がある。フットゴルフを通じて、自分との勝負に勝てるようになったら、この先もっと飛躍できるような気がする。
もっと練習しよう!!
正確なパッティングは家でもできる。ロングキックやアプローチであっても近所の公園でも練習できる。技術だけではどこかで止まるだろうが、まずは基礎的な技術をつけなければならない。まっすぐ飛ばないのは、うまくエネルギーが伝わっていないのだ。横へのベクトルを発生させない蹴り方を研究しようではないか!
もっと考えよう!!
フットゴルフは、適当に蹴り込んでもまず良いスコアがとれない。コースを見ながら、どうやって蹴っていけば最短でカップインできるかを考えるのだ。フットゴルフの動画をみたり、あるいは自分で記事を書いたりしながら考えていこう。
ゴルフ場までいってみよう!!
自分で企画するのは実は苦手なので、フットゴルフのお誘い大歓迎!!誘われたらスケジュールがアウトじゃない限り行くことにしよう。いや、そんなことを言っていないで、ちゃんと研究して自分で主催できるようにしてもいいかもしれない。栃木だけではなく群馬、茨城、千葉、静岡にもコースがある。
北海道、関西、山口にもある!長野県にはないのだが、働きかけて作ってしまえばいい。松本と長野に1つずつはコースがほしい。そうすれば、サッカー観戦、フットゴルフ、観光と3つのアクティビティを楽しめるスポーツツーリズムが楽しめるようになる。スポーツ観戦だけではなく身体も動かせるというのは素晴らしいことだ。サッカー旅の書き手としても、今後フットゴルフを積極的にやっていきたい。
全都道府県でサッカー観戦をするのと同時にフットゴルフをする!!
人生の新しい目標ができた。
魂の救済・参 「ゴルフの力」
スコアは最悪で、我ながら「酷いなぁ」と思うのだが、実は18ホールが終わってみるまで自分のスコアが悪いとは気づいていなかった。もちろん最初のうちこそ緊張はしたし、上位が狙えないことくらいは気づいていたのだが、ぼくは終始楽しくて上機嫌だった。最初の1打から、最後の1打まで、ずっと楽しかったのだ。
確かに上手くはプレーできなかった。結果もでなかった。だけど、良いキックをしたときは「ナイスキック!」と褒めてもらえたし、合間合間にいろいろな話をすることもできた。晴天のゴルフ場はとても気持ちが良かったし、周囲のプレイヤーもみんな笑顔であった。
楽しかったエピソードを一つだけ。浦和レッズユニフォームを着込んだ軍司さんがナイスアプローチをした。そのときぼくは、ついついあれをやってしまった。
ドドンドドンドン うらーわレッズ!!!
セブンハンドレッドクラブに浦和レッズコールが響く。そのとき、同じグループにいたアンチ浦和レッズの方から物言いがついた。そして「浦和レッズコールだけはなしにしよう」という約束になった。ストレートすぎる物言いに。メンバー全員大爆笑である。
布施さんがホールインワンを2回も決めて、みんなで大喜びしたり、飯田真輝選手のロングキックが凄すぎてみんなで大声を出したり……。栃木SCサポーターの集団がヤンキーにしか見えなかったり……。
実に良い競技である。現役のプロサッカー選手と一緒にまわっても、笑顔で楽しくいられるのだ。
もしもこれがフットサルや11人制のサッカーであったらどうなるか。何度か経験したことはあるがプロ選手の当たりはとんでもなく強い。ただ立っているだけでも地面に杭でも打ち込んでるのかというくらい頑強なのである。だから、接触プレーがあったら吹き飛ばされて怪我をしてしまう。手加減されたとしても恐怖を感じるほど圧倒的な差があるのだ。
ボディーコンタクトがないし、チームプレーをすることもないので、多少時間がかかってしまうことにだけ目をつぶってもらえれば、一緒に仲良くプレーすることができる。多少時間がかかるといっても、ぼくのような下手な人が18ホール回っても100打くらいである。
ゴルフのほうは初心者の場合130〜160打くらい必要になるとのことなので、それに比べるとはるかに短く回ることができる。14本のクラブを用意しなければならないゴルフに比べると、道具も不要なのでお手軽簡単である。
お手軽なだけでなく競技としても奥が深い。とあるコースの罠にはまってボールが明後日の方向へと転がっていってしまったときは「名波浩さんも同じミスして池ポチャしてましたよ。キックのうまさだけじゃないのが面白いところなんですよ」と教えてもらった。ご存じの方も多いと思うが、名波浩さんといえば日本を代表するフリーキッカーである。
フットゴルフをやってみてゴルフという競技にも興味が出た。これまでは面倒くさそうなイメージだけで敬遠していたのである。帰り道にこの本を読んでみた。
この本から見えてくるのは、ゴルフがただのスポーツでもエンタメでもないということであった。詳しくはこの本を読むと、ゴルフというアクティビティの特殊性が理解できた。
