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ハリルホジッチ監督の会見直前に出た良記事まとめ【キュレーション vol.3】


ハリルホジッチ監督の解任から2週間が経ちました。怒り、悲しみ、絶望、失望、疑心など様々な感情が飛び交った期間でした。一言で言うと疲れる期間でした。

サッカーメディア界でも「緊急原稿」の発注が多かったようです。これを「特需」と考え、仕事が増えたと喜ぶライターはいません。W杯後の暗黒時代への突入と急激に仕事が減ることを覚悟しなければいけないからです。

そもそも、グループリーグ敗退に終わったブラジルW杯ですら「悪夢のブラジル」と呼ぶ関係者もいます。あの後、サッカーメディアは縮小していきました。次はどうなるかと思うとぞっとするからです。

しかし、サッカーへの世間の注目度が下がっていこうが、Jリーグをはじめとする日本の国内サッカーは力強くやっていかなければいけません。サッカーを続ける子供がいなくなるわけでもありません。こういう時だからこそサッカーについて理解を深めていくことが大切なのかなと思います。

皮肉な話ではありますが、今回の件でサッカーについて知りたいというモチベーションが高まりました。少なくともW杯までは、日本代表を中心にサッカー記事をキュレーションしていこうと思っています。

キュレーション記事とは(作成中)
著者紹介(工事中)

さて、解任から今日までの流れを、拙noteの履歴と共に確認したいと思います。

3/23   マリ戦 
3/27 ウクライナ戦
4/9  ハリルホジッチ監督解任の緊急会見
4/12 新監督西野朗氏の就任会見
4/13   『発狂記事
4/14 『ハリルホジッチ監督の緊急解任の波紋(キュレーション)
4/15   田嶋幸三会長がNHKに出演 発言の意味がわからないと物議になる
4/16  『サッカー協会会長の発言を解読してみた
4/17  『ハリルホジッチとは何だったのか
4/21   ハリルホジッチ氏、涙の来日
4/25  キュレーション記事vol.3 (この記事)
4/27   ハリルホジッチ氏の会見予定 ニコニコで生放送
4/28   某所でライブ動画に出演予定!
5/14 W杯予備登録メンバー35名の提出期限(公開されるかは不明)
5/18 国内合宿メンバーを発表(人数未定、23名より多いはず)
5/30 キリンチャレンジカップ ガーナ戦
5/31 W杯本戦メンバーの発表(予定)
6/8  国際親善試合 スイス戦
6/12 国際親善試合 パラグアイ戦
6/19 W杯 グループリーグ コロンビア戦
6/24 W杯 グループリーグ セネガル戦
6/28 W杯 グループリーグ ポーランド戦

4月27日の会見ではどのようなことが語られるのか。サッカーメディアやファンが固唾をのんで見守っているところです。しかし、既に卵は割れてしまいました。元には戻りません。

ブラジルワールドカップは、サポーターとして命がけで行きました。しかし、戻った時には誰もブラジルのことなど語らなくなっていました。大会後にはある種の虚しさが漂っていました。

一方でロシアワールドカップは、大会前に虚しさが漂うと同時に、逆に注目を集めるという状況になっています。何がいいのか、悪いのかわかりませんが、日本サッカーにとって重要な出来事が必ず起こるでしょう。注意深く見守っていきたいと思います。

今回も100円の有料記事です。
が、最初の約6100字は無料でご覧頂けます。後半の約13000字が有料コンテンツとなっております。無料部分だけでも記事として成立するようにしていますので、是非そちらだけでもご覧下さい。

では、まずは空港に降り立つハリルホジッチ監督から始めます(敬意を込めてまだ27日の会見までは監督と呼びます)。リンク先に動画があるのでまだの方は是非見て下さい。

涙を流す樋渡通訳が話題になりました。この二人がどういう会話をしたのか、今は知ることは出来ません。ただ、樋渡通訳には、老賢者の無念を晴らすという使命が出来たのではないかと思います。原稿や書籍の執筆依頼が数多く届いていると思います。魂を込めた手記に期待したいです。

そんな樋渡通訳をメタ批判する記事も出ていました。真面目に読む必要のないレベルの記事ですが、ご紹介します。今回紹介する中で、優良記事ではないのはこれだけです。

「会見を止めるのが筋」ハリルホジッチ監督の代理人に協会関係者が怒り

 実は樋渡通訳、2015年3月の日本代表監督就任当時からハリル氏を担当しているが、「ハリルを崇拝しすぎ、感情的になるところがある」(日本協会関係者)

