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「出版社社長とタクシードライバーの兼業が評価される財務上の理由」西葛西出版コラム

著者:中村慎太郎 
西葛西出版 代表取締役社長
タクシードライバー(一時休業中)
旅とサッカーのWEB雑誌OWL magazine代表

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2021年9月2日の創業記念日。

それから1ヶ月と23日が経過した。社長と呼ばれるのもだいぶ慣れてきたし、名刺を真っ先に交換するのも馴染んできた。

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※実際の名刺には住所とメールアドレスも記載されている。

会社を始めてみるとやることがなかなか多くて目眩がしてくる。会社とは、法人という人格であって、一人の人間が生まれるとなると、役所の手続きも大変なのである。

ぼくは、会社のオーナーではなく支配者でもなく経営者でもない。生まれたての会社の親なのである。まさか3人目の子供が生まれるとは思わなかったし、その子供が出版社になるとは——。

人生色々あるものだ。

社長としての当面の目標は、創業タスクを片っ端から終わらせて、タクシー乗務員に復帰することである。なんで社長になってまでタクシーに乗るのかというのは、この先何百回も言われそうな気がするのだが、タクシーに乗っていたほうが人生がうまくいくような気がするからである。

現実問題としてタクシーには乗っていられない時が来るかもしれないが、その時までは続けたいと思っている。タクシーというのは、サッカーやバスケットボールのようなもので、仕事をしているというよりも、選手として出場しているという感覚の方が近い。

ぼくは、1回あたりの平均営収(17時間乗務、休憩3時間の売上)が消費税抜きで45000円くらいで、最高でも75000円くらいである。この金額に6割をかけると手取りの収入になるという非常にわかりやすい仕事で、45000円売り上げた場合には27000円、75000円なら45000円である。毎月を12乗務するのが、フルタイムのタクシードライバーなので、平均が45000円のときの月収は32.4万円、75000円なら54万円となる。

もっともこのくらいやれていたのは「コロナ禍の調子がいいとき」で、時短やら禁酒法やらが出てきてからは、ぼくは月収15〜20万円が精一杯になってしまった。もちろん、もっと頑張れば収入は増えたのかもしれないが、空車だらけの中では頑張る気力もなくなってしまう。

お客さんに必要とされるから頑張って運転しようと思うのであって、お客さんに必要とされないのに苦しい思いをするのはなかなか辛いことだ。苦しい思いと書いたのだが、タクシー乗務は純然たる肉体労働なので、決して楽ではないのだ。

なんで、復帰したいと思うのだろうか。会社を作ったら、そちらに専念すべきではないのだろうか。

ここは実は難しい問題なのである。

社長は、会社における最強の駒である。社長は業務全体のことをわかっているし、未来にどうなるかについても常に洞察している。また、社外の人にとっても社長は特別で、創業2ヶ月にもならないぼくであっても「わざわざ社長さんが……」と恐縮されることがある。社長という言葉には特別な力があるようだ。

従って、社長の稼働を増やしていくのは、会社をまわしていく上で有効である。

一方で、社長が兼業であることも、1つの強みにはなるようだ。というのも、生まれたての会社は非常に潰れやすいからだ。事業を行っていこうと考えた場合、「出費」は必ずある。「出費」なくしては「入金」もないからだ。

「出費」というのは、人件費、外注費、仕入れなど多岐にあたるのだが、出版社ということでいうと、書籍の制作費とデザイナーや著者への支払いなどが該当する。

と、思っていたのだが、実際にはじめてみると想定外の「出費」が多く、その度に目眩がしてくる。零細物書きをしていたときには想像がつかなかった「2桁万円」の出費の連続。

西葛西出版を1年やっていくためには、小さく見積もって2000万円、大きく見積もると4000万円から5000万円ほど必要だと試算している。つまり、そのくらい「出費」があるのだ。そして、支払うお金がなくなった時が倒産となる。

書籍が1冊売れると1000円くらい会社に入るという計算をした場合、2万部から5万部くらい毎年売り上げる必要がある。1年目の出版社には厳しい目標だが、やるしかない。足りない分は、銀行の融資を受けるなり、どこぞで土下座をしてくるなりして資金調達する必要がある。それができなければ、会社は倒産する。

そういう状況であるため、社長がタクシードライバーをしているというのは有利に働くのだ。つまり、社長の収入がタクシーによって確保されていれば、会社の「出費」から社長の人件費を削ることができるのである。創業してから知ったのだが、「1年目社長の兼業」は銀行からも好意的にみられる傾向にあるようだ。

逆にいうと、借りたお金を個人の収入に充ててしまう社長は信頼されないということになる。実際にいるらしいのだが、社長になった瞬間会社のお金でロレックスを買い、アルマーニのスーツを新調し、銀座で飲み歩くような輩もいるらしい。あるいは、飲食店などでは友達を呼んでパーティーを開き、そこで虎の子「開業資金」を失ってしまうこともあるのだそうだ。

少ない資源を有効に配分していき、着実に収益を増やしていく。収益が増えることが期待できる「投資」はするべきだが、ただ使うだけの「浪費」は避ける必要がある。

会社をはじめてみると世界の見え方が変わってくる。これはとても面白い発見であった。

兎にも角にも会社を潰さないように、自分のやりたいことをやっていけるように、尊敬する仲間たちが解散しないで済むように……。

西葛西出版の使命はシンプルだ。

良い本を作ること、読者に届けること。

これだけなのだ。

このコラムは、毎日更新しようと思う。ぼくが書けない時は、鰭脚類の副社長などに書いてもらうかもしれない。

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西葛西出版から最初の本『〝サッカー旅〟を食べ尽くせ! すたすたぐるぐる 埼玉編』が出版されます!!

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