ゴルフは気遣いの連続でできている。仕事は自分一人では成立しないので、だから、仕事力も計られることになる。トランプ大統領は、商談だけではなく外交にまでゴルフを利用していて、安倍総理と36ホールを一日で回ったというエピソードを聞いたことがある。調べてみると2人は少なくとも5回は一緒にゴルフをしているらしい。
ゴルフは気遣いのスポーツなのだが、気遣いを受けるとすごく気持ちが良いというのも発見であった。飯田選手は、ラウンド中に寒がっているメンバーをみて、ホットコーヒーを全員に差し入れしてくれた。竹嶋さんとは同じところに蹴り込むことが多かったのだが、いつもぼくが打ちやすいように配慮してくれた。布施さんは、ぼくにライン取りを教えるような蹴り方をあえてしてくれた。主催者の軍司さんは、ぼくが物書きなのを知ってか、色々な情報を与えてくれた。
本当に気持ちが良かったし、一緒にラウンドした4人のことが大好きになった。可能ならば毎週末でも同じメンバーで回りたいと思うくらいだし、この先どこかで再開したら、戦友との再会として満面の笑みになるだろう。
胸の奥がくすぐられるような特別な幸福感。人生でもっと甘美なのは、他社と良好な関係が気づけた瞬間なのである。
飯田真輝選手は、記事の更新作業をしている今、2022年1月31日に現役引退することを発表した。これからどういうキャリアを歩むのかはわからないが、少しでも飯田真輝選手が話題になるようタイトルに名前をいれさせていただくことにした。
この年になってくると特別な友人というのはなかなかできないものだ。いや、学生の頃だった親密な仲の友達はそう簡単に作れるものではなかった。しかし、一緒にゴルフをまわってみると、同組のメンバーが大好きになっていたのだ。
もちろん、気遣いのない人と回ると、逆に嫌いになってしまうこともあるかもしれない。だからこそ、紳士のスポーツとされ、マナーも重視されるのだろう。
ゴルフ場という場もすごくよくて、ホスピタリティの塊のような場所だった。とても気持ちが良い。フットゴルフだけではなくゴルフまでやってみたくなった。ゴルフ場で一日を過ごして、上品な温泉宿やホテルに泊まり、ゆっくりお風呂に入ってから、ビールを飲んで、美味しいものを食べる。想像してみただけでも最高だ。そこにサッカー観戦を組み合わせれば、ぼくの人生は完成する……。
と、欲望を描く前に、気遣いのほうも磨かないといけない。今回はまわるだけで精一杯だったのだが、今後一緒に回る皆さんには、ぼくと一緒に回れて良かったと思ってほしい。
フットゴルフと出会えたおかげで、ぼくはもっと成長できそうだ!!フットゴルフとの出会いに乾杯!!
主催の軍司和久さん、プチインタビュー
——フットゴルフの魅力は何でしょうか。
軍司:フットゴルフという競技は、色んな人と出会わせてくれるのが魅力です。この競技は、自分がプレーする時間が極端に短い上、移動距離が長いので、移動中に同組の人とコミュニケーションが取りやすく、仲良くなりやすいという特徴があります。
ゴルフと比較すると珍プレー好プレーが続出するので、自然と会話が産まれます。今までの経験上、一緒にラウンドした人とは、もうマブダチくらいな感覚でお付き合いができています(笑)。
また、フットゴルフはティーの位置を変えたりハンディキャップを設けたりすれば、誰もが同じフィールドで同じ時間を共有しながら、同じ競技をプレーできる珍しいスポーツです。それこそ、今回一緒にラウンドさせて頂いた元Jリーガーの飯田さん、元バスケ部の竹嶋さん、元バレー&スキー部の布施さん、そして中村さんのような多種多様な人たちと、一緒にプレーができて、しかも仲良くなれるんです。こんな競技、そうそうないんですよね。
だから僕は、フットゴルフに興味がある人に出会ったらまずこう言うんです。「とりあえず一回一緒に行きましょう」って。皆さんも一緒にどうですか?中村さんも一緒に行きましょう!
ーーーーーーー
フットゴルフをするには
軍司さんに調べてもらったところ、いくつかのクラブには有志のフットゴルフ部があるとのこと。確認できている範囲では……。
栃木SC、浦和レッズ、大宮アルディージャ、横浜F・マリノスなどで、体験会やコンペなどが行われているようだ。
他に加藤順大選手が関西で主催するフットゴルフ大会もあるとのこと。興味がある方は加藤選手のTwitterをフォロー!(@nobuhirokatogk1)
軍司さんより大量の動画をいただいたので、解説つきで編集してみた。西葛西出版のYoutube、是非チャンネル登録お願いします!!
Youtube動画制作中<編集に失敗したので後日公開>
西葛西出版のHP、ようやく公開しました。ちょっとバグっていますが、妻と一緒の手作りものです。是非ご覧ください!!
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サポーターはあくまでも応援者であり、言ってしまえばサッカー界の脇役といえます。しかしながら、スポーツツーリズムという文脈においては、サポー…
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