さて、日本協会とは何でしょうか……。そんな団体は存在していません。日本サッカー協会の略称でしょうか。いや、日本合コン協会かもしれません。この記事は、器用なライターが妄想で書いたのだろうと思います。本当にサッカー協会の関係者に取材していたらそう書くはずだからです。そのほうが記事のバリューもあがります。

ライターとしてはこの器用さは尊敬するところもありますが、ジャーナリズムとしては「駄目絶対」です。そもそもジャーナリズムではなくゴシップなわけですけどね。

「日本人の歩みは遅い」 ハリルホジッチがクロアチア紙に語った本音〈全訳〉 クロアチア紙インタビューを全文掲載

かつてハリルホジッチ氏が監督を務めたディナモ・ザグレブというクラブの番記者によるインタビュー。これが最速で出た記事で、解任から2週間経ってもこれ以上のことが語られていないという意味でも貴重なインタビューです。

「ショックを受けたよ。本当にショックだ。そんなこと(解任)が起こる前触れは本当に何もなかった。何もだ。すべてはスムーズに進んでいたし、我われはワールドカップに向けて準備をしていた。開幕までのスケジュールについても計画していた。それなのに『もうあなたは代表監督じゃない』と(日本サッカー協会は)言ってきたんだ。何と言えばいいのか分からない」

「前触れがなかった」ことと、ハリル氏の中では「すべてはスムーズに進んでいた」という点は覚えておきたいですね。

アフリカ(コートジボワール)ではベンチに座ってから24試合目に、最初の敗北を喫して解任された。しかし、それがアフリカだ。あちらでのケースは何らかの形で予想されることだろうし、起こり得ることも分かるだろう。結局のところ、大統領(ローラン・バグボ)が解任を決めた。しかし、それが日本で起こるのならば、秩序があり組織化された国でそのようなことが起こるのならば本当にショッキングだ。まだ私は自分を取り戻すことができない。

ぼくが失望しているのは、日本サッカーが強くなるとかならないとかいう文脈における失望だけではなく、日本という国でアフリカと同じようなことが起きてしまったことです。

もちろん、アフリカを下に見るつもりはありませんし、国際政治の問題には詳しくないのですが、ローラン・バグボという政治家は、10年大統領を務めた後、選挙で敗北するも従わず、二重政権となり、軍に攻撃されて拘束され、人道に対する罪を犯したとして国際刑事裁判所によって逮捕、収監されている人物です。

その人物の独裁的な判断と、同じようなことが日本で起こるとは……というハリルの嘆きに対して、我々は何と言えばいいでしょうか。日本サッカー協会は、ハリルホジッチ監督を解任する権利はあったと思いますが、あまりにもやり方が良くないと思います。一言で言えば、日本の恥です。

一方で、こんな視点の記事も出ています。


ハリルホジッチがいつも「短命政権」に終わる理由——クロアチア人記者が語る

今度は、先ほどのインタビューを取ったクロアチア人記者トモ・ニチョタ氏に対してインタビューしたものです。通訳も同じ方なので、「ハリルの話はわかりました。で、あなたはどう思いますか?」という一石二鳥的な記事の作り方です。記事を分けるというのは、ライター業をしている上ではとても大切です。記事の数が仕事の数になることもあるからです。そういった、職業ライター的な価値観と真っ向から対立する記事も後ほど紹介したいと思います。

我われヨーロッパ人の認識では、日本は組織化されて秩序だった国であり、規律と正確性の模範ともいうべき国であるからね。このような予期せぬ転換が、君の国で起こることなんて稀じゃないか

ぼくも自分の住んでいる国は、理知的な判断が出来ると信じていました。いや、信じていませんでした。生きてくる中で、理不尽な目にもあってきました。しかし、国際的に開かれたサッカーという競技においては、そのような日本の悪い部分も振り払われるのではないかと期待していたところがあったように思います。

今回、サッカー協会も相撲協会と一緒だったのか。とか、ラグビー協会も一緒だとか、eスポーツも一緒だとか、うちの会社も一緒だとか、そういう反響を多数頂きました。

解任は起こるべくして起こったことなのかもしれません。日本とはこういうことが起こる国なのです。もしかしたら教育に根本があるのか、あるいは組織論なのか。今の段階ではわかりません。これを機会に日本論が深まっていくのは面白い現象でもありますが、全然喜ぶ気にならないという複雑な思いは晴れることはないのでしょう。しかし、そうやって悩みながら生きていくことこそ人生なのでしょう。



ハリル解任。JFAが捨てたのは、コアファンの信頼である 澤山大輔

澤山大輔さんの記事です。校了寸前にハリルホジッチ監督が解任されたことで、出版できなくなる危機に陥ったことで話題になったの書籍砕かれたハリルホジッチ・プラン 日本サッカーにビジョンはあるか?(星海社新書)の著者五百蔵容さんを見つけた男としてもその筋では有名です。

ちなみに近日発売予定の『フットボール批評』には、ぼくの連載「サッカーをつむぐ人」において、五百蔵容さんにインタビューをしています。インタビューして記事を書き終わった直後に、解任事件があったことで非常に混乱した原稿でしたが、内容はとても面白いので是非『批評誌』を手にとってみてください。

アマゾンのページにはぼくの名前も載っていますよ(中村慎太郎です、念のため)。

さて、肩書きが多すぎてどれがメインかわからない澤山さんですが、五百蔵さんとはPerfume仲間です。そういえば、澤山さんと五百蔵さんと3人で、延々とPerfumeの動画を見続けた日もありました。結局10時間以上語っていたような。楽しかったなぁ……。

さておき、澤山さんは著者のネームバリューに惑わされることなく、物書きの本質を見抜く怖い編集者とも言えます。今回は自ら筆をとっています。ぼくのツイートも引用してもらっています。

この件は、キュレーション記事vol.1でも書きました(まだの方は是非!)。澤山さんもぼくも、普段周りにいるのはディープなサッカーファンばかりです。要するにサッカークラスタです。

その反応があまりにも異常だったので、ぼくも発狂記事を書くに至ったわけです。

端的にいうと、本件は「皆が見ていた映画を、クライマックスを待たずして上映打ち切りにした」ようなものだ。

非常にわかりやすい表現で今回の件を総括してくれています。そう、みんなで見ていたんですよ。大きな日本国旗に、日本代表を応援する人のところを回って「日本頑張れ!」というコメントを書き込んでもらって、それをブラジルまで持ち込んでいた人もいました。スーツケース1つ余計に使って、地球の反対側まで行くわけですからね。

ぼくはそこまで熱心ではありませんでしたが気持ちは同じでした。ザックジャパンを本気で応援していたし、ブラジルで敗退して、アギーレ監督になってからも、ハリルホジッチ監督になってからも応援し続けていました。

同じ映画を見ていると思っていたのです。でも、サッカー協会の田嶋会長は違う映画を見ていたようです。田嶋会長の中では理屈も信念もあると思います。ただ、ぼくらとは違ったんだという失望はあまりにも大きかったわけです。

「JFAは、こうした反応を重く受け止めよ」などのおためごかしで済ませることはできない。一度失われた熱狂を取り戻すのは、「例え戻ったとしても」長い年月がかかる。一度さめたものに再び熱狂するのは、よほどの物語が必要だ。それこそ「初のW杯出場」「初のW杯自国開催」といったような。
 
そうした物語を用意するのは、もはや不可能だ。そんな中で今回のような愚策が投じられたことは、サッカー日本代表のブランドに取り返しがつかないダメージとなる可能性が高い。仮に現チームでロシアW杯が奇跡的に好成績を収められても、そこに正当性をもはや見いだせない以上「さめた心」が熱くなることは難しいだろう。

念のため補足しますが、これは解任が報道された少し後の心境です。ですが、ぼくは今も「どうやって日本代表を応援しようか」という悩みは持っています。まだハリルとお別れも出来ていません。

今は、ハリルホジッチ監督が残したものを少しでも拾い集めようと思っています。その先に見えるものは「やっぱり日本代表は応援できない」かもしれないし、「開き直って応援しよう」かもしれません。

わかりませんが、進んでいくしかありません。ぼくは一度サッカーという競技を愛してしまったからです。もちろん、それなりに浮気者なので、常に熱愛しているわけではありません。しかし、今回だけは大人しく看過出来ないというのが素直な気持ちです。

そうか、ぼくはこんなにもサッカーが好きだったのか。そう気づいた契機になりました。

そんなことは望んではいなかったのですが。こうなった以上はやれることをやっていこうと思います。その一つがこのキュレーション記事です。

ここまでお読み頂きありがとうございました。ここからは有料記事となります。ここからは概ね10記事程度を、引用含め字数は約13000字でご紹介します(無料部分は約6100字)。この記事によって得た収入は、サッカー関係の取材や資料を揃えるために使っていこうと思います。

是非よろしくお願いいたします。